世界におけるインフルエンザ流行状況(4)

2011年10月21日 WHO(原文〔英語〕へのリンク

要約

  • 北半球の温帯地域の国々ではインフルエンザの活動性は低いかほとんど認められていません。
  • 熱帯地域ではいくつかの流行が、アメリカ(キューバ、ホンジュラス、エルサルバドル)、中央アフリカ(カメルーン)、南アジアや東南アジア(バングラディシュ、カンボジア、タイ、ラオス、ベトナム)で報告されています。
  • 南アフリカ、南アメリカでの流行は低レベルで、(インフルエンザ)シーズンはほとんど終わったようです。
  • オーストラリアとニュージーランドでの流行はピークに達しましたが、地域によってピークの時期がずれて、シーズンが未だ終わっていないところもあります。

北半球の温帯地域

この地域の国々ではまだインフルエンザのオフシーズンです。多くの国が夏季はインフルエンザサーベイランスを中断していましたが、10月現在でインフルエンザモニタリングを再開しています。インフルエンザの活発な伝搬の報告はありません

熱帯地域

中南米の熱帯地域;全般的に低レベルでの流行が報告されていますドミニカ共和国ではインフルエンザBウイルスが主に検出されていますが、低レベルの報告です。キューバ、ホンジュラス、エルサルバドルでのインフルエンザウイルスの検出はA(H3N2)が主体でしたが、9月下旬にピークに達しました。パナマではA(H1N1)pdm09が6月下旬から一貫して検出されています。中米の他の国ではインフルエンザの活動性は報告がないか、ごくわずかです。南米熱帯地域の国ではインフルエンザ伝搬の報告は低いか感知されない低レベルです。前回ボリビアではA(H1N1)pdm09の優勢な伝搬が報告されましたが9月中旬にピークに達しました。

サハラ以南アフリカ;カメルーンで流行が続いており、A(H1N1)pdm09をわずかに伴いインフルエンザBが優勢で、この数週間A(H3N2)が増加していますが38週にピークに達しました。東部アフリカでは3月のピーク以降、インフルエンザB、A(H3N2)、A(H1N1)pdm09の混在した流行が低レベルで続いています。

アジアの熱帯地域;インフルエンザの活動は局在しています。B型を中心とした活動性がインド、バングラディシュ、カンボジアから報告されていますが、インドでの伝搬は低レベルに転じています。タイ、ラオスではA(H3N2)の循環が継続していますが、タイでは9月上旬、ラオスでは9月下旬にピークに達したようです。ベトナムでは主としてA(H1N1)pdm09の伝搬が今年の初めから持続しています。

南半球の温帯地域

南米;インフルエンザの活動性は減少し続けており、(流行の)基準値レベル、シーズンオフレベルまで減少してきています。アルゼンチンとチリではA(H3N2)とA(H1N1)pdm09が同時循環を続けていますが、大部分のウイルスは亜型の検査がされていません。一方パラグアイではA(H3N2)が優勢です。アルゼンチンとチリでの全体的なインフルエンザの重症化は、インフルエンザ様疾患(ILI)患者数(チリおよびアルゼンチン)、5歳未満の小児の呼吸器疾患での入院率(チリ)、肺炎患者数(アルゼンチン)で例年と同程度でした。ウルググアイでは重症急性呼吸器感染症(SARI)の入院割合、ICU入院、関連性死亡数はいずれも10月第1週時点で5%以下でした。これは昨年同時期と同じ程度です。パラグアイでは、ILI受診割合が6%まで減少し、SARI入院率、ICU入院率、関連死亡率いずれも9月最終週で10%以下のままです。

南アフリカ;インフルエンザ伝搬は、6月上旬から低レベルのままです。

オーストラリア、ニュージーランド、南太平洋;オーストラリア、ニュージーランドではインフルエンザ活動性は減少していますが、シーズンは続いています。オーストラリアでの全国的なILI受診率は減少し始めました。

10月2日までの一週間、定点開業医でのILI受診率は、前回報告時の外来患者1000人当たり12人から9人に減少しました。ウェスタンオーストラリア救急診療部では呼吸器疾患が前2週間に比較し減少しましたが基準値より高水準のままです。ニューサウスウェールズ救急診療部ではILI患者は前週と同程度で、活動性は例年同時期より少ないと報告されています。ILI患者の58%が25歳から44歳と55歳から64歳の年齢層の人々です。ニューサウスウェールズ救急診療部の集中治療室にILIと肺炎で入院した患者の総数は今週減少しましたが、例年同時期と同レベルです。

9月30日までの検査室確定インフルエンザの届出数は24,049件でした。全国的に見て、今シーズンの週間届出数は8月上旬にピークに達したようですが、各地域によりピークの時期は様々でした。また届出数は2009年パンデミックを除いて、例年より高い数値でした。

ビクトリア、サウスオーストラリア、ウェスタンオーストラリア、首都地区のインフルエンザ合併症警報ネットワーク定点病院システムは5月1日から9月30日までにインフルエンザに関連した31人のICU入院患者を含む223人の入院患者を報告しています。入院患者のほぼ半数とICU入院患者の45%がA(H1N1)pdm09感染に関連していました。入院患者の平均年齢は51歳でした。

ほとんどの州と地域でA(H1N1)pdm09とB型が共に循環していました。しかしながらノーザンテリトリーではこの2週間にA(H3N2)の届出数が70%を占めており、全国的なA(H3N2)の報告のほとんどはノーザンテリトリー、クインズランド、ウェスタンオーストラリアからの報告でした。タスマニアとニューサウスウェールズでは届け出の約半数はB型で、クインズランドでのB型の報告が増加傾向です。

ニュージーランドでは、ILI症状で受診した人は108人(住民10万人あたり29.0人)で基準値となる50人を下回りました。検出ウイルスはA(H3N2)、A(H1N1)pdm09、B型が混在して循環していました。

出典

WHO:Influenza update,21 October 2011, Update number145
http://www.who.int/influenza/surveillance_monitoring/updates/latest_update_GIP_surveillance/en/index.html