世界におけるインフルエンザ流行状況(30)

2012年10月26日 WHO (原文〔英語〕へのリンク

要約

  • 北半球の温帯地域の多くの国では、散発的なインフルエンザウイルスの検出は増加していると報告していますが、検出数は依然として低く、季節性の流行閾値を下回っています。米国では、新学年が始まってから、豚由来のインフルエンザA(H3N2)vウイルスに最近感染した患者は報告されていません。
  • 熱帯地域の数か国では、最近の数週間でインフルエンザの活発な伝播がみられています。アメリカ大陸では、ニカラグアとコスタリカで著しく、最近の数週間ではインフルエンザB型の検出頻度が高くなっています。アジアでは、スリランカ、ネパール、タイで著しく、インフルエンザB型よりもインフルエンザA(H1N1)pdm09の検出割合が若干高くなっています。
  • サハラ以南のアフリカでは、西アフリカ(セネガルとコートジボワール)と中部アフリカ(カメルーン)でインフルエンザウイルスの検出数が増加したと報告されており、主にインフルエンザA(H3N2)が検出されています。
  • 南半球の温帯地域のほとんどの国では、インフルエンザはシーズンオフの水準です。

北半球の温帯地域

北半球の温帯地域の多くの国では、インフルエンザウイルスが散発的に検出され始めていますが、まだ持続した地域内伝播はなく、インフルエンザ様疾患(ILI)の季節性の流行閾値を下回っています。

米国では、前回の更新情報から、新たに豚由来のインフルエンザA(H3N2)vウイルスに感染した患者は報告されていません。最後に報告された患者の発症日は9月7日でした。さらに詳しい情報は、CDCのホームページに掲載されています。

熱帯地域

アメリカ大陸の熱帯地域

中米とカリブ海諸国の数か国では、最近の数週間はインフルエンザB型の伝播が活発ですが、全体的に減少しています。

エルサルバドル、コスタリカ、ニカラグアでは、最近の伝播の報告はインフルエンザB型で、インフルエンザA(H3N2)は少数です。これらの国での伝播は8月下旬にピークに達したようであり、それ以降は減少しています。パナマでのインフルエンザB型のピークは、この地域の他の国に比べて数週間先行しました。ホンジュラスでは、4月から5月にかけて、インフルエンザA(H1N1)pdm09の著明なピークがあり、インフルエンザB型の伝播はありませんでした。

カリブ海では、キューバとジャマイカで、今年の大変早い時期にピークに達した後、最近の数週間、インフルエンザB型の伝播が続いていると報告されています。キューバでは、最近の数週間、インフルエンザA(H1N1)pdm09ウイルスも少数検出されていると報告されています。

南米の熱帯地域では、インフルエンザの活動性は減少し続けています。伝播は数週前にピークに達した後に著しく減少し、現在は、ウイルスの検出数は低いと報告されています。この地域のインフルエンザの活動性は、3種類すべての型・亜型が関係していました。ボリビアは5月にピークを迎え、ほとんどすべてがインフルエンザA(H1N1)pdm09でしたが、同じ時期にピークを迎えたエクアドルでは、ほとんどすべてがインフルエンザB型でした。また、コロンビアでは、主にインフルエンザA(H3N2)の伝播が報告されました。ペルーのインフルエンザの伝播は、6月と7月にピークを迎え、最近主にインフルエンザB型が関係しています。ブラジルでは、ペルーと同時期に大きなピークを迎え、インフルエンザA(H1N1)pdm09とインフルエンザA(H3N2)が均一に混在していました。

サハラ以南のアフリカ

西アフリカでは、セネガルとコートジボワールで、過去2週間から3週間、インフルエンザA(H3N2)の増加が報告されています。中部アフリカの極東部では、カメルーンで、8月下旬以降、インフルエンザA(H3N2)の伝播が増加しています。東アフリカでは、ケニアで、インフルエンザB型が低い水準で検出され続けており、それよりも少数ですが、インフルエンザA(H3N2)も検出されています。

アジアの熱帯地域

アジアの熱帯地域の数か国では、インフルエンザウイルスの流行が続いており、特に、スリランカ、ネパール、タイで著しい流行がみられています。これらの国では、インフルエンザB型と、インフルエンザA(H1N1)pdm09が混在していますが、特に最近の数週間ではインフルエンザA(H1N1)pdm09が若干多くなっています。

中国南部では、インフルエンザの活動性は減少し続けています。最近の報告週では、定点医療機関で採取された臨床検体のうち、インフルエンザが陽性となった検体の割合は2.4%であり、過去数週間減少が続き、8月のほぼ50%となったピーク時よりもかなり下回っています。同様に、外来受診者のうちILIの患者が占める割合も2.2%であり、前年の同時期の水準を下回っています。香港もインフルエンザの活動性はシーズンオフの水準です。

ベトナムでは、ILIや重症急性呼吸器感染症(SARI)の全体的な報告数は減少しています。検査されたILI患者の52検体のうち1検体がインフルエンザB型ウイルス陽性となり、3検体がインフルエンザA(H3N2)ウイルス陽性となりました。ベトナムでは6月に伝播の著しいピークがあり、主にインフルエンザA(H3N2)が関係していました。

ラオスとカンボジアでは、インフルエンザウイルスの検出数が少ない状態が続いています。ラオスでは、8月に活動性のピークを迎えたようであり、主にインフルエンザA(H1N1)pdm09が関係していました。カンボジアでは、過去5週間から6週間、少数ですが、インフルエンザA(H3N2)の検出が続いています。最近の報告週では、検査された呼吸器検体のうち、インフルエンザが陽性となったのは20%(50検体中10検体)で、そのうちの7検体がインフルエンザA(H3N2)であり、2検体がインフルエンザB型(系統不明)、1検体がインフルエンザA(H1N1)pdm09でした。

南半球の温帯地域

南半球の温帯地域では、すべての国でインフルエンザの活動性が減少し続けており、ほとんどの地域では、現在、シーズンオフの水準です。南半球のインフルエンザシーズンの状況については、今年11月2日に疫学報告書の中で公表される予定です。

南米の温帯地域

南米の南回帰線以南の地域のインフルエンザの活動性は、チリ、パラグアイ、アルゼンチンで減少し続けています。アルゼンチンでは、インフルエンザA(H1N1)pdm09とインフルエンザB型ウイルスが、ともに減少していると報告されており、ILIとSARIの患者数もこの傾向を反映しています。

チリでは、ILI患者の受診率は、人口10万人あたり9.6で、先週の人口10万人あたり8.4に比べて若干増加しました。しかし、SARI患者の受診率は減少しています。ILI患者の受診率は7月上旬に人口10万人あたり19.4と最大になりました。インフルエンザA(H3N2)が優勢であったインフルエンザシーズンの後、現在の報告週では、亜型が解析されたインフルエンザウイルスの大部分をインフルエンザB型が占めています。今年に入って、インフルエンザが陽性になったSARI患者の検体の大部分は、インフルエンザA(H3N2)ウイルスでした。

パラグアイでは、インフルエンザの活動性は、依然として、低い水準が続いており、SARIによる入院率とILIの受診率もこの傾向を反映しています。現在の報告週では、呼吸器感染症を起こすウイルスが検査された検体(15検体)のうち、47%がインフルエンザB型でした。

南アフリカの温帯地域

南アフリカでは、インフルエンザウイルスの検出数は減少し続けており、主にインフルエンザB型が検出されています。

オセアニア、メラネシア、ポリネシア

オーストラリアでは、インフルエンザの活動性が減少し続けており、大部分の地域で、流行閾値を下回っていると報告されています。

国全体では、インフルエンザシーズンの終息に向けて、インフルエンザB型が大部分を占めています。今年、インフルエンザが陽性になった検体のうち、インフルエンザA型が78%(32,662検体中25,476検体)を占め、インフルエンザB型が22%(32,662検体中7,186検体)を占めました。インフルエンザA型(亜型不明)と報告された患者のほとんどは、おそらく、インフルエンザA(H3N2)によるものと考えられています。

今年に入ってから10月15日までに、ノイラミニダーゼ阻害薬であるオセルタミビルに耐性を示したウイルスは1株(1,314株中)でした。

出典

Influenza update26 October 2012- Update number 171

http://www.who.int/influenza/surveillance_monitoring/updates/latest_update_GIP
_surveillance/en/index.html