世界におけるインフルエンザ流行状況(31)

2012年11月9日 WHO (原文〔英語〕へのリンク

要約

  • 北半球の温帯地域の多くの国では、インフルエンザウイルスの検出数が増加していると報告しており、特に北米と西ヨーロッパで増加していますが、インフルエンザ様疾患(ILI)や急性呼吸器感染症(ARI)の受診率は季節性の流行閾値を下回っています。
  • 熱帯地域の数か国では、最近の数週間でインフルエンザの活発な伝播がみられています。アメリカ大陸では、ニカラグアとコスタリカで、主にインフルエンザB型が検出されていると報告されています。アジアでは、インド、スリランカ、ネパール、カンボジアで、いずれの国でも、3種類の亜型が混在していると報告されています。
  • サハラ以南のアフリカでは、カメルーンとエチオピアでインフルエンザウイルスの検出数が増加していると報告されています。
  • 南半球の温帯地域では、インフルエンザはシーズンオフの水準です。南半球の今年のインフルエンザシーズンの総説は11月2日付の疫学週報[PDF形式:2712KB]に掲載されています。

北半球の温帯地域

北半球の温帯地域の多くの国では、インフルエンザの検出数が増加していると報告されていますが、ILIやARIの受診率とインフルエンザウイルスの検出数は、依然として、季節性の流行閾値を下回っています。

北米

カナダでは、国全体のILIの割合は、依然として低い状態ですが、インフルエンザウイルスの検出数は若干増加しています。また、長期療養施設での集団感染が2件発生し、65歳以上のインフルエンザに関連した入院患者が5人報告されました。インフルエンザが検出された25検体のうち、22検体はインフルエンザA型でした。インフルエンザA型の検体は、すべてインフルエンザA(H3N2)でした。

米国では、ILIの受診率は1.2%で、季節性の流行閾値(2.2%)を下回っています。多くの州では、まだインフルエンザの活動性は報告されていませんが、33州で散発的に検出されていると報告されています。10月下旬に検査された3,036検体のうち188(6.2%)がインフルエンザウイルス陽性でした。インフルエンザウイルスが陽性であった検体のうち58%がインフルエンザA型であり、インフルエンザA型の97%はインフルエンザA(H3N2)でした。

ヨーロッパ

全体としては、インフルエンザの伝播は低く、季節性の流行閾値を下回っていますが、アルメニア、イスラエル、ポーランド、モルドバ、ロシア西部でILIの活動性が増加していると報告されています。チェコ、デンマーク、フランス、リトアニア、ノルウェー、ロシア、スウェーデン、英国で散発的にウイルスが検出されていると報告されています。

アジア北部

中国北部では、インフルエンザの活動性は非常に低いですが、モンゴルでは、特にドルノド県とセレンゲ県でILIの活動性が増加しています。しかし、モンゴルで10月に検出されたウイルスの大部分は、インフルエンザウイルス以外の呼吸器感染症を起こすウイルスでした。

熱帯地域

アメリカ大陸の熱帯地域

中米とカリブ海諸国の数か国では、最近の数週間はインフルエンザB型の伝播が報告されていますが、全体的には低い水準です。

エルサルバドル、コスタリカ、ニカラグアでは、8月下旬にインフルエンザB型の伝播がピークに達した後、インフルエンザB型の伝播が低い水準で続いており、インフルエンザA(H3N2)は少数です。

カリブ海では、ジャマイカで、最近、インフルエンザB型の伝播が報告されました。一方、キューバでは、6月にインフルエンザB型の伝播がピークに達した後、数週間にわたってインフルエンザA(H1N1)pdm09の検出数が若干増加しています。グアドループとマルティニークでは細気管支炎の流行が報告されており、マルティニークではRSウイルスの増加が報告されています。

南米の熱帯地域では、インフルエンザの活動性は減少し続けており、ウイルス検出数も少数であると報告されています。ブラジルでは、インフルエンザの活動性は全体的に減少しているようであり、インフルエンザB型とインフルエンザA(H3N2)がともに低い水準で報告されています。ブラジルで今年、重症急性呼吸器感染症(SARI)患者から採取された検体の21%(18,700検体中3,900検体)からインフルエンザウイルスが検出されました。インフルエンザが検出された検体の66%(3,900検体中2,588検体)はインフルエンザA(H1N1)pdm09でした。ペルーでは、主にインフルエンザB型ウイルスが低い水準で報告されています。パラグアイでは、インフルエンザB型ウイルスとインフルエンザA(H3N2)ウイルスがともに報告されています。

サハラ以南のアフリカ

前回の報告以降、カメルーンとエチオピアで、インフルエンザA(H3N2)の伝播が増加しています。ケニアでは、主にインフルエンザB型が低い水準で検出され続けています。

アジアの熱帯地域

アジアの熱帯地域では、インド、スリランカ、カンボジア、ネパールで、インフルエンザB型とインフルエンザA(H1N1)pdm09が混在した伝播が続いていると報告されています。

インドでは、インフルエンザの活動性は9月中旬にピークに達した後、減少しています。シーズンを通して、インフルエンザA(H1N1)pdm09がインフルエンザB型を若干上回っており、最も多く検出されています。スリランカとタイは同様の伝播傾向ですが、スリランカでは、10月上旬以降、インフルエンザA(H3N2)の伝播が増加しています。ネパールでは、インフルエンザの活動性が増加しており、主にインフルエンザB型が伝播していると報告されています。中国南部では、インフルエンザの活動性はシーズンオフの水準で、インフルエンザA(H3N2)が若干報告されています。

東南アジアでは、カンボジア、ラオス、ベトナムで、最近インフルエンザの伝播が報告されていますが、最も多く検出されている型・亜型は異なっています。カンボジアでは、9月上旬以降、ほとんどがインフルエンザA(H3N2)であると報告されています。ラオスでは、インフルエンザA(H3N2)とインフルエンザA(H1N1)pdm09が混在していると報告されています。ベトナムではインフルエンザB型が優勢であり、インフルエンザA(H3N2)は少数であると報告されています。

南半球の温帯地域

南半球の温帯地域では、すべての国でインフルエンザの活動性が減少し続けており、現在、シーズンオフの水準です。

南アフリカの温帯地域

南アフリカでは、現在、インフルエンザの活動性はシーズンオフの水準です。非常に低い水準で、インフルエンザB型の伝播が報告されています。一方、ザンビアではインフルエンザA(H3N2)ウイルスとインフルエンザB型ウイルスが散発的に発生していると報告されています。

オセアニア、メラネシア、ポリネシア

オーストラリアとニュージーランドは、今年のインフルエンザシーズンの報告を終了しています。

出典

Influenza update9November2012 - Update number 172

http://www.who.int/influenza/surveillance_monitoring/updates/latest_update_GIP_surveillance/en/index.html