オーストラリアにおける百日咳について

2012年1月5日国立感染症研究所感染症情報センター、オーストラリア政府高齢者保健局

百日咳は百日咳菌Bordetella pertussisによって引き起こされる極めて感染性の高い病気です(麻しんウイルスと並び高い感染力があります)。呼吸器を介して感染します。百日咳はワクチンが有効な疾患です。ワクチンの普及により世界の百日咳患者数は激減し、日本では1981年に三種混合(ジフテリア・百日せき・破傷風)ワクチン(DPT)が導入された後、患者数は減少しましたが、近年、ワクチン効果が減弱した青年・成人も百日咳に罹患しており、新たな対策(追加接種)が必要となっています。
百日咳ワクチンによる免疫効果は5~10年程度と見積もられており、ワクチン既接種の成人も百日咳に対する感受性があり、成人が感染した場合、症状は軽く、脳症などの重症例や死亡例はきわめて稀ですが、成人が百日咳菌を保菌した場合、本人が気づかないうちに乳幼児への感染源となります。ワクチン未接種児が百日咳菌に感染した場合、重篤化し易く、死亡することもあります。

オーストラリアで百日咳(pertussis, whooping cough)の届出症例数が近年増加傾向にあります。1991年からのデータによると、年により症例数の増減はありますが、2009年の29,800例から2010年34,794例、2011年36,641例と増加しています。これらの症例は主にニューサウスウェールズ州(12,626例)、クイーンズランド州(8,514例)、ビクトリア州(8,263例)、ウエスタンオーストラリア州(3,529例)で発生しています。

日本では2008年6,753例、2009年5,208例、2011年49週までに4,114例の報告がありました。

海外へ渡航する際は、事前にご自身の定期予防接種の履歴を確認するとともに追加接種を受けることを検討してください。また、オーストラリアへの渡航者でワクチン接種歴がない場合(もしくは不明)、12歳未満の小児に濃厚接触する予定のある人は、以下の予防対策をとってください。

  • 手指の手洗いや衛生的な状態を保つ
  • 感染者との接触を避ける
  • 長期滞在する人は、百日咳ワクチン等の追加接種を医療機関でご相談ください。

感染症情報百日咳国立感染症研究所感染症情報センター

参考