デングと重症デング(Fact sheet)

2012年1月 WHO( 原文は2014年3月に更新されました。2014年のシートを参照してください)

概要

  • デングは蚊媒介性感染症です。
  • 感染により風邪様症状が出、時には重症デングと呼ばれる死につながる合併症を起こすことがあります。
  • ここ数十年世界的にデングの発生が劇的に増加してきています。
  • 現在世界人口の約半数にリスクがあります。
  • デングは世界中の熱帯、亜熱帯地域、ほとんどが都市部、都市郊外で見られます。
  • 重症デングは、アジアやラテンアメリカのいくつかの地域の子供達で、重症状や死亡の主な原因になります。
  • デングや重症デングに特異的な治療法はありませんが、早期発見と適切な医療機関への搬送で死亡率を1%未満に低下させることができます。
  • デング予防と制御は、もっぱら効果的なベクターコントロールに依存しています。

デングは蚊媒介感染症で世界中の熱帯、亜熱帯地域で見られます。近年、都市部や都市郊外で伝播が著明に増加しており国際公衆衛生上の大きな懸案となっています。

重症デング(以前はデング出血熱として知られていました)は1950年代、フィリピンとタイでデングが流行した際、初めて認識されました。今日、重症デングはアジアやラテンアメリカのほとんどの国々でこの地域の小児の入院や死亡の主な原因となっています。

デングを起こすウイルスには近い関係はありますが、独立した4つの血清型(DEN-1、DEN-2、DEN-3、DEN-4)があります。一つの血清型ウイルスに感染し回復すると、生涯その血清型への免疫がつきます。しかし、回復後他の血清型への交差免疫は部分的、一時的です。引き続き他の血清型ウイルスに感染すると重症デングになるリスクが増大します。

デングの世界的な負荷

デング発生がここ数十年世界中で劇的に増加しています。25億人以上-世界人口の40%以上-に現在デングのリスクがあります。現在WHOは毎年5000万から1億人の感染が世界中で起こっていると推定しています。1970年以前は、9ヶ国でのみ重症デングの発生がありました。この疾患は現在、アフリカ、アメリカ地域、東部地中海沿岸地域、東南アジア、西太平洋地域の100ヶ国以上で流行しています。東南アジアと西太平洋地域で最も深刻な影響が出ています。

アメリカ地域、東南アジア、西太平洋地域では2008年に120万人以上、2010年には220万人(参加国からの公式報告)以上の患者数です。最近報告患者数が増加し続けています。2010年、アメリカ地域だけで160万人の患者が報告され、そのうち49,000人が重症デングでした。

新しい地域にこの疾患が拡がるにつれて、患者数が増加するだけではなく爆発的な流行が起こります。現在ヨーロッパでもデング熱の流行するおそれがあり、2010年にはフランスやクロアチアで初めてデング患者の報告がありヨーロッパの他の3ヶ国では輸入症例が確認されました。

毎年推定500,000人以上が重症デングで入院が必要とされ、その大部分が小児です。その約2.5%が死亡しています。

伝播

Aedes aegypti(ネッタイシマカ)がデングの主な媒介生物です。ウイルスは感染雌蚊の刺咬を介して人へ感染します。4-10日のウイルス増殖期間の後、感染蚊はその生涯にわたってウイルスを伝播することができます。

感染したヒトはウイルスの主たるキャリアーであり、ウイルス増殖宿主であり、未感染の蚊へのウイルス提供源となります。すでにデングウイルスに感染したヒトは発症後シマカを介して感染伝播(4-5日、最長12日)することができます。

ネッタイシマカは都市環境に生息し、多くが人工容器で繁殖します。他の蚊とは違いネッタイシマカは日中吸血します;刺咬する時間帯のピークは早朝と夕暮れ前です。メスのネッタイシマカは産卵期毎に複数の人から吸血します。

Aedes albopictus(ヒトスジシマカ)はアジアで2番目のデングベクターですが、古タイヤ(繁殖環境)や他の品目(lucky bamboo(観葉植物)など)の国際貿易に伴い広く北アメリカやヨーロッパへ拡がっています。ヒトスジシマカは適応性に優れており、それ故ヨーロッパの低い気温でも生存できます。その拡大は零度以下の温度耐性、越冬(Hibernation)、微生殖場所への避難などによるものです。

特徴

デング熱は激しいインフルエンザ様疾患で、乳児、幼児、成人が罹りますが、滅多に死亡はありません。高熱(40℃/104°F)を伴う以下の2症状以上があるときはデングを疑うべきです:激しい頭痛、眼の奥の痛み、筋痛や関節痛、吐き気、嘔吐、リンパ節の腫脹や発疹。症状は感染蚊に刺された後4-10日の潜伏期を経て出現し通常2-7日持続します。

重症デングは致死的な症状を併発する可能性があり、それは血漿漏出、体液貯留、呼吸促迫、重度の出血、臓器不全などです。危険兆候は初発症状から3-7日後に起こり、同時に体温低下(38℃/100°F以下)と以下の症状があります;激しい腹痛、連続する嘔吐、呼吸促迫、歯肉出血、倦怠感、不穏、吐物内血液。危篤状態の24-48時間後に死亡することがあります;合併症や致死リスクを避けるために適切な医学的治療が必要です。

治療

デング熱には特異的な治療法はありません。

重症デングは、現象や病態の進行に経験のある医師と看護師による医学的ケアにより救命でき、20%以上の致死率を1%未満にまで減少させることができます。患者の体液量管理が重症デングでは決定的となります。

予防接種

デングを予防するワクチンはありません。デング/重症デングに対するワクチン開発は、最近進展が見られましたが、まだ開発(途中)段階です。WHOは各国や個人パートナーへ技術的助言や手引き書を提供しワクチン研究と評価を支援しています。いくつかのワクチン候補が試用の各段階にきています。

予防と制御

現在、デングウイルス伝播の制御と予防の唯一の方法は媒介蚊との戦いです。以下のような方法があります。

  • 環境の管理と改善により産卵環境から蚊を閉め出す。
  • 固形廃棄物を適切に廃棄し人工生育場所を取り除く。
  • 週毎に家庭での貯水容器を交換し、空にし、清掃する。
  • 屋外の貯水容器に適切な殺虫剤を添加する。
  • 網戸、長袖の衣服、殺虫剤で処理した物、蚊取り線香、噴霧器など家庭常備の防護対策ツールを利用する。
  • ベクターコントロールを支援するためにコミュニティーの参加と動員を向上させる。
  • 流行時期には緊急ベクターコントロールの一方法として殺虫剤の空中散布を利用する。
  • 制御介入の効果を評価するために、積極的なベクター監視とサーベイランスを行うべきである。

WHO対応

WHOのデング対応には以下のような方法があります。

  • 共同検査室ネットワークを通して各国の流行判断を支援する;
  • デング流行の効果的な対応のために技術的支援やガイダンスを提供する;
  • 地域的なレベルのいくつかの共同センターで臨床管理、診断、ベクターコントロールについての訓練を行う;
  • エビデンスに基づいた戦略や政策を構築する;
  • 殺虫剤や技術の応用など含めた新しいツールを開発する;
  • 100以上の参加国からデングと重症デングの公式記録を収集する;
  • 参加国のためにデング予防と制御のガイドラインやハンドブックを発行する。

出典

WHO:Fact sheet
Dengue and severe dengue
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs117/en/index.html