C型肝炎について(ファクトシート)

2012年7月 WHO(原文〔英語〕へのリンク

要点

  • C型肝炎はC型肝炎ウイルスによって起こる肝疾患です。
  • 疾患の症状は幅があり、2~3週間続く軽い症状から、生涯にわたって重篤な状態が続き、肝がんや肝硬変になることがあります。
  • C型肝炎ウイルスは、感染した人の血液に接触することで伝播します。
  • 約1億5千万人がC型肝炎ウイルスに持続感染しており、毎年、35万人以上がC型肝炎に関連した肝疾患で死亡しています。
  • C型肝炎は、抗ウイルス薬を使用して治療可能な疾患です。
  • 現在、C型肝炎に対するワクチンはありません。しかし、この領域の研究は進んでいます。

C型肝炎は、C型肝炎ウイルスに感染することによって起こる伝染性の肝疾患です。疾患の重篤度は、2~3週間続く軽い症状から、重症で生涯にわたる症状まで幅があります。

C型肝炎ウイルスは、通常、感染した人の血液が感受性者の身体に入ることで感染します。C型肝炎ウイルスは肝臓に感染するウイルスとしてよくみられるウイルスの一つです。

毎年、3百万人から4 百万人がC型肝炎ウイルスに感染しています。約1億5千万人が持続感染しており、肝硬変や肝がんに進展する危険があります。毎年、35万人以上がC型肝炎に関連した肝疾患で死亡しています。

地理的分布

C型肝炎は、世界中で発生しています。持続感染が高率に起こっている国は、エジプト(22%)、パキスタン(4.8%)、中国(3.2%)です。これらの国での主な感染経路は、汚染された安全でない注射器の使用によるものです。

感染経路

C型肝炎は、ほとんどが、感染した人の血液に暴露されることによって感染します。以下の場合に起こり得ます。

  • 汚染された輸血用血液や血液製剤の使用、感染したドナーからの臓器移植を受けたレシピエント
  • 医療機関で汚染されたシリンジを使用した注射や針刺し事故
  • 注射薬物の使用
  • C型肝炎に感染した母親から生まれた児

C型肝炎は、感染した人との性交渉や、感染した人の血液で汚染された個人の所持品を共有することで感染することもありますが、稀です。

C型肝炎は、母乳、食物、水によって広がることはなく、感染した人との抱擁、キス、飲食物の共有というような通常の接触では感染しません。

症状

C型肝炎ウイルスの潜伏期間は2週間から6か月です。感染した人の約80%は、感染初期には症状が現れません。しかし、急性期の症状として、発熱、倦怠感、食欲不振、悪心、嘔吐、腹痛、褐色尿、灰白色便、関節痛、黄疸(皮膚や眼球結膜の黄染)といった症状が出ることもあります。

新たに感染した人のうち、約75%から85%が慢性化します。そして、慢性化した人のうち60%から70%が慢性肝疾患に進展し、そのうち5%から20%が肝硬変に進展し、1%から5%は肝硬変か肝がんで死亡します。肝がん患者の25%はC型肝炎によるものです。

診断

感染した人の大部分は症状が現れないので、しばしば、急性感染症の診断がつかないことがあります。 通常用いられる抗体検出方法では、急性感染と慢性感染を鑑別することができません。C型肝炎ウイルスに対する抗体が存在する場合は、その人が、現在感染しているか、過去に感染したことを示します。C型肝炎ウイルス組み換えイムノブロットアッセイ(RIBA)とC型肝炎ウイルスRNA検査が確定診断に使用されます。

C型肝炎ウイルスに対する抗体が血液中に6か月以上存在する場合に、慢性感染と診断されます。急性感染症と同様で、診断は追加する検査で確定されます。特殊な検査は、しばしば、肝硬変と肝がんを含む肝疾患の患者の状態を評価するのに使用されます。

検査の受検

早期診断は、感染によって生じる健康問題を防ぐことができ、また、家族や他の濃厚接触者への感染を防ぐことができます。数か国では、感染するリスクがある人に対するスクリーニングを勧めています。

感染するリスクがある人には、以下の人が含まれます。

  • C型肝炎ウイルスのスクリーニングが行われる前、または、スクリーニングが広範囲に実施されるようになる前に、輸血、血液製剤の投与、臓器移植を受けた人
  • 注射薬物を使用している人、または、過去に使用した者(何年も前に1回使用した人も含まれます)
  • 長期に血液透析を受けている人
  • 医療従事者
  • HIVに感染している人
  • 肝臓機能異常や肝疾患のある人
  • 感染した母親から生まれた乳児

治療

C型肝炎は必ずしも治療が必要とは限りません。C型肝炎には6つのジェノタイプ(遺伝子型)があり、治療に対する反応性が異なるかもしれません。治療を開始する前に、その患者に最適なアプローチを決定するための慎重なスクリーニングが必要です。

インターフェロンとリバビリンを併用する抗ウイルス剤治療は、C型肝炎治療の大きな柱です。しかし、残念なことに、インターフェロンは世界中で広く使用することはできず、必ずしも忍容性が高くありません。また、ウイルスのジェノタイプによって、他のジェノタイプよりもインターフェロンに対する反応性が良好なジェノタイプがあります。インターフェロンの投与を受ける患者の多くが治療完了に至りません。このことは、C型肝炎は、通常、治療可能な病気であると考えられていますが、その一方で、多くの人にとっては、それが現実でないことを意味します。

科学技術の進歩によって、C型肝炎に対する新しい抗ウイルス薬の開発につながり、その薬は既存の治療法よりも効果的で忍容性が高いかもしれません。最近、数か国で、テラプレビル(telaprevir)とボセプレビル(boceprevir)という2種類の新しい治療薬が承認されました。これらの進歩が、世界的にも治療へのアクセスが向上し、治療できるようにするために、更なる取組が必要です。

予防

一次予防

C型肝炎にはワクチンがありません。以下のことを避けることで、感染のリスクを減らすことができます。

  • 不要な注射や安全でない注射
  • 安全でない血液製剤
  • 安全でない鋭利な廃物の収集と処理
  • 違法な薬の使用と注射器の共有
  • C型肝炎に感染した人とのコンドームを使用しない性交渉
  • 感染した血液で汚染されていれるかもしれない鋭利な個人の所持品の共有
  • 汚染された器材で行われた入れ墨、ピアッシング、鍼

二次予防、三次予防

WHOは、C型肝炎ウイルスに感染している人に以下を勧めています。

  • ケアと治療を選択する際の教育とカウンセリング
  • 肝臓を保護するため、A型肝炎とB型肝炎のワクチン接種による、肝炎ウイルスの重複感染の予防
  • 適応があれば、抗ウイルス薬による治療を含む、早期に適切な医学的管理
  • 慢性肝疾患の早期診断のための定期的なモニタリング

WHOの対応

WHOは、ウイルス性肝炎の予防と感染拡大を抑えるため、下記の分野で活動しています。

  • 意識の向上、パートナーシップの促進、資源の動員
  • 根拠に基づく政策と行動するためのデータ
  • 感染予防
  • スクリーニング、管理、治療

WHOは、ウイルス性肝炎に対する意識と理解の向上のため、毎年7月28日に世界肝炎デーと定めています。

出典

WHOHepatatits CFact sheet July2012
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs164/en/index.html