世界におけるインフルエンザ流行状況(9)

2012年1月6日 WHO(原文〔英語〕へのリンク

要約

  • 北半球の温帯地域の国々ではインフルエンザの活動性は低く季節的な(流行)閾値以下ですが、カナダの一部、ヨーロッパの数カ国(スペイン、トルコ)、北部アフリカ(チュニジア、アルジェリア)、中東(イラン)で活動性の著しい増加が報告されました。これらの地域での過去数週間にわたる活動性の継続した増加はインフルエンザ流行シーズンの始まりを示しているようです。
  • 北半球の温帯地域の国々で検出されるウイルスはA(H3N2)亜型が優勢です。ほんのわずかなA(H1N1)pdm09がこの数週間で報告されています。
  • 熱帯地域の国々では、コスタリカを除いてインフルエンザ活動性は低レベルです。コスタリカでは主にインフルエンザA(H3N2)が検出されています。
  • 南半球温帯地域での伝播はシーズンオフレベルですが、チリとオーストラリアではA(H3N2)が両国で、わずかなB型の伝播がオーストラリアで継続して報告されています。

北半球の温帯地域

この地域の国々ではインフルエンザの活動性はまだ基準値以下ですが、いくつかの地域で呼吸器疾患とインフルエンザウイルスの検出が増加しています。

北部アメリカ;

カナダでは、インフルエンザ陽性率、インフルエンザ様疾患(ILI)での受診率が12月中旬から継続して増加しています。しかしながら全国的なインフルエンザ活動性はシーズンオフレベルのままです。限局した活動性がブリティッシュコロンビア地域で報告され、散発的な症例が4州(アルバータ、ブリティッシュコロンビア、オンタリオ、ケベック)の9地域で報告されています。先週長期療養施設で1件、小児のインフルエンザ入院が2件、合計3件のインフルエンザ発生がありました。63件の検査室確定症例のうち、51件はインフルエンザA(H3N2)、7件はインフルエンザA亜型不明、2件がB型でした。現在までの今シーズン10人の成人インフルエンザ入院があり6人が65歳以上でした。

アメリカ合衆国全体ではILIの受診率は低く(1.2%)、基準値(2.4%)以下で、検体のインフルエンザ陽性率も2%未満のままです。両方とも12月中旬から増加してきています。2011年10月から検出された1000検体のウイルスのうち、85%はインフルエンザA型でした。亜型確認されたA型のうち、84%はA(H3N2)で残りはA(H1N1)pdm09でした。122地区の定点調査で報告された肺炎とインフルエンザでの死亡者の割合は、例年と比較すると低値でした。

ヨーロッパ;

ヨーロッパでのインフルエンザ活動性は低いままですが、呼吸器疾患活動性とインフルエンザウイルス検出率はいくつかの地域で過去数週間にわたり増加し始めました。全体的なILI受診と重症急性呼吸器感染症(SARI)での入院はシーズンオフのレベルのままです。インフルエンザ活動性の地理学的な分布について報告のあった35ヶ国のうち21ヶ国では活動性は見られず、1ヶ国(イタリア)で地域的な活動性が見られ、13ヶ国でこの数週間散発的な活動性が報告されています。スペインとトルコではインフルエンザウイルスの検出率が著しく増加しており、定点調査のサンプルでの陽性率がそれぞれ17%、23%でした。インフルエンザA(H3N2)が最も多く検出されるウイルスでした。フランスでは急性呼吸器感染症での受診率が季節的な基準値を超えましたが、それに伴うILIでの受診率やインフルエンザウイルス検出率の増加はありませんでした。疫学週第51週のヨーロッパ定点調査検体の23%はインフルエンザ陽性で、前週の2倍に増えています。インフルエンザA(H3N2)が最も多く同定されており、インフルエンザAウイルス414検体のうち94%がA(H3N2)亜型でした。ヨーロッパ死亡報告に報告された全死亡数は、同システムへ報告するヨーロッパ全体の同時期に予測される死亡数の範囲内でした。

北部アフリカと東部地中海地域

これらの地域、特にアルジェリア、チュニジア、イランでは10月からインフルエンザ陽性検体数が増加しています。ヨーロッパと同様にインフルエンザA(H3N2)が優勢な亜型として検出されています。

アジア

中国北部でインフルエンザ活動性が前週からわずかに増加し8.6%となり、B型ウイルスが優勢です。韓国と日本ではここ数週間、少数ですがわずかにインフルエンザ陽性検体が増加しており、そのほとんどがA(H3N2)でした。

熱帯地域

アメリカ

コスタリカ以外のカリブ海地域、中米のほとんどでインフルエンザの活発な伝播は報告されていませんが、コスタリカではインフルエンザA(H3N2)の検出が増加し続けています。

サハラ以南アフリカ

散発的な検出と低レベルでの伝播が報告されています。カメルーンではインフルエンザA(H3N2)の伝播が2011年12月中旬のピークの後減少しているようです。ケニアではインフルエンザ伝播の継続が報告されています。しかし陽性検体数は過去4週間減少しており現在は非常に低レベルです。

アジア

熱帯アジアにおける全体的なインフルエンザ活動性は低いままです。インドでは9月から低レベルでのインフルエンザB型の循環の報告が続いています。9月のインフルエンザ活動性のピークに続いて、ラオス、カンボジア、ベトナムでは伝播の減少が報告されており、現在は低レベルに戻りました。他のアジア熱帯地域の国々では少数のA(H3N2)とB型の両方の報告が続いています。

南半球の温帯地域

この地域のインフルエンザ活動性はシーズンオフレベルです;しかしながら、チリ、オーストラリアでは低レベルのインフルエンザA(H3N2)の報告が続いており、オーストラリアではさらに少数のインフルエンザBが報告されました。

出典

WHO:Influenza update06 January 2012Update number150
http://www.who.int/influenza/surveillance_monitoring/updates/latest_update_GIP
_surveillance/en/index.html