2人の養鶏業従事者の高病原性鳥インフルエンザA(H7N3)ウイルス感染-メキシコ、ハリスコ州、2012年7月

2012年9月14日CDC (原文〔英語〕へのリンク

メキシコ食品衛生安全品質管理局は、2012年6月から8月にかけて、ハリスコ州の農場一帯で、家きんでの高病原性鳥インフルエンザA(H7N3)ウイルスの集団発生を報告しました。この報告では、感染した家きんへの暴露と関連した、高病原性鳥インフルエンザA(H7N3)ウイルス感染による、発熱と呼吸器症状のない結膜炎患者の2人について記載します。

1人目の患者

7月7日、32歳の養鶏業に従事している女性が、左眼のかゆみを主訴に、ハリスコ州のクリニックを受診し、検査されました。身体所見には、発赤、腫脹、流涙がありました。結膜炎と診断され、患者は対症療法を受け、完全に回復しました。患者は高病原性鳥インフルエンザA(H7N3)ウイルスが検出された農場で卵を集めていたため、メキシコの疫学診断研究所(Institute for Epidemiological Diagnosis and Reference)で、患者の両眼のスワブのリアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(rRT-PCR)によるインフルエンザA(H7)の検査が行われました。また、ウイルス分離をするために、発育鶏卵に検体が接種されました。スワブ検体は、rRT-PCRでインフルエンザA(H7)ウイルスが陽性となりました。また、両眼から採取された検体から、ウイルスが分離されました。この調査結果は、7月19日に世界保健機関に報告され、完全なゲノム配列(CY125725–32)がGenBankに掲載されました。このウイルスのヌクレオチド配列は、GenBankで入手できるシークエンス(JX397993、JX317626)から、以前に報告された、ハリスコ州での家きんの高病原性鳥インフルエンザA(H7N3)の集団発生と密接に関係がありました。

2人目の患者

52歳の男性(1人目の患者の親類で、同じ農場で従事していました)は、7月10日に結膜炎と一致した症状が出現し、7月13日に地域のクリニックを受診しました。患者は対症療法を受け、後遺症なく回復しました。公衆衛生当局がこの患者の発生を知った時、当局は患者の眼のスワブを得て、rRT-PCR検査を行い、インフルエンザA型(H7)陽性が明らかになりました。

メキシコは、ハリスコ州の集団発生が起こった場所で、家禽の集団発生を抑える努力を続けました。その対応には、影響を受けた農場を隔離し、感染した鳥をと殺し、感染してない鳥に予防接種を行い、汚染された地域を消毒することが含まれます。政府機関も、農場の従事者に個人防護具を提供して、発生地の近くの2か所の定点でインフルエンザ様疾患(ILI)と重症急性呼吸器疾患の積極的なサーベイランスを実施しています。

高病原性鳥インフルエンザAウイルスと低病原性鳥インフルエンザウイルスは、ウイルスの分子学的特徴と、鳥に病気を起こし、死亡させる能力に基づいて指定されます。これまで、インフルエンザA(H5)と(H7)の亜型のみが、高病原性鳥インフルエンザとして報告されています。インフルエンザA(H7)の亜型のウイルスは、世界の多くの地域で、野鳥から検出されており、家きんで集団発生を引き起こすことがあります。人のインフルエンザA(H7)感染は稀ですが、特に、家きんの間でインフルエンザA(H7)ウイルスの集団発生が起こっている間、感染した鳥に直接接触した後で起こることがあります。この疾患の症状には、結膜炎が含まれ、発熱や上気道炎症状がないこともあります。また、重症度には幅があり、軽症で済むこともあれば、致命的となることもあります。米国では、家きんの鳥インフルエンザの発生は稀ですが、散発的に発生し、報告されています。米国では、人での低病原性鳥インフルエンザA(H7)ウイルス感染は、2人の症例のみが知られており、いずれの患者も回復しました。

ハリスコ州での結膜炎の事例は、おそらく、感染した家きんから人に、直接接触によって高病原性鳥インフルエンザA(H7N3)ウイルスが伝播したと考えられます。米国の農業従事者、公衆衛生従事者、医療従事者は、隣国で、人に伝播した家きんの集団発生に注意しなければなりません。インフルエンザAウイルスに感染していることがわかっている家きんや、感染していると疑われる家きんがいる農場で働いている人は、フェースマスク、手袋と眼の保護具(例えば、ゴーグル)などの適切な個人防護具を使用すべきです。臨床医と疫学者は、既鳥インフルエンザの集団発生が知られている地域で、家きんとの接触歴を有する結膜炎患者やILIの患者では、鳥インフルエンザAウイルス感染を考えなければなりません。人での鳥インフルエンザAウイルス感染を疑った臨床医は、患者の症状によって、結膜からの検体や呼吸器からの検体を採取し、特異的なインフルエンザの検査を行える、国、地域、または州の衛生検査所に検体を提出しなければなりません。また、疑われる患者には、ノイラミニダーゼ阻害薬による早期の経験的な抗ウイルス薬治療を考慮しなければなりません。公衆衛生担当官は、人から人への伝播事例を発見するために感染者の家族や接触者を調査しなければなりません。

出典

CDC MMWRSeptember14, 2012 / 61(36);726-727
Notes from the Field:Highly Pathogenic Avian Influenza A(H7N3)Virus Infection in Two Poultry WorkersJalisco, Mexico, July2012

http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm6136a4.htm?s_cid=mm6136a4_w