中国広東省でのインフルエンザA(H5N1)による人死亡例のリスク評価(抜粋)

2012年1月4日  ECDC(原文〔英語〕へのリンク[PDF形式:1255KB]

背景にある情報

中国衛生省は高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)A(H5N1)ウイルス感染後の死亡例1例を報告しました。患者は39歳の男性バス運転手で中国南部の、香港北部に隣接する広東省深セン市内に居住し働いていました。2011年12月21日に発症し、4日後に入院し、31日に多臓器不全で死亡しました。報告では患者には発症前の渡航歴はなく、家禽や野鳥との濃厚接触もなく、患者のいる環境下での暴露や直接接触はなかったそうです。

遺伝子解析では患者から分離されたインフルエンザA(H5)ウイルスはクレード2.3.2.1に属し最近香港の野鳥から分離されたウイルス(A/Guangdong-Shenzhen/1/2011HA gene segment accession nr. EPI347304 と個人的情報)と大変類似していました。

2011年広東省では動物での鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルス感染は報告されていません。隣接する香港特別行政区では、A(H5N1)ウイルス感染が2011年12月に1羽の死んだ家禽、2羽の死んだ野鳥から確認されており、A(H5N1)ウイルスサーベイランスが特に積極的に行われています。

今回の症例は2011年中国で報告された最初のヒト感染例です。2003年から中国では40症例のヒト確定診断例、26例の死亡例が報告されています。

主な結論と勧告

中国は広東省で高病原性鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルス感染のヒト症例1名を報告しました。クラスター発生ではありません。ウイルスゲノムの最初の配列解析からウイルスは遺伝学的に香港の野鳥から最近分離されたインフルエンザA(H5N1)ウイルスに近い関連性がありました。それ故、ヒト由来というよりも感染源はトリであるようです。

この新たなヒト症例は予想外ではありませんでした。鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルスがトリの中で定着し、家禽に感染し、散発的な発生のある国では、時としてヒト症例は小さなクラスター(群発)発生します。

中国広東省の単一のヒト死亡例報告は現在のEUまたは全世界的な野生型A(H5N1)からのヒトへの健康リスクアセスメントを変更するものではありません。EU/EEA諸国へのリスクは低いと思われます。しかしながら家畜や野生動物における鳥インフルエンザA(H5N1)、他のインフルエンザウイルスに対する警戒は重要です。

出典

ECDC:Rapid risk assessment:Human fatality from highly pathogenic avian influenza A(H5N1)virus infection in Guangdong province, China
http://ecdc.europa.eu/en/publications/Publications/120105_TER_RA_H5N1_China.pdf[PDF形式:1255KB]