南スーダンにおける内蔵リーシュマニア症のリスク(要約)

2011年10月28日 WHO(原文〔英語〕へのリンク

南スーダンで内蔵リーシュマニア症(別名:カラ・アザール)が流行し症例数が増加し続けています。南スーダンの4つの州すなわち、アッパーナイル州(Upper Nile)、ジョングレイ州(Jonglei)、ユニティ州(Unity)、イースタンエクアトリア州(Eastern Equatoria)で流行しています。何千人もの人々が北スーダンより流行地域に帰国し定住し続けており、流行地域の政情不安に加え、医療施設や治療にアクセスするための患者の動きが制限されています。また栄養失調(ヒトの免疫系を低下させる可能性がある)、食糧不足、貧弱な住宅、サシチョウバエ(サンドフライ)から身を守るための対策としての蚊帳の不足、サシチョウバエの好む環境の変化などが問題を深刻化させています。

カラ・アザール(KA)は、2009年9月に初めて報告されたアッパーナイル州と北部のジョングレイ州で発生率が増加しています。発生以来流行は継続し、新しい地域に広がり、より多くの人々(主に17歳未満の子どもたち)が影響を受けています。しかるべき時期に治療しなければKAによる致死率は95%と非常に高くなります。世界保健機関(WHO)と国や州レベルの保健省は、医療パートナーと共同し、密接に現在の流行に対し取り組んでいます。
2009年9月の報告以降、現在の流行は症例数が18,000人を越え、国内4州の24か所の治療センターの記録での致死率4%と、過去20年間で最悪な状況の一つです。
流行地域からの新規症例数は伝搬季節に関係なく2009年から徐々に増加しています。

保健省によると(WHOがサポートしている南スーダン共和国毎週調査報告書)、2009年、新たなKA患者数は1,915人で致死率6%でした。2010年は新患数9,695人で致死率4%、2011年は9ヶ月間で新患数7,827人、致死率2.6%を記録しています。2011年の9ヶ月間で記録された7,827人は2010年の同期間の5,061人に比べ約1/3増加しています。KA(内臓リーシュマニア症)は治療可能ですが大部分において顧みられない疾患です。南スーダンでの流行は、現在大規模で、人口の3/4は基本的な医療へのアクセスがなく、医療制度はこの規模の緊急事態に対処することができません。しかし、WHO、オランダMSF、Medair、南スーダンSave the Children(SCiSS)等の機関が流行に対処するため共同で影響を受けている地域をサポートしています。

マルチセクター別アプローチやWHO他協力機関の州保健当局へのサポート及び大規模な努力により、致死率30%以上であった2003年と1990年の前回の流行と比較して、2011年の致死率は2.6%と大幅に減少しました。
2011年の9ヶ月間で7,827人が入院しましたが、9月から12月のピークシーズンの間、毎月1,800人の患者に上ると予想されています。
アッパーナイル州に新規開設した治療施設によると、今年疾患は急速にコミュニティーに広がっているとのことです。

KAの新しい併用療法はスチボグルコネート塩とパロママイシンの毎日投与(注射)を17日間続け、観察のため医療施設の近くに患者を滞在させます。この疾患は免疫が低下するのでマラリアや肺炎などの他の感染症にもかかりやすくなります。

出典

WHO:Thousands of South Sudan people suffer from kala azar epidemic as cases rise
http://www.who.int/hac/crises/sdn/releases/28october2011/en/