ナイジェリア:Zamfara州の採掘活動に伴う大規模鉛中毒発生について(更新1)

2011年11月11日 WHO(GAR)原文〔英語〕へのリンク

ナイジェリアのZamfara州で採掘活動に伴う大規模な鉛中毒が発生しました。この事実は2010年の3月に明白になりましたが、3箇所の地方自治体(LGAs):Anka, Bukkuyum, Maruで現在も続いています。

問題の全体像は完全には把握されていませんが、ナイジェリアの保健省の要請で米国疾病対策センター(CDC)によるサーベイランスが行われ、Zamfara州で鉛中毒(血中濃度が10μg/dl以上)と確認された住民のいる村が43村ありました。このうち少なくとも7村にキレート療法(鉛血中濃度が45μg/dl以上)が必要な小児がいました。すでに除染の終わった7村とは別の村です。

鉛曝露の原因を取り除き、キレートや他の支援治療の組み合わせで、除染された7村の曝露された小児の致死率は2010年の43%から2011年には1%まで低減しました。

対策

WHOと他のパートナーは州と政府を支援し状況を克服しようとしています。現状では、鉛を含む環境物質への曝露を防御するため、継続した採掘作業の改善無しには達成できません。状況の改善とは、鉱石の精製工程の場所や鉱石の保存場所を村から離すこと、粉塵の少ない新しい作業方法を採用すること、また帰宅する前に汚れた服を脱ぎ手洗いをするなどの衛生方法を含んでいます。

WHOは引き続きナイジェリア政府がこの問題に注目しZamfara州の小児の生涯にわたる鉛中毒の深刻な影響を予防するためにさらなる対策を担うことを主張します。

Zamfara州の大規模な鉛中毒対策には様々な機関、WHOをはじめ、国連児童基金UNICEF、国連開発計画UNDP、国連環境計画UNEP-国連人道問題調整事務所OCHA共同環境ユニット、国境無き医師団MSF、US CDC、Blacksmith研究所、TerraGraphics Environmental Engineering IncArtisanal Gold Councilなどが政府やコミュニティ、州、国のリーダーや担当者と共に対応しています。

国連中央緊急対策ファンド(CERF)からWHOやUNICEFに190万ドルが以下の対策のために拠出されました。

  • 5村(Abare、Tungar GuruTungar Daji、Sunke、Duza)の除染
  • 移民や地方コミュニティに対して安全な採掘方法や金の抽出過程を含めた鉛の危険性や鉛への曝露の防御方法についての啓発活動
  • 国、州の担当局やコミュニティリーダーへの支援
  • Zamfara州での鉛中毒早期発見のためのサーベイランスシステムの確立
  • 土壌中の鉛濃度を迅速に測定するために携帯用X線蛍光機器を3台用意
  • 迅速に血中鉛濃度を測定するためのキットと分析機を4台用意
  • 鉛測定のための参照試験所設立のための技術的支援とともに黒鉛炉原子吸光分析器と付属部品や試薬の用意
  • 鉛中毒の診断や治療を行うGusauに計画されている鉛治療センターの医師、看護師、検査室スタッフの訓練
  • 鉛中毒治療のための解毒剤の用意
  • 対応行動に関わるパートナーの調整

除染作業は、Blacksmith InstituteTerraGraphics Environmental Engineering IncがZamfara州担当局や地域の請け負業者と共同で行いました。除染は村の汚染エリアを見つけ、汚染土壌の除去、安全な廃棄場所、清浄な土壌の入れ替え等を含みます。加えて住宅の壁や他の表面も除染しました。合計7村で除染が終わり、2村ではCERF基金が利用できる前に終了しました。TerraGraphicsは地方機関が作業を継続できるようにアセスメントや除染方法の訓練を行っています。

MSFは除染の終了した村の鉛中毒小児患者に対しキレート療法を継続して行い、5歳以下の小児2,000人以上がプログラムの対象となっています。

継続中の課題

今回の重大な環境危機はすぐには解決されません。除染は困難な、かつ多大な時間を要する課題です。子供たちは住居が除染されるのを待って、治療を始めなければなりません。また何人かの子供たちは何ヶ月もキレートを行わなければなりません。新しい方法や行動を採用するように人々を説得するのは継続した努力が必要です。加えて、ナイジェリア国内での鉛中毒の診断や治療の能力は今後も強化され支援されることが必要です。さらなる課題は十分なキレート剤の購入です。これらキレート剤はジェネリックでは入手できない高価な薬剤です。それ故ナイジェリアのコミュニティ、州、国レベルでの一部のリーダーや担当者、保健や環境の専門家、技術的パートナーや寄付者も同様に長期にわたる契約が必要になります。

特に注目されるのは、Anka LGAにあるBagega町です。ここは鉱石の精製過程と非公式の金取引のハブとなっている地域です。多くの住居や町の公共エリアの土壌が1,000ppm(400ppmが米国での小児の居住できる限界値です)以上の鉛濃度を示しており、1,500人以上の小児が鉛中毒に罹っていると推定されています。この子供たちが治療を受ける前に居住する環境を清浄化しなければなりません。それ故Bagegaやその他の村の除染と他の治療や治療のためのキレート剤の供給は急務です。

出典

WHOGlobal Alert and Response(GAR)
「Nigeria:mass lead poisoning from mining activities, Zamfara State- Update 1」http://www.who.int/csr/don/2011_11_11/en/index.html