ポリオについて(ファクトシート)

2012年10月 WHO(原文〔英語〕へのリンク

要点

  • ポリオ(急性灰白髄炎)は、主に5歳未満の小児が罹患する疾患です。
  • 200人の感染者のうち1人に不可逆性の麻痺が起こります。麻痺を起こした患者の5~10%は呼吸筋が機能せずに死亡します。
  • ポリオの患者は、1988年には推定35万人いましたが、2011年には99%以上減少し、650人の報告でした。この減少は、この疾患を根絶するための世界的な努力の結果です。
  • 1988年には125か国以上のポリオの常在国がありましたが、2012年では3か国(アフガニスタン、ナイジェリア、パキスタン)のみがポリオ常在国です。
  • 小児が1人でも感染していれば、全ての国々の小児がポリオに罹る可能性があります。10年以内に最後に残った常在国からポリオを根絶することができなければ、毎年20万人もの新規患者が発生し得ます。
  • ほとんどの国で、効果的なサーベイランスと予防接種システムを確立することにより、他の感染症にも取り組む能力を高めるよう包括的な努力がなされています。

ポリオとその症状

ポリオはウイルスによって起こる、非常に感染力の強い疾患です。ウイルスは神経系に侵入し、数時間で全身の麻痺を起こすこともあります。ウイルスは経口感染し、腸内で増殖します。初期症状は発熱、全身倦怠感、頭痛、嘔吐、項部硬直や四肢の痛みです。200人の感染者のうち1人の割合で、不可逆性の麻痺(通常は下腿)が起こります。麻痺を起こした患者の5~10%は呼吸筋が機能せずに死亡します。

リスクの高い人

ポリオは主に5歳未満の小児で起こります。

予防

ポリオの治療方法はなく、予防のみが可能です。ポリオワクチンの複数回接種が小児の命を守ります。

世界での発生数

1988年には125か国以上の常在国があり、ポリオ患者は推定35万人いましたが、2011年には99%以上減少し、650人の報告でした。2012年は、世界で3か国の一部地域(過去最少の地域)のみに常在しており、野生株ポリオ3型の症例数は今までの最低レベルに減少しています。

世界ポリオ撲滅イニシアチブ

開始

1988年の第41回世界保健総会で、ポリオを全世界で根絶する決議が採択されました。そこ
で、各国政府、WHO、国際ロータリー、米国疾病予防管理センター(CDC)、国連児童基金
(UNICEF)が主導し、ビル&メリンダ・ゲイツ財団を含む主要な関係機関の支援を受け、世界
ポリオ撲滅イニシアチブが始まりました。これは、1980年の天然痘撲滅宣言に続き、1980年
代中にアメリカ大陸からポリオウイルスを排除するために進展しているもので、国際ロータリー
がすべての子供をポリオから守るために基金を設立するという公約です。

進展

全般的にみて、世界ポリオ撲滅イニシアチブが発足して以来、この疾患の患者数は99%以
上減少しました。2012年には、世界で、ナイジェリア、パキスタン、アフガニスタンの3か国のみ
がポリオ常在国です。

1994年にWHOアメリカ地域はポリオの根絶を宣言し、2000年にはWHO西太平洋地域、
2002年6月にはWHOヨーロッパ地域がそれぞれポリオの根絶を宣言しました。3種類の野生
株ポリオウイルス(1型、2型、3型)のうち、2型の野生株ポリオウイルスの伝播を止めることに
成功しました(1999年)。

今日、ワクチンがなければ麻痺が起こったかもしれない1000万人以上の人が歩いています。
ポリオの予防接種活動中に組織的にビタミンAを投与することで、推計150万人以上の小児の死
亡を防ぐことができました。

機会とリスク:緊急的なアプローチ

ポリオ根絶に対する戦略は、完全に実施されることで成功します。これは、2011年1月に、おそ
らく最も技術的に困難な場所で、ポリオの伝播を止めることができたインドの成功によって明らか
にされていることです。しかし、戦略的なアプローチが実施されなければ、ウイルスの伝播が継続
します。伝播が継続しているのは、ナイジェリア、パキスタンとアフガニスタンです。 10年以内に
最後に残った常在国からポリオを根絶することができなければ、毎年20万人もの新規患者が発
生し得ます。

疫学的な好機であり、潜在的に失敗した場合の大きなリスクが認知され、2012年5月の世界保
健総会では、ポリオの根絶を達成することは世界的な公衆衛生上の緊急事態であると宣言する
決議を採択しました。

その後、3か国の常在国は、それぞれの国の国家元首が監督するポリオ緊急行動計画を開始
しました。また、世界ポリオ撲滅イニシアチブの関係機関は、2012年から2013年の世界ポリオ
緊急行動計画を立ち上げ、常在国の活動を緊急事態の体制にシフトさせました。

2012年半ばの時点で、緊急的なアプローチの影響は見られており、患者の発生国数、発生地
域数、患者報告数は、これまでになく少数です。

十分な資金調達と、2012年から2013年の世界ポリオ緊急行動計画の実施は、ポリオがない
世界を持続することを現実的に、迅速に達成することができます。しかし、成功を収めることは世
界的な責任で、政治的かつ社会的の意志の問題です。

ポリオがない世界の恩恵は、すべての国と、どの人々にも等しくもたらされます。

ポリオ撲滅のさらなる利点

ポリオが根絶されると、人々が住んでいる場所にかかわらず、世界的な公衆衛生上の偉大な
成果の恩恵を受けることができます。経済学的なモデルでは、今後5年間でポリオが根絶され
ると、ほとんどの低所得国で少なくとも400億米ドルから500億米ドルの経費削減になると推計
されています。

出典

WHO:Fact sheetOctober 2012
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs114/en/index.html