ECDCによるブタ由来インフルエンザのリスク評価(抜粋)

2011年11月29日 ECDC (原文〔英語〕へのリンク[PDF形式:1317KB]

北米におけるブタ由来3重再集合インフルエンザA(H3N2)ウイルスについて

11月24日、EU(ヨーロッパ連合)健康安全委員会は保健消費者局局長の要請に応じ委員会を開きました。
米国で限局的なヒト-ヒト感染を起こした2009A(H1N1)パンデミックウイルスのM遺伝子を持つ3重再集合型のブタ由来インフルエンザS-OtrA(H3N2)ウイルスのヨーロッパへの影響について、緊急のリスクアセスメントを行いました。目的は以下の通りです。

  • ヨーロッパにおける人の健康への緊急のリスクを明らかにする
  • ヨーロッパはどのように対応すべきかガイダンスを示す
  • このウイルスが世界的流行となるまでの期間の危険性にどのように対応するのか検討する

結論と勧告

最近北米の小児で起きたパンデミック2009ウイルスの遺伝子部分を保有するブタ由来3重再集合インフルエンザA(H3N2)ウイルス感染、そしてこのウイルスがおそらくヒト-ヒト感染を起こしたことを受けて、ECDC(ヨーロッパ疾病対策センター)は以下のような予備的な意見に到達しました:

  • これらのウイルスは北米のブタで見つかることが知られていますが、ヨーロッパ(EU/EEA)のブタでは見つかっていません。しかしながら、ブタでのインフルエンザサーベイランスは北米やヨーロッパでは不十分であり、特にヨーロッパではブタと濃厚な接触のあった人での感染サーベイランスは十分ではありません。それ故全てのブタインフルエンザの疫学的発表について注意して取り組むべきです。
  • 米国のほとんどの症例は軽症でした。入院症例は基礎疾患がありましたが、すべての症例で完治しています。
  • これらのウイルスは現在の季節性インフルエンザワクチンのA(H3N2)コンポーネントでは予防できないようですが、ノイラミニダーゼ阻害剤(オセルタミビルやザナミビル)に感受性です。年配者では今までにワクチンを受けていればある程度防御できるようです。
  • 米国ではこれらのウイルス又は類似ウイルスによるごく限局されたヒト-ヒト感染がすでにいくつか起こっていたと米国CDCは考えています。
  • (パンデミックの始まった)2009年3月とは違い、アメリカ大陸のどの地域でも予想以上の多数のインフルエンザ患者の報告は出ていません。そのため今回の米国の症例は大きな現象を示す異常値では無いようです。
  • それ故全てを考慮するとヨーロッパにおいて、人の健康に喫緊かつ直接的な危険性は低いものです。
  • ECDCのスタッフは状況を注意して見守りWHO、米国CDC、EUメンバー国の関係専門家と直接連絡を取っています。
  • これらのウイルス感染がヨーロッパ内の国立インフルエンザ研究所での診断的検査を経て確定診断される必要があります。
  • ヨーロッパ(及び北米)の家畜ブタでのもっと積極的なウイルス学的サーベイランスが、ブタに直接、間接的に接触した人での感染のサーベイランスも含め公衆衛生上大きな論議となっています。
  • 同様にインフルエンザウイルスがパンデミックとなる可能性を評価するための公式なアプローチがもっと必要であり、そのようなウイルス学的リスクアセスメントは今後も展開し続けるべきです。
  • 通常とは異なるインフルンザウイルスについて国立インフルエンザセンターやWHOの協力センターへ臨床学的及び疫学的データと共に報告を続けるべきです。

出典

ECDC
risk assessment: Swine-origin triple reassortant influenza A(H3N2)viruses in North America
http://www.ecdc.europa.eu/en/publications/Publications/i111129_TER_swine_origin
_triple_reassortant_influenza%20A_H3N2_viruses%20in%20North%20America.pdf[PDF形式:1.3MB]