世界におけるインフルエンザ流行状況(20)

2012年6月8日 WHO (原文〔英語〕へのリンク

要約

  • 世界的なインフルエンザの活動性は全体的に低いです。
  • 北半球の温帯地域のインフルエンザの活動性は減少し続けているか、シーズンが終わったことを示すベースラインレベルに戻っています。
  • 熱帯地域のインフルエンザの活動性は低いですが、香港とマダガスカルは例外で、インフルエンザA(H3N2)ウイルスが優勢です。
  • 南半球の温帯地域のインフルエンザの活動性は依然として低いです。チリとパラグアイは過去2週間でインフルエンザ様疾患(ILI)の活動性が増加したと報告されており、インフルエンザが陽性であった呼吸器検体の割合はチリが3%、パラグアイが12%でした。また、検出されたウイルスは、チリではインフルエンザA(H3N2)ウイルスが優勢で、パラグアイではインフルエンザA(H1N1) pdmウイルスが優勢でした。

北半球の温帯地域

北半球の温帯地域でのインフルエンザの活動性は、全体的に減少し続けているか、シーズンが終わったことを示すベースラインレベルに戻っています。

北米

カナダと米国では、ともにインフルエンザの活動性は減少が続いています。カナダでは、インフルエンザの活動性は3月中旬にピークとなった後、西部のほとんどの地域では減少しましたが、アルバータ州、オンタリオ州、ケベック州では、局地的な活動性が続いています。インフルエンザが陽性になった検体の割合は、9.7%から8.6%に減少しました。集団感染事例数はシーズンのピークには59件ありましたが、5月中旬には5件に減少しました。今シーズン中、インフルエンザに関連した小児の入院数は571例でしたが、5月13日から19日の週に、新たに11件の検査確定入院例が報告されました。インフルエンザによって20歳以上の成人では1,050例が入院しました。成人の入院例は5月上旬には64例でしたが、最近の報告週では22例に減少しています。成人の入院例は、65歳以上が多くを占めています(34%)。カナダでは、インフルエンザ陽性検体の50%を超える検体でインフルエンザB型の検出が続いており、入院例でも同様です(総合サーベイランスシステムの57%)。インフルエンザA型ウイルスによる入院例のうち、61%でインフルエンザA(H3N2)が検出されています。

米国では、インフルエンザの活動性を示す指標は、すべて、2011年から2012年のインフルエンザシーズンが終わったことを示しています。全国で、すべての患者に対してILI患者の占める割合は1%であり、閾値である2.4%を下回っています。インフルエンザウイルスの陽性検体数は3月上旬には約30%でしたが、先月は約10%と著しく減少しました。同様に、肺炎とインフルエンザによる死亡の割合も減少し、流行閾値を下回っています。5月20日から26日の週のインフルエンザ陽性検体のうち、60%がインフルエンザB型でした。インフルエンザA型の大部分はインフルエンザA(H3N2)でした。今シーズン当初から抗原解析されたインフルエンザウイルスのほとんどが、2011年から2012年の季節性3価インフルエンザワクチンに含まれるウイルスに抗原的に関連性がありました。

ヨーロッパ

ヨーロッパでは、すべてのインフルエンザの指標は、2011年から2012年のインフルエンザシーズンは終わっていることを示しています。ILIと急性呼吸器感染症(ARI)の受診率は、すべての国で、低いレベルです。スロバキアを除くすべての国で、低い強さと報告されました。ILIとARIの定点機関の呼吸器検体で、インフルエンザ陽性検体の占める割合は、5月14日から5月20日の週は11%でしたが4%に減少しています。今シーズンは、ヨーロッパ全体でインフルエンザA(H3N2)ウイルスが優勢でした。前週までの報告と同様に、今シーズンに遺伝子解析が行われたもののうち、1,177検体(85%)がインフルエンザA(H3N2)ウイルスで、そのうち684検体(58%)がA/Victoria/208/2009のクレードと、A/Stockholm/18/2011に代表される遺伝子グループ3に属していました。この遺伝子グループに属するウイルスは抗原的に多様であり、現在のワクチンウイルスであるA/Perth/16/2009と完全には一致していないことを示しています。2011年から2012年のシーズン中、ヨーロッパでは、オセルタミビルに対する耐性は報告されていません。

アフリカ北部と地中海地域東部

アフリカ北部と地中海地域東部のほとんどの国では、インフルエンザの活動性は、12月中旬から1月中旬にピークとなった後、低い状態が続いています。最近数週間で、イラン、チュニジア、オマーン、カタール、パキスタンでインフルエンザB型ウイルスの伝播がみられており、オマーンとカタールでは、インフルエンザA(H1N1)pdm09がともに流行しています。

アジアの温帯地域

全体的に、アジアの温帯地域のインフルエンザの活動性は、減少し続けているか、低いレベルで安定しています。中国北部、日本、韓国、モンゴルは、すべて、最近の数週間でILIのレベルが減少していると報告されています。中国北部では、インフルエンザシーズンは終わったようです。中国北部で、インフルエンザ陽性検体の占める割合は、5月21日から27日の週で1%であり、前週に比べて、若干、低くなっています。モンゴルでは、ILIの活動性は減少が続いており、5月21日から27日の週にはインフルエンザは検出されていません。韓国と日本では、ILIの活動性はシーズンオフレベルに戻っています。どちらの国も、シーズン当初はインフルエンザA(H3N2)が優勢で、その後にインフルエンザBが優勢になりました。

熱帯地域

アメリカ大陸の熱帯地域

南米とアンデス山脈の熱帯地域では、過去数週間、インフルエンザの伝播は、低いか検出されないレベルと報告されています。ボリビアでは、インフルエンザA(H1N1)pdm09とインフルエンザB型がともに検出されています。中米とカリブ海諸国では、過去数週間でインフルエンザウイルスの伝播がわずかに増加しています。インフルエンザA(H1N1)pdm09は、中米の数か国(エルサルバドル、ホンジュラス、パナマ)で検出されており、インフルエンザA(H3N2)はドミニカ共和国で検出されています。

サハラ以南のアフリカ

サハラ以南のアフリカでは、利用できるデータによれば、マダガスカル以外のほとんどの国でインフルエンザの活動性はほとんどありません。ケニアでは、例年通り、一年中、ウイルスが検出されていますが、ILIの活動性は過去4週間減少が続いています。反対に、マダガスカルでは、5月の第2週からインフルエンザA型とB型ウイルスの感染の増加がみられており、3月下旬からインフルエンザA(H3N2)が優勢となっています。

アジアの熱帯地域

アジアの熱帯地域のほとんどの国で、インフルエンザの活動性は、低い状態が続いています。しかし、中国南部では過去3週間、ILI受診者の割合の増加が続いており(3.4%)、過去2度のインフルエンザシーズンよりも高いレベルです。中国南部では、今シーズン当初は主にB型ウイルスが検出されていましたが、3月中旬から、インフルエンザA(H3N2)が検出される割合が着実に増加し、現在では、インフルエンザA型ウイルスと亜型解析されたうちの76%を占めています。香港では、この時期としては珍しく、インフルエンザの活動性が、依然として高いレベルです。検出されるウイルスは、インフルエンザA(H3N2)が優勢です。ILIの患者数と入院率は、過去数週間、増加し続けています。5月23日から30日の週には、インフルエンザに関連したICU(集中治療室)入院例は34例が報告され、その74%(25例)が死亡しました。

南半球の温帯地域

南米、アフリカ、オーストラリア、ニュージーランドの温帯地域では、インフルエンザの活動性とウイルスの検出状況は、全体的に低いです。しかし、チリとパラグアイでは、過去数週間でILIの活動性が増加したと報告されており、呼吸器検体のうちインフルエンザ陽性検体が占める割合は、チリで3%、パラグアイで12%です。チリではインフルエンザA(H3N2)が優勢で、パラグアイではA(H1N1)pdm09が優勢です。

出典

Influenza update8 June 2012- Update number 161

http://www.who.int/influenza/surveillance_monitoring/updates/latest_update_GIP
_surveillance/en/index.html