タイとミャンマーの国境付近における薬剤耐性マラリアの状況

2012年4月16日 WHO

熱帯熱マラリアのアルテミシニン誘導体に対する耐性獲得は、この数年間、世界的に懸念されてきました。耐性を獲得した原虫を世界に広がる前に阻止することには限界があります。アルテミシニン併用療法は、合併症のないマラリアに対する第一選択療法としてWHOが推奨しており、これらの非常に効果的な薬剤の併用が普及することによって、近年のマラリアの治療が著しく成功しました。現在では、アルテミシニン併用療法と同等の有効性及び忍容性がある抗マラリア薬はありません。

Emergence of artemisinin-resistant malaria on the western border of Thailand:a longitudinal study(タイ西部のアルテミシニン耐性マラリアの発生:経年的研究)”という研究(2012年4月5日、ランセット誌に掲載)は、タイ西部におけるアルテミシニン耐性熱帯熱マラリアの存在に関して重要な根拠が示されています。この調査結果は。タイとミャンマーの国境沿いで発生しているアルテミシニン耐性についての懸念をさらに深めるものです。この研究結果を踏まえ、WHOは、世界的なマラリア・コミュニティとドナー組織に、タイとミャンマーのアルテミシニン耐性を予防し、抑制するための取り組みを至急拡大し、大メコン圏で進められている取り組みを強化するよう、繰り返し求めています。 アルテミシニン耐性の発生によって最も影響を受けるのは、カンボジア、タイ、ベトナムミャンマーの4か国です。このうち、マラリアが最も大きな疾病負荷となっているのはミャンマーです。ミャンマーでは、4,000万人以上(人口の69%と推計)がマラリアの常在する地域に住んでおり、2,400万人が流行地域に住んでおり、2010年に65万人のマラリア患者と788人のマラリア関連死亡が報告されました。ミャンマーは、広範囲に移動する移民がおり、また、経口のアルテミシニン単剤療法が普及しており、インドに隣接していることから、世界的なアルテミシニン耐性の発生を予防する取り組みが成功するかどうかの決め手となっています。

WHOは、ミャンマーや他の大メコン圏の国々において、アルテミシニン併用療法の有効性を心配する必要はないと主張しています。たとえ、アルテミシニン耐性の状況下で患者の治療が長期間になったとしても、併用する薬剤に効果があれば、アルテミシニン併用療法は、依然として、合併症のないマラリア患者の治療に最も有効な治療法です。アルテミシニンに対する反応が遅れる患者の大多数は、併用される薬剤で治癒します。ミャンマーでは、3種類のアルテミシニン併用療法が登録されていますが、薬剤の効果がモニタリングされているすべての定点医療機関で高い有効性(95%)を保っています。

出典

WHO:The status of drug-resistant malaria along the Thailand-Myanmar border
http://www.who.int/malaria/publications/atoz/drug_resistance_myanmar_thailand
_border_april_2012.pdf[PDF形式:89KB]