世界におけるインフルエンザ流行状況(18)

2012年5月11日 WHO(原文〔英語〕へのリンク

要約

北半球の温帯地域のほとんどの国々では、季節性インフルエンザの活動性はピークを越えました。

北半球の2011年から2012年のインフルエンザシーズンは、優位を占めたウイルスが地域によって異なりました。北米では、カナダで、特にシーズン後半に、インフルエンザA(H3N2)よりもインフルエンザB型がわずかに優勢でした(インフルエンザA(H3N2)は67%、インフルエンザB型は33%)。一方、米国では、割合は逆で、インフルエンザA(H3N2)が優勢でした。メキシコでは、ほとんどが、インフルエンザA(H1N1)pdm09でした。ヨーロッパでは、インフルエンザウイルスの大部分がインフルエンザA(H3N2)であり、インフルエンザA(H1N1) pdm09とB型は少数でした。アジアでは、中国北部とモンゴルで、シーズンの初めはインフルエンザB型がほとんどでしたが、その後、インフルエンザA(H3N2)が出現しました。韓国と日本は、順序が逆で、シーズンの初めはインフルエンザA(H3N2)が優勢で、その後、インフルエンザB型が出現しました。

インフルエンザシーズンの初めでは、検査されたウイルスのほとんどが現在の3価の季節性ワクチンに含まれている株と抗原的に関連性がありました。しかし、シーズンの半ばに、米国とヨーロッパで検査されたA(H3N2)ウイルスに相違がみられ、最近の数か月間で検査されたA(H3N2)ウイルスのかなりの数で、ワクチン株ウイルスとの交差反応性が低下したことが示されています。インフルエンザB型ウイルスの検出は、ビクトリア系統と山形系統の2系統から検出されており、以前は、中国とヨーロッパの一部地域でわずかに優勢でした。

ノイラミニダーゼ阻害薬に対する耐性は、シーズンの大部分を通じて、低いか検出されませんでした。しかし、米国で検出されたインフルエンザA(H1N1)pdm09で、オセルタミビルに対する耐性が若干増加したと報告されています。これらの耐性の大部分(16株のうち11株)はテキサス州からの報告で、テキサス州では、インフルエンザA(H1N1)pdm09が優勢なウイルスでした。

北半球の温帯地域

北半球のインフルエンザの活動性は、全体的に減少しています。米国や英国などの数か国では、2011年から2012年のシーズンは、例年に比べて穏やかでした。ヨーロッパやアジア北部の他の国では、インフルエンザの活動性は例年同様のレベルに達しました。

北米

インフルエンザシーズンは、例年よりも遅く始まり、北米におけるインフルエンザの活動性は全体的に減少しています。カナダでは、インフルエンザB型が優勢なウイルスであり、米国では、インフルエンザA(H3N2)が優勢でした。

カナダでは、4月23日から29日の週に、インフルエンザの活動性は減少し続けていましたが、いくつかの地域では、依然として、活動性の上昇が報告されました。全国のインフルエンザ様疾患(ILI)の受診率は、前回の報告よりも若干増加しましたが、集団感染事例数、インフルエンザ陽性検体の割合、入院例と死亡例、インフルエンザの活動性が広範囲または局地的と報告された地域の数は、すべて減少しました。4月23日から29日の週に検査された3,447検体のうち、15%がインフルエンザ陽性であり、5週間前にピークを迎えた後、連続して減少しました。この報告週で、ILIの受診率が最も高かったのは5歳未満の小児(受診者1,000人あたり48.2人)であり、次いで、5歳から19歳(受診者1,000人あたり29.6人)でした。今週、新たに67例のインフルエンザ関連入院が報告され、前回の報告の118例に比べて減少しました。予防接種監視活動(IMPACT)ネットワークによって、今シーズン当初から報告された16歳未満の小児の入院例のうち、35%は2歳未満の小児でした。サーベイランスシステムでは、1,439例のインフルエンザ関連入院のうちの33%と、80例の検査確定死亡者のうちの78%は、65歳を超える成人でした。インフルエンザBの検出割合は増加しており、最近の報告では、県の検査施設で検出されたインフルエンザウイルスの67%を占めていました。今シーズンの初めから、亜型の解析が行われたインフルエンザA型ウイルスのうち、68%がA(H3N2)で、32%がA(H1N1)pdm09でした。今シーズンの初めから、1,010株のインフルエンザウイルスが抗原解析されました。A(H3N2)ウイルスの196株のうち、177株(90%)はワクチン株のA/Perth/16/2009と抗原的に類似していましたが、19株(10%)のウイルスはこのワクチン系統に対して産生される抗血清との反応性が低下していました。解析された632株のインフルエンザB型ウイルスのうち、315株(50%)はワクチン株のB/Brisbane/60/2008(ビクトリア系統)と抗原的に類似していましたが、解析された315株のうち1株で、B/Brisbane/60/2008に対して産生される抗血清への反応性が低下していました。残りの317株(50%)のインフルエンザB型ウイルスは山形系統に属するB/Wisconsin/01/2010-likeと抗原的に関連がありました。

米国では、インフルエンザの活動性は、全国的に減少しており、インフルエンザに関するデータによれば、2011年から2012年のインフルエンザシーズンは例年に比べて穏やかであったようです。ILIの受診率は、国の季節性の閾値(2.4%)を3月第2週のピーク時に超えた後減少し続けています。インフルエンザ陽性となった呼吸器検体数は、3月中旬以降減少しており、4月23日から29日の週は15%でした。広範囲な活動性と報告された州は、前回の報告の6州から2州に減少しました。122市のサーベイランスシステムで報告された肺炎とインフルエンザによる死亡は7%で、流行閾値の7.6%よりも低い状態が続いています。今シーズン当初から、インフルエンザに関連した小児の死亡は合計20例報告されましたが、2010年から2011年のシーズンに報告された122例と比べると、極めて少ない報告数です。成人の検査で確定されたインフルエンザ関連の入院例に多かった基礎疾患は、慢性肺疾患、肥満、代謝性疾患でした。小児の入院例の基礎疾患で多かったのは、慢性肺疾患、喘息、神経疾患でした。しかし、小児の入院例の約半数近くは、基礎疾患が確認されませんでした。カナダとは対照的に、4月中旬に検査された2,886検体のうち、32%がインフルエンザB型で、68%がインフルエンザA型でした。インフルエンザB型の検出割合は増加していますが、今シーズン当初から、全体的にみると、検出されたウイルスの13%を占めるのみです。亜型が解析されたインフルエンザA型ウイルスのうち、A(H3N2)が84%(177株)、A(H1N1)pdm09が16%(34株)でした。2011年10月1日以降、1,316株のインフルエンザウイルスが抗原解析され、現在の季節性の3価インフルエンザワクチンに含まれるウイルスに抗原的に関連性があったのは、インフルエンザA(H1N1)pdm09の98%、インフルエンザA(H3N2)の81%、インフルエンザB型の42%でした。オセルタミビルに対する耐性は、検査された1,067株のインフルエンザウイルスA(H1N1)pdm09のうち、1.5%(16株)と報告されましたが、200株のインフルエンザA(H3N2)ウイルスとインフルエンザB型ウイルスには耐性はありませんでした。16例のうち、オセルタミビル投与歴に関する情報が得られたのは14例でした。14例のうち、3例は検体採取時に1日以上オセルタミビルを使用しており、2人は家族がオセルタミビルを使用しており、9人は、本人や家族のオセルタミビルを使用していませんでした。2011年から2012年のシーズンで報告された16例のオセルタミビル耐性のA(H1N1)pdm09ウイルスのうち、11例がテキサス州からの報告でした。テキサス州で検査されたインフルエンザA(H1N1)pdm09の371検体中、2012年1月から4月に集められた11検体(3.0%)がオセルタミビルに耐性でした。

メキシコでは、カナダや米国と同様に、インフルエンザの活動性は減少しており、インフルエンザA(H1N1)pdm09とインフルエンザBがわずかに検出されています。

ヨーロッパ

4月23日から29日の週は、ILIと急性呼吸器感染症(ARI)の受診率は低く、ヨーロッパ全体で、インフルエンザの活動性の減少傾向が続いています。最近の報告では、活動性が高いのはヨーロッパ東部で、特にロシアです。インフルエンザ陽性検体数は、過去数週間、減少が続いており、4月下旬に定点の外来診療機関で採取された308検体のうち18%がインフルエンザ陽性でした。重症急性呼吸器感染症(SARI)による入院症例数も減少しており、ヨーロッパ西部では、4月23日から29日の週はインフルエンザに関連したSARI患者の報告はありませんでした。ヨーロッパ死亡率監視プロジェクトによる報告では、この2011年から2012年のシーズン中、特に5週から11週の間に、65歳以上の高齢者の超過死亡が著しく増加し、この増加はヨーロッパでのインフルエンザの活動性に一致していましたが、現在は、死亡率は通常のレベルに戻っています。ヨーロッパと中央アジアでは、今シーズン当初から、定点と定点以外で採取されたインフルエンザウイルス41,844株の解析が行われ、91%がインフルエンザA型で、9%がインフルエンザB型でした。亜型が解析されたインフルエンザA型ウイルスのうち、96%はインフルエンザA(H3N2)ウイルスで、4%がインフルエンザA(H1N1)pdm09でした。今シーズンに遺伝子解析が行われた1,175株のうち、1,020株(87%)がインフルエンザA(H3N2)ウイルスで、そのうちの658株(65%)はA/Victoria/208/2009のクレードに属するものでした。この遺伝子グループに属するウイルスは、抗原的に多様であり、現在のワクチン株のA/Perth/16/2009と完全には一致していないことを示しています。2011年から2012年のシーズン中、ヨーロッパでは、オセルタミビルに対する耐性は報告されていません。

アフリカ北部と地中海地域東部

地中海地域東部とアフリカ北部のインフルエンザの活動性は、2011年の年末にピークに達した後、最近数週間は低く、減少が続いています。この地域では、現在、インフルエンザB型ウイルスが優勢ですが、非常に少数の報告です。オマーンでは、インフルエンザA(H1N1)pdm09の活動性が報告されました。

アジアの温帯地域

アジア北部のインフルエンザの活動性は、全体的に減少し続けています。中国北部では、減少し続けています。定点病院から報告されるILIの外来患者の割合は2.5%であり、前週(2.7%)に比べ、減少しました。4月16日から4月22日の週には、327検体が検査され、33検体(10.1%)がインフルエンザ陽性であり、2週間前(18.8%)に比べ、減少しました。今シーズン当初はインフルエンザB型が優勢でしたが、インフルエンザA型の割合が増加し続けており、4月16日から4月22日の週は、インフルエンザ陽性検体のうち78.8%を占めています。亜型が解析されたインフルエンザA型ウイルス26株のうち、11株(42.3%)がインフルエンザA(H3N2)、10株(38.5%)がインフルエンザA(H1N1)pdm09、5株(19.2%)が型別不明でした。モンゴルでは、過去2週間で、ILIの活動性は減少し続けており、3月上旬にピークを越えた後、国の流行閾値の上限を下回っています。ILIの活動性のほとんどは、1歳から4歳の小児で報告されています。入院患者のうち肺炎患者の占める割合は、17週に減少しましたが、依然として国の平均を上回っています。肺炎患者から採取されたインフルエンザ陽性検体数も減少し続けています。シーズン当初に優勢であったインフルエンザB型からインフルエンザA型に移行しており、この数週間は、A(H3N2)とA(H1N1)pdm09がともに検出されています。中国北部と同様に、モンゴルでも、最近数週間で、優勢なウイルスはインフルエンザB型からインフルエンザA型に移行しています。韓国では、ILIの活動性は減少が続いていましたが、肺炎とインフルエンザに関連した死亡が若干増加しました。全体として、肺炎とインフルエンザによる死亡率は、過去4年間の報告を同様です。インフルエンザA(H3N2)の優勢が遅れた中国とモンゴルとは対照的に、韓国では、シーズン当初はインフルエンザA(H3N2)がシーズンを通して優勢でしたが、3月上旬以降、ほとんどすべてがインフルエンザB型です。日本では、ILI患者の報告は非常に低いレベルに減少しましたが、依然として、シーズンオフのレベルよりをわずかに上回っています。シーズン後半にインフルエンザB型が少数報告されましたが、今シーズンはインフルエンザA(H3N2)が優勢なウイルスでした。

熱帯地域

アメリカ大陸の熱帯地域

カリブ海諸国では、インフルエンザの活動性は低い状態が続いています。17週に、SARIに関連した入院が、前週の1.5%から2.2%に増加しましたが、SARIに関連した死亡は報告されていません。SARIによる入院率が最も高かったのは、5歳から14歳の年齢層でした。ドミニカ共和国は、インフルエンザA(H3N2)の陽性率が高いと報告されています。中米と南米の熱帯地域では、この時期の予想通り、インフルエンザの伝播が低いか検出されないレベルであると報告されています。

サハラ以南のアフリカ

サハラ以南のアフリカでは、最も高いインフルエンザの活動性は、ケニアとマダガスカルでみられています。ケニアではインフルエンザA(H3N2)が優勢であり、マダガスカルではインフルエンザB型が優勢ですが、ともに比較的少数の報告です。

アジアの熱帯地域

アジアの熱帯地域のインフルエンザの活動性は減少しているか安定したレベルです。中国南部では、4月23日から29日の週に、定点病院から報告されたILI受診者の割合は、2.9%であり、前週(3.0%)よりも減少しましたが、昨年同時期(2.8%)よりは高いです。1,250検体が検査され、171検体(13.7%)がインフルエンザ陽性でした。146検体(85.4%)がインフルエンザA型であり、そのうち115検体(67.2%)はインフルエンザA(H3N2)であり、残りは亜型不明でした。インフルエンザBは25検体(14.6%)でした。過去数週間、インフルエンザB型よりも、インフルエンザA(H3N2)が陽性となる検体の割合が増加しています。2011年10月以降、抗ウイルス薬に対する耐性が検査されたウイルスでは、インフルエンザA型ウイルスはすべてアダマンタンに耐性でノイラミニダーゼ阻害薬には感受性がありました。また、インフルエンザB型ウイルスはすべてノイラミニダーゼ阻害薬に感受性がありました。香港では、過去数週間に比べ、インフルエンザの活動性は減少が続いています。インフルエンザ陽性となった323検体のうち、285検体(88.2%)がインフルエンザA(H3N2)であり、38検体(11.8%)がインフルエンザB型でした。シンガポールでは、ARIは過去数週間に比べて減少しており、総合診療所のARI症例に占めるILIの患者の割合も減少しています。過去4週間に、ILIの患者の検体が152検体集められ、38%がインフルエンザ陽性でした。インフルエンザ陽性検体のうち、63%がインフルエンザB型で、28%がインフルエンザA(H3N2)で、8%がインフルエンザA(H1N1)pdm09でした。ベトナム、カンボジア、ラオスでは、インフルエンザの活動性は、低いか検出されないレベルです。

南半球の温帯地域

南米の温帯地域、オーストラリア、ニュージーランドでは、インフルエンザの活動性はシーズンオフレベルで、低いままです。

出典

Influenza update11May 2012- Update number 159
http://www.who.int/influenza/surveillance_monitoring/updates/latest_update_GIP
_surveillance/en/index.html