アメリカにおける新型インフルエンザ感染患者の追加症例

2011年12月9日CDC(原文〔英語〕へのリンク

CDCは2州で2種類の異なった新型インフルエンザAウイルス感染症例を2人確定診断しました。2人は完治しています。両症例のウイルスは米国内のブタで見つかっていて、以前にこのウイルスに感染したヒトの何人かは直接又は間接的なブタへの接触に関連したものでした。しかしこの2症例のどちらも発症前に直接又は間接的なブタとの接触は報告されていません。CDCの検査で、この2種類の新型ウイルスは抗ウイルス剤のオセルタミビル(タミフル)とザナミビル(リレンザ)に感受性でした。

ウェストバージニア州

新型インフルエンザウイルス感染の1症例はウェストバージニアで報告され、2009H1N1ウイルスのM遺伝子と、ブタ、ヒト、鳥由来の遺伝子を持つ新型インフルエンザA(H3N2)に感染した小児で、このウイルスは2011年8月にバージニアで初めて報告されたものです。以前このウイルスに感染した10人のヒトが他の4州から報告されています。インディアナ州(2人)、ペンシルベニア州(3人)、メイン州(2人)、アイオワ州(3人)です。

この新型インフルエンザA(H3N2)ウイルスは現在流行している季節性(ヒト)インフルエンザA(H3N2)ウイルスとは全く異なるものですが、1990年代にヒトで流行したインフルエンザウイルスとわずかに類似しています。そのため成人の一部ではこのウイルスに対していくらか免疫が残っているかもしれません。このことが11症例のうちの10人が小児で見られたことの説明になる可能性があります。

この(ヒトではなく)ブタで循環しているウイルスのヒト感染例のほとんどはブタとの接触に関連していましたが、このウイルスの限定的なヒト-ヒト感染がごく最近アイオワ州で起こったと考えられています。ウェストバージニア州では調査が続けられていますが、ブタとの直接又は間接的な接触の報告はなく、限定的なヒト-ヒト感染が再び起こったかもしれません。

米国内でこのウイルスのさらなるコミュニティ伝播は検出されていません。しかしながらCDCはこの状況を大変深刻に捉えています。対策として報告症例を取り巻くサーベイランスをさらに強化し、ワクチンウイルスを開発し、必要になればワクチン製造が開始できるように製造企業へ提供しました。

ミネソタ州

新型インフルエンザAウイルス感染のもう一症例はミネソタ州で報告されました;このウイルスは米国内のブタで循環しているインフルエンザA(H1N2)で、普通はヒトに感染せず疾患を引き起こすことはありません。この症例は、2007年に新型インフルエンザウイルス感染が届け出伝染病になってからCDCに報告された2例目の新型インフルエンザA(H1N2)ウイルス感染です。その第一症例は2007年にミシガン州で報告されました。いくつかの特徴として、このH1N2ウイルスはヒトインフルエンザA(H1N1)ウイルス、いわゆる2007年当時ヒトの間で流行していたA/ニューカレドニア/20/99様ウイルスに近いウイルスです。その結果、A/ニューカレドニア/20/99様ウイルスに曝露した人々はミネソタ州で確認されたウイルスに対してある程度防御免疫が存在するかもしれません。この症例も直接又は間接的なブタとの接触は報告されていません。つまり限定的なヒト-ヒト感染がこの場合も起こっていたかもしれません。

ヒトでのブタインフルエンザ感染の確定

普通はブタで見つかる新型インフルエンザAウイルスのヒト感染はまれです。しかしながら最近、そのような確定診断の頻度が増加してきました。これは、以下に述べる一つ以上の要因を含む様々な理由で起こります:まず米国内でのこれらのウイルスを検査する検査方法が2009H1N1パンデミック以来進歩してきました。この進歩のおかげで以前には検出されていなかったであろうウイルスが現在では同定されるようになったかもしれません。次にこの時期が、米国内でのインフルエンザサーベイランスが強化されることに由来するのかもしれません。CDCは各州に対し、季節性インフルエンザサーベイランスを目的としてシーズン最初のインフルエンザウイルス検体を解析し、送付するように依頼しています。この業務は、季節性インフルエンザ活動性の大変低い現時点では、散発的な新型インフルエンザ感染をより多く検査することにつながる可能性があります。3点目として、CDCで同定されるブタ由来新型インフルエンザウイルスの検出頻度の増加は、感染したブタへの曝露や、限定的なヒト-ヒト感染の症例数が実際に増えていることに由来している可能性もあります。

ミネソタ州で分離された新型インフルエンザウイルスA(H1N2)は米国内のブタ集団で循環していることが知られています。2009H1N1のM遺伝子を持つ新型インフルエンザH3N2ウイルスのブタでの流行は知られていませんが、農務省(USDA)ブタインフルエンザサーベイランスプログラムでのブタの調査で確認されています。

最近の新型インフルエンザウイルスのヒト感染に対応してCDCは以下の情報を伝えます。

  • CDCは季節性インフルエンザウイルスを防御するための季節性インフルエンザワクチンを推奨します;しかしながら季節性ワクチンは通常ブタで循環しているインフルエンザウイルスに対する防御にはならないようです。
  • これらのウイルスで引き起こされる疾患に対して治療効果が期待されるFDA認可の2つの薬剤が存在します。抗ウイルス剤であるオセルタミビルとザナミビルはヒトの季節性インフルエンザウイルス感染症で使われていますが、これらはブタ由来のインフルエンザウイルスに対しても効果が示されました。(抗インフルエンザウイルス剤に対するさらなる情報はwww.cdc.gov/flu/antivirals/whatyoushould.htmでご覧下さい)
  • 適切に処理され準備された豚肉やブタ由来製品を食べることでヒトの中で伝播が起こることは証明されていません。ブタ肉の適切な処理や準備についてのさらなる情報についてはUSDAのウェブサイトfact sheet農場から食卓への新鮮な豚肉”についてご覧下さい。

現時点で、CDCは以下のことを推奨します。

  1. 1.ブタと直接又は間接的な接触の後、(以下に示すような)インフルエンザ様症状があり、医学的手当の必要な人は主治医や医療提供者へ曝露のあったことを知らせて下さい。(インフルエンザ症状のリストはwww.cdc.gov/flu/about/disease/symptoms.htmで入手できます。
  2. 2.ブタへの曝露のなかったヒトでILI症状のあるヒトへCDCの推奨する治療は季節性インフルエンザと同様です。
  • もしインフルエンザ様症状があり、重症であったり(症状が)心配であれば医療機関を受診して下さい。
  • 一部の人々ではインフルエンザに関連した重症合併症のリスクが高く(幼年者、年配者、妊婦、長期にわたり治療を受けている人々など)、これは季節性、新型インフルエンザの両方に対して当てはまります。(インフルエンザに関連した合併症の高いリスクのある人々のリストはwww.cdc.gov/flu/about/disease/high_risk.htm
  • これらの人々がILI症状を呈したら主治医に相談して下さい。(最近の新型インフルエンザA(H3N2)のほとんどの症例は小児です。)
  • 主治医はインフルエンザを治療できる抗ウイルス剤を処方してくれるかもしれません。この薬剤での治療は早く始めるほどよく効きます。

ブタインフルエンザとこれまでに報告された新型インフルエンザA(H3N2)ウイルスに関するさらなる情報はCDCブタインフルエンザウェブサイトwww.cdc.gov/flu/swineflu/index.htmでご覧下さい。

出典

CDC:CDC confirms two human infections with novel influenza viruseshttp://www.cdc.gov/media/haveyouheard/stories/novel_influenza.html