世界におけるインフルエンザ流行状況(3)

2011年10月7日 WHO(原文〔英語〕へのリンク

要約

  • 北半球の温帯地域の国々ではインフルエンザの活動性は低いかほとんど認められていません。
  • 熱帯地域のほとんど国々ではインフルエンザの活動性は低いですがいくつかの流行が、アメリカ(キューバ、ホンジュラス、ボリビア)、西アフリカ(カメルーン)、南アジア(インド、タイ、ベトナム、シンガポール)で報告されています。
  • 南アフリカと南米での流行は低レベルになりました。
  • オーストラリアでは検査室確定インフルエンザの報告が、ノーザンテリトリー以外、クイーンズランド、ニューサウスウェールズと他の州で減少してきています。ニュージーランドでのインフルエンザ様疾患(ILI)は国内流行基準値付近での発生が続いていて、その大部分はインフルエンザBです。

北半球の温帯地域

この地域の国々ではインフルエンザのオフシーズンです。ほとんど全ての国で活動性が低いか流行がありません。

熱帯地域

中南米の熱帯地域;全般的に低レベルでの流行が報告されています。前回報告時にはドミニカ共和国でインフルエンザA(H1N1)pdm09が循環していましたがごく低レベルに減少してきている一方、キューバではインフルエンザA(H3N2)が増加してきています。ホンジュラスでもインフルエンザA(H3N2)が循環していましたが、8月中旬にピークに達しました。エルサルバドルではA(H3N2)が8月中旬に循環し初め毎週増加してきています。南米熱帯地域のほとんどの国ではインフルエンザ伝搬の報告は感知されないレベルまで低下しています。前回報告されたコロンビア(主にA(H1N1)pdm09でわずかなH3N2)とブラジル(おおよそA(H1N1)pdm09とH3N2が同数でわずかなB型)ではごく低レベルに転じています。しかしボリビアではラパスで5月から6月にA(H3N2)の早期インフルエンザの波を越えた後A(H1N1)pdm09の伝搬が最近増加してきています。

サハラ以南アフリカ;西部で流行が続いており、特にカメルーンではインフルエンザBが優勢でしたが、インフルエンザA(H1N1)pdm09が最近から増加してきて36週にピークに達しました。東部アフリカでは3月のピーク以降、インフルエンザB、A(H3N2)、A(H1N1)pdm09の混在した流行が続いています。

アジアの熱帯地域;インフルエンザの活動は局在しています。A(H3N2)を中心とした中等度の活動性がインド、シンガポール、タイから報告されていますが、インドでの伝搬は低レベルに転じています。インドとバングラディシュでのA(H3N2)の循環は最近B型に大きく置き換わってきました。タイでのA(H3N2)の循環は他国より2から3週間遅れて始まり、比較的高レベルで持続していますが最近ピークに達したようです。ラオスでは最近A(H3N2)の優勢な伝搬が報告されており、9月上旬に顕著に増加しました。一方、ベトナムとカンボジアでは主としてA(H1N1)pdm09の伝搬の持続が報告されています。

南半球の温帯地域

南米;低レベルでの活動が報告されており、インフルエンザ活動性は(流行の)基準値レベルまで減少してきています。チリではA(H1N1) pdm09の検出が過去4週間に比較し低くなっており、ILI活動性と呼吸器疾患で救急を受診する患者数も低レベルでした。第37週(9月12日~18日)に、A(H1N1)pdm09で3人が死亡しました。そのうち2人が基礎疾患を持っていました。アルゼンチンでの状況も同様で、A(H3N2)が主な循環ウイルスです。ILIと重症急性呼吸器疾患(SARI)も減少してきて38週に入ってインフルエンザ検査の陽性数も減少しています。パラグアイではSARIでの入院、ICU入院、関連性死亡数はいずれも5%以下で、いずれも過去数週間と同じか減少しており、検査検体からインフルエンザウイルスは検出されていません。ウルグアイではSARI入院率とSARI死亡率が減少し続け5%以下になっています。SARIICU入院率も第31週にピークに達し、減少してきて5%です。

南アフリカ;インフルエンザ伝搬は、23週と34週の2回のピークの後は低レベルのままです。インフルエンザシーズン中はA(H1N1)pdm09が優勢で、次にB型とわずかなA(H3N2)が報告されました。

オーストラリア、ニュージーランド、南太平洋;オーストラリアノーザンテリトリー以外のクイーンズランド州とニューサウスウェールズ(NSW)州、さらにほとんどの州で検査室診断インフルエンザ週間報告数は減少し続けていましたが、39週はインフルエンザ伝搬が持続していました。全般的なインフルエンザ届出数のピークは8月上旬だったようで、2009年を除く例年に比べると高い値でした。ほとんどの州と地域でA(H1N1)pdm09の報告が主でB型もともに循環していました。ただしタスマニアとNSWではB型が主でウェスタンオーストラリアではA(H1N1)pdm09とA(H3N2)が混在し、極わずかなB型が報告されました。5月1日から9月22日までに、155人の入院患者(そのうち20人がICU入院)がビクトリア、サウスオーストラリア、ウェスタンオーストラリア、首都地区で報告されました。入院患者の53%、ICU入院患者の60%がA(H1N1)2009に関連しており、入院患者の平均年齢は49歳でした。

ニュージーランドでは、ILI症状で受診した人は住民10万人あたり30.7人でした。検出ウイルスはA(H3N2)とB型が主体でした。太平洋諸島ではILI活動性は様々で、フィジー、ソロモン諸島、マーシャル諸島、北部マリアナ諸島では活動性の増加が報告されています。

出典

WHO:Influenza update,07 October 2011, Update number144

http://www.who.int/influenza/surveillance_monitoring/updates/latest_update_GIP_surveillance/en/index.html