世界におけるインフルエンザ流行状況(21)

2012年6月22日 WHO(原文〔英語〕へのリンク

要約

  • 北半球の温帯地域の大部分では、インフルエンザシーズンが終わっていますが、ヨーロッパ東部と中国北部で、低いレベルのインフルエンザの伝播が続いています。北半球の温帯地域のほとんどの国では、毎週のインフルエンザのデータ報告をやめています。
  • 熱帯地域の中米、カリブ海諸国、南米、サハラ以南のアフリカの数か国では、インフルエンザの伝播は増加しているか、変動がありません。
  • 南半球の温帯地域のインフルエンザシーズンは、まだ始まっていませんが、オーストラリア、チリ、パラグアイ、南アフリカなどの数か国では、少ないながらもインフルエンザウイルスの検出が増え続けています。南半球の温帯地域で、最近数週間に検出された主な亜型はインフルエンザA(H3N2)です。
  • 北半球の温帯地域のインフルエンザシーズンの詳細なレビューはWHOの疫学週報に掲載されています。

北半球の温帯地域

北半球の温帯地域でのインフルエンザの伝播を報告しているすべての国で、インフルエンザの伝播は減少し続けており、ほぼシーズンオフのレベルです。

北米

カナダと米国では、ともにインフルエンザの活動性は減少が続いています。カナダでは、インフルエンザ様疾患(ILI)の受診率は、5月末に1,000受診者あたり11でしたが、6月の第1週に1,000受診者あたり7に減少しました。米国では、すべての外来患者に対してILIの患者の占める割合は0.9%であり、閾値を下回っています。また、肺炎とインフルエンザによる死亡の割合も減少し続けています。両国とも、インフルエンザ陽性検体の割合も低いレベルに減少しています。

ヨーロッパ

ヨーロッパのインフルエンザの活動性は、ほとんどの国で、非常に低いレベルか、検出されないレベルに戻っています。しかし、ヨーロッパ東部の数か国では、散発的な活動性が報告されており、減少しているか変わらない傾向にあります。

アフリカ北部と地中海地域東部

アフリカ北部と地中海地域東部のほとんどの国では、インフルエンザの活動性はありません。オマーンとカタールのみで、非常に少数ですが、インフルエンザA型とB型ウイルスが検出されています。

アジアの温帯地域

日本、モンゴル、韓国では、注目すべきインフルエンザの活動性は報告されていません。しかし、中国北部では、依然として、インフルエンザの低いレベルの伝播がみられています。中国北部では、すべての外来患者に対してILIの患者の占める割合が2.7%であり、過去4週間に比べて、わずかに増加しています。2012年4月上旬以降、中国北部では、優勢なウイルスはB型からA(H3N2)に移行しており、現在は、主に、A(H3N2)が少数検出されています。

熱帯地域

アメリカ大陸の熱帯地域

中米、カリブ海諸国、南米の熱帯地域の数か国では、最近、インフルエンザウイルスの伝播が増加していると報告されています。中米では、インフルエンザウイルスが陽性となった呼吸器検体数が過去4週間で著しく増加しており、エルサルバドルでは、インフルエンザA(H1N1)pdm09が陽性になった検体が40%を超えました。最近、A(H1N1)pdm09は、ホンジュラス、パナマ、グアテマラでも伝播していますが、検出数は非常に低いです。カリブ海諸国では、ドミニカ共和国でインフルエンザA(H3N2)の伝播が続いており、キューバでは、過去数週間に比べてインフルエンザB型の検出が増加しています。南米の熱帯地域では、ボリビアとペルーの2か国でインフルエンザA(H1N1)pdm09とB型ウイルスがともに伝播しています。

サハラ以南のアフリカ

サハラ以南のアフリカでは、利用できるデータは限られていますが、ほとんどの国で、インフルエンザの活動性は非常に低いレベルか、ほとんどありません。アフリカ大陸の中で最も活動性が高いのは東部で、マダガスカルではA(H3N2)、ルワンダではA(H1N1)pdm09の著しい伝播がみられています。ケニアの伝播は過去数週間で非常に低いレベルに下がりました。アフリカ西部では、ガーナで、最近、A(H3N2)の伝播が報告されています。

アジアの熱帯地域

アジアの熱帯地域のほとんどの国で、インフルエンザの活動性は、低い状態が続いています。中国南部では過去3週間にくらべて、国の定点機関に受診するILIの患者の割合は減少が続いていますが、過去2年間の同時期に比べて高い割合が続いています(3%)。依然として、主にインフルエンザA(H3N2)が検出されており、インフルエンザA型ウイルスと亜型解析されたうちの74%を占めています。香港では、この時期としては珍しく、インフルエンザの活動性が高いレベルで続いています。2012年1月13日から6月13日の間、インフルエンザに関連したICU(集中治療室)入院例は268例が報告され、そのうち65%(173例)が死亡しました。6月6日から6月13日の週に、インフルエンザに関連したICU入院例は14例が報告され、そのうち12例が死亡しました。死亡例は主に65歳以上で起こっており、主にインフルエンザA(H3N2)によるものでした。入院患者、外来患者、救急部門受診患者のうちILIの患者は過去2週間に比べて減少していますが、過去2年間の同時期に比べると高いレベルが続いています。公立病院におけるインフルエンザが主傷病の入院の割合とインフルエンザが直接死因または間接死因である死亡者数も、過去数週間に比べて減少しています。

南半球の温帯地域

南半球の温帯地域では、依然として、全体的なインフルエンザの活動性とウイルスの検出状況は低いです。しかし、南米の南回帰線以南の地域では、活動性がわずかに増加し始めたと報告されています。

南米の温帯地域

チリとパラグアイでは過去数週間、インフルエンザの検出がまだ少ないものの、増加し続けていると報告されています。チリでは、第23週に集められた検体(1284検体)のうち、インフルエンザが陽性となった検体は4.6%で、インフルエンザA(H3N2)が高頻度に検出されました(75%)パラグアイでは、過去3週間でILIの受診者数が増加しており、解析された検体(93検体)のうち、約15%がインフルエンザA(H1N1)pdm09で、過去数週間、増加し続けています。アルゼンチンのインフルエンザの活動性は、依然として、本質的には検出されないレベルです。

南アフリカの温帯地域

南アフリカでは、ILIと急性呼吸器感染症(ARI)の患者の増加傾向が報告されています。インフルエンザウイルスの検出は第21週に21%に増加し、第22週も10%を超えています。最近数週間は、インフルエンザA(H3N2)とインフルエンザB型が高頻度に検出されています。

オセアニア、メラネシア、ポリネシア

オーストラリアでは、2012年6月3日から9日に、ILIの患者の360検体が検査され、14%(49検体)がインフルエンザ陽性であり、前週(6.8%)に比べて増加しました。インフルエンザ陽性検体のうち、59%がインフルエンザA(H3N2)でした。ニュージーランドのILIの活動性は、依然として低いです。

出典

Influenza update22 June 2012- Update number 162

http://www.who.int/influenza/surveillance_monitoring/updates/latest_update_GIP
_surveillance/en/index.html