世界におけるインフルエンザ流行状況(23)

2012年7月20日 WHO (原文〔英語〕へのリンク

要約

  • 北半球の温帯地域では、インフルエンザシーズンがほぼ終わっています。北半球の温帯地域のほとんどの国では、毎週のインフルエンザのデータ報告をやめているか、シーズンオフのサーベイランススケジュールに移りました。
  • 熱帯地域では、アメリカ大陸のボリビア、ブラジル、ホンジュラスと、サハラ以南のアフリカ大陸のガーナ、アジアの中国南部、香港、ベトナムで著しいインフルエンザの活動性が報告されています。
  • 南半球の温帯地域のほとんどの国では、インフルエンザシーズンが始まりました。しかし、アルゼンチンでは、依然として、インフルエンザはほとんど検出されていません。
  • 南半球の温帯地域のチリ、南アフリカ、オーストラリアで、最近数週間に検出された主な亜型はインフルエンザA(H3N2)でした。しかし、南アフリカではインフルエンザB型の検出数も著明に増加したと報告されています。また、オーストラリアでも、南アフリカよりも少数ですが、インフルエンザB型の検出数が増加しています。インフルエンザA(H1N1)pdm09は、パラグアイと中米、南米の熱帯地域を除き、非常に少ないと報告されています。

北半球の温帯地域

北半球の温帯地域でのインフルエンザの伝播を報告しているすべての国で、インフルエンザの伝播は、ほぼシーズンオフの水準です。インフルエンザの活動性は、カナダ、米国、ヨーロッパ、アジア北部で散発的な発生がみられるのみです。アフリカ北部、地中海東部、オマーンでは、依然として、インフルエンザA(H1N1)pdm09とインフルエンザB型ウイルスがともに非常に少数であると報告されています。

熱帯地域

アメリカ大陸の熱帯地域

中米、カリブ海諸国、南米の熱帯地域の数か国では、インフルエンザの伝播が活発になっていると報告されています。

中米では、エルサルバドルで、インフルエンザA(H1N1)pdm09が検出される水準が増加し続けています。インフルエンザA(H1N1)pdm09は、検出数は非常に低いですが、最近、ホンジュラス、パナマでも伝播しています。

カリブ海諸国では、5月の上旬以降、インフルエンザA(H3N2)の伝播がみられましたが、ドミニカ共和国では、先週に比べてさらに減少したと報告されています。キューバでは、過去5週間、インフルエンザB型の検出が続いています。ジャマイカでも5月の後半以降、インフルエンザB型の伝播が低い水準であると報告されています。

南米の熱帯地域では、ボリビアのラパス地域で、インフルエンザが検出される割合が増加し続けていると報告されており、先週集められた臨床検体の50%を超える検体でインフルエンザが陽性となりました。検出されたインフルエンザウイルスは、ほとんどがインフルエンザA(H1N1)pdm09でした。ペルーでは、5月上旬以降、インフルエンザA(H3N2)とインフルエンザB型の低い水準で検出されていると報告されています。エクアドルでは、インフルエンザB型の伝播が報告されています。ブラジルでは、5月以降、インフルエンザA(H1N1)pdm09によるインフルエンザ様疾患(ILI)と重症急性呼吸器感染症(SARI)の患者が増加していると報告されていますが、主に南部で発生しています。

サハラ以南のアフリカ

サハラ以南のアフリカでは、利用できるデータは限られていますが、ほとんどの国で、インフルエンザの活動性は非常に低い水準か、みられていません。アフリカ西部では、ガーナで、インフルエンザA(H3N2)とインフルエンザB型の伝播が報告されており、過去3週間で増加しています。マダガスカルでは、インフルエンザの活動性が続いており、第27週に解析された検体(53検体)の約50%がインフルエンザ陽性でした。このシーズンはインフルエンザA(H3N2)が優勢で、次いで、インフルエンザB型が優勢です。

アジアの熱帯地域

アジアの熱帯地域のほとんどの国で、インフルエンザの活動性は、低いか検出されない水準が続いています。インドでは、ウイルスの伝播はシーズンオフの水準ですが、インフルエンザA(H1N1)pdm09とインフルエンザB型がともに伝播し続けていると報告されています。スリランカでは、A(H1N1)pdm09とインフルエンザインフルエンザB型の活動性が報告されています。中国南部では過去3週間に比べて、国の定点機関に受診するILIの患者の割合は若干増加しており、過去2年間の同時期に比べて高い割合が続いています(3.3%)。主に、インフルエンザA(H3N2)が検出されており、亜型解析されたうちの86%を占めています。香港では、この時期としては珍しく、インフルエンザの活動性が高い水準で続いた後、減少し続けているようです。ILIの活動性は、過去2年間に比べて減少しています。ベトナムは、過去数週間で、インフルエンザA(H3N2)の伝播が持続していると報告しています。6月はILI患者の39%(223例中87例)でインフルエンザ陽性となり、そのうち90%(78例)がインフルエンザA(H3N2)で、10%(9例)がインフルエンザB型でした。さらに、SARI患者の26%(19例)がインフルエンザ陽性であり、そのうち47%(9例)がインフルエンザA(H3N2)で、53%(10例)がインフルエンザB型でした。シンガポールでは、過去4週間で、検査されたILIの検体のうち54%がインフルエンザ陽性でした。2012年6月に検査された検体で、インフルエンザが陽性になったもののうち、インフルエンザA(H3N2)が46%、インフルエンザB型が30%、インフルエンザA(H1N1)pdm09が25%でした。

南半球の温帯地域

南半球の温帯地域では、ほとんどの国でインフルエンザの活動性が続いていると報告されています。

南米の温帯地域

南米の南回帰線以南の地域のインフルエンザの活動性は、チリでは変動がなく、パラグアイで増加し、アルゼンチンでは依然として低いようです。チリでは、ILIの活動性は増加し続けており、国で設定された警戒閾値に入っていると報告されていますが、主に、RSウイルスの検出が増加しているためで、呼吸器感染症を起こすウイルスが検出された検体のうち、81%を占めています。インフルエンザウイルスの検出数は、先週に比べて減少しています。救急部門を受診した患者のうち、呼吸器疾患で受診する者が占める割合は、現在34%に達しており、過去2年間の同時期の報告数を超えています。また、SARIで入院した患者の割合も89%に増加しており、検査された検体のうち65%はRSウイルスが陽性になりました。チリで、今シーズン検出されているインフルエンザウイルスは、ほぼすべてがインフルエンザA(H3N2)です。パラグアイでは、2012年6月24日から6月30日の週にILIの受診者が警戒閾値を超え、増加傾向が続いています。また、SARIによる入院患者数とSARIによる死亡者も増加傾向にあります。チリとは対照的に、パラグアイでは、呼吸器感染症を起こすウイルスが検出された検体のうち、インフルエンザA(H1N1)pdm09が53%を占め、RSウイルスが30%を占めており、インフルエンザA(H3N2)ウイルスとインフルエンザB型は少数です。アルゼンチンでは、まだ、インフルエンザシーズンが始まっていないようです。ILIの活動性は増加していますが、主にRSウイルスによるもので、インフルエンザウイルスは散発的に検出されているのみです。

南アフリカの温帯地域

南アフリカでは、インフルエンザの活動性が続いています。6月末時点で、インフルエンザが陽性になった検体は約50%で、多くはインフルエンザA(H3N2)ウイルスであり、次いで、インフルエンザB型が優勢でした。

オセアニア、メラネシア、ポリネシア

オーストラリアでは、2012年7月1日から7日に検査されたILIの患者の検体のうち、30%(615検体のうち184検体)がインフルエンザ陽性であり、前週(6月下旬は15%)に比べて2倍に増加しました。オーストラリアで検出されるインフルエンザウイルスの多く(64%)はインフルエンザA(H3N2)で、残りがインフルエンザB型でした。ニューサウスウェールズ州、クイーンズランド州、南オーストラリア州で患者数が多いと報告されています。ニュージーランドでは、ILIの活動性は前週に比べて増加しており、受診率は人口10万人あたり51.9でした。受診率は、今年初めて、人口10万人あたり50というベースラインを超えました。ILIの活動性を示す曲線は、昨年と似た傾向にあります。2012年7月2日から7月8日までに検査されたILI検体609検体のうち、38%(235検体)がインフルエンザ陽性で、そのうち71%(167検体)がインフルエンザA(H3N2)でした。残りは、インフルエンザA(H1N1)pdm09、亜型不明のインフルエンザA型、インフルエンザB型でした。ニュージーランドでは、過去5週間、SARI患者数が増加傾向にあります。

出典

Influenza update20 July 2012- Update number 164
http://www.who.int/influenza/surveillance_monitoring/updates/latest_update_GIP
_surveillance/en/index.html