世界におけるインフルエンザ流行状況(32)

2012年11月23日 WHO(原文〔英語〕へのリンク

要約

  • 北半球の温帯地域では、インフルエンザウイルスの検出数が増加していると報告していますが、季節性の流行閾値を超えた国や、流行シーズン入りを公表した国はありません。
  • 南アジアと東南アジアでは、カンボジアを除き、インフルエンザの検出数が減少していると報告されています。カンボジアでは、少なくとも6週間、インフルエンザA(H3N2)の検出数が増加したと報告されています。
  • サハラ以南のアフリカでは、カメルーンでインフルエンザA(H3N2)の流行が続いていますが、ピークに達したようであり、検出される割合は減少しています。エチオピアとガーナでは、インフルエンザA(H1N1)pdm09の増加が報告されていますが、マダガスカル、ケニア、トーゴでは、主にインフルエンザB型が低い水準で伝播しています。
  • 南半球の温帯地域では、インフルエンザの活動性はシーズンオフの水準です。

北半球の温帯地域

北半球の温帯地域では、インフルエンザの検出数が増加し続けており、インフルエンザ様疾患(ILI)の割合や検査された検体のインフルエンザ陽性率も増加していると報告されています。しかし、季節性の流行閾値を超えた国や、流行シーズン入りを公表した国はありません。

北米

米国南部の数州とカナダのオンタリオでインフルエンザの活動性が増加したと報告されています。

カナダでは、オンタリオでインフルエンザの活動性が増加したと報告されていますが、他の地域では報告されていません。国全体では、外来患者に占めるILIの割合は、1.9%であり、前週の2.2%に比べて若干減少しましたが、少なくても過去6週間は全体的に上昇傾向が続いています。インフルエンザウイルスが陽性となった臨床検体の割合は、前週に2.8%から5%に増加しました。インフルエンザの集団発生は8件発生し、そのうちの5件は長期療養施設、3件はその他の施設で発生しました。ウイルスが検出された検体のうち、92%(106検体中87検体)はインフルエンザA型で、8%はインフルエンザB型でした。亜型の情報が得られたインフルエンザA型のうち、91%がインフルエンザA(H3N2)で、9%がインフルエンザA(H1N1)pdm09でした。

米国では、ILIの受診率は1.4%で、季節性の流行閾値(2.2%)を下回っています。4,147検体のうち7.5%がインフルエンザ陽性でした。4州でインフルエンザが州の全域に広がり、8州で局地的に発生しており、コロンビア特別区と32州では散発的に発生していると報告されています。インフルエンザ陽性検体のうち56%がインフルエンザA型で、44%がインフルエンザB型でした。亜型の情報が得られたインフルエンザA型のうち、98%がインフルエンザA(H3N2)でした。

10月以降、米国疾病予防管理センターは77株のインフルエンザウイルスの抗原解析を行いました。インフルエンザA(H3N2)の41株は、すべて、現在使用されている季節性の3価ワクチンに含まれるA/Victoria/361/2011-likeでした。解析されたインフルエンザB型ウイルスの35株のうち、24株はB/Wisconsin/1/2010-like (山形系統)であり、11株はビクトリア系統でした。

ヨーロッパ

全体としては、インフルエンザの検出数は低く、シーズンオフの水準です。しかし、オーストリア、ベルギー、チェコ、フィンランド、フランス、ドイツ、ノルウェー、英国では散発的な活動性が報告されています。ILIと急性呼吸器感染症(ARI)の受診率は低い水準が続いていますが増加し、広がり始めています。しかし、定点医療機関で採取されたILI患者の検体のインフルエンザ陽性率が低いので、おそらく、インフルエンザよりも他の呼吸器感染症を起こすウイルスによるものと考えられています。

定点医療機関で採取された検体のインフルエンザ陽性率は、依然として低いですが、増加しており、608検体のうち14検体(2.3%)が陽性でした。インフルエンザA型は10検体で、このうち5検体がインフルエンザA(H3N2)でした。また、インフルエンザB型は4検体でした(系統不明)。定点医療機関以外で採取された検体のうち、81検体がインフルエンザ陽性であり、46検体がインフルエンザA型で、35検体がインフルエンザB型でした。インフルエンザA型の検体で亜型が解析された28検体のうち、7検体がインフルエンザA(H3N2)、21検体がインフルエンザA(H1N1)pdm09でした。

報告された重症急性呼吸器感染症(SARI)の患者で、インフルエンザが陽性になった患者はいませんでした。

アフリカ北部と地中海東部

中東諸国では、インフルエンザの活動性が多少みられています。バーレーン、イスラエル、オマーン、カタールでは、過去2週間から3週間にウイルスの検出数が増加したと報告されています。検出されたウイルスの型や亜型は、国によって若干異なっており、検出数も少ないですが、この地域では、全体的にインフルエンザA(H1N1)pdm09が最も多く検出されています。

アジア北部

中国北部では、インフルエンザの活動性は非常に低く、インフルエンザが陽性になった検体は、922検体のうち26検体(2.8%)のみです。そのうち96%はインフルエンザA(H3N2)でした。モンゴルでは、特にセレンゲ県でILIの活動性が増加し続けています。モンゴルで報告されたILI患者の大部分は、インフルエンザウイルス以外のウイルスによるものでしたが、インフルエンザ陽性検体数は増加しており、主にインフルエンザA(H3N2)でした。日本では、インフルエンザB型陽性検体が2検体のみ報告されています(系統不明)。

熱帯地域

アメリカ大陸の熱帯地域

コスタリカとニカラグアで、インフルエンザB型とインフルエンザA(H3N2)の活動性がみられていますが、最近の数週間でピークに達しました。コスタリカ、ホンジュラス、パナマでは、RSウイルスの活動性もみられています。

カリブ海では、ジャマイカで、インフルエンザB型ウイルスの伝播が増加し、インフルエンザ陽性検体の割合も高くなっています。グアドループとマルティニークでは、RSウイルスの流行は減少し続けています。

南米の熱帯地域では、インフルエンザの活動性は減少し続けており、ウイルス検出数も少数であると報告されています。ブラジルでは、インフルエンザの活動性は全体的に減少しており、主に検出されているウイルスはインフルエンザA(H3N2)です。パラグアイでは、インフルエンザB型ウイルスとインフルエンザA(H3N2)ウイルスがともに低い水準で報告されています。

サハラ以南のアフリカ

カメルーンでは、依然として、主にインフルエンザA(H3N2)が流行していますが、ピークに達したようであり、検出割合は減少しました。エチオピアとガーナでは、インフルエンザA(H1N1)pdm09の増加が報告されていますが、マダガスカル、ケニア、トーゴでは、主にインフルエンザB型が低い水準で伝播しています。

アジアの熱帯地域

アジアの熱帯地域では、インフルエンザの伝播が続いていると報告されています。

インドでは、インフルエンザの検出数は9月中旬にピークに達した後、減少し続けていると報告されています。インドで最も多く検出されたインフルエンザウイルスはインフルエンザA(H1N1)pdm09であり、インフルエンザB型を上回りました。一方、スリランカでは、インフルエンザの検出数は若干増加しており、インフルエンザA(H3N2)が高い割合を占めていますが、インフルエンザA(H1N1)pdm09とインフルエンザB型も同時に流行しています。

南アジアでは、ラオス、タイ、ベトナムで、インフルエンザ陽性検体数が減少したと報告されていますが、カンボジアでは増加したと報告されています。最も多く検出されているウイルスは国によって異なり、カンボジアではインフルエンザA(H3N2)ですが、ラオスとタイではインフルエンザA(H1N1)です。この地域の他の国とは対照的に、ベトナムでは、最近数週間、主にインフルエンザB型が検出されており、インフルエンザA型ウイルスは非常に少数であると報告されています。

フィリピン、シンガポール、香港を含む中国南部では、インフルエンザの活動性は、依然としてシーズンオフの水準です。

南半球の温帯地域

南半球の温帯地域では、すべての国で、インフルエンザの活動性が減少し続けており、現在、シーズンオフの水準です。活動性がみられているのは南米の南回帰線以南の地域で、チリでは、7月上旬頃にピークに達したインフルエンザA(H3N2)優勢のシーズン後に、インフルエンザB型の伝播による小さな第二波を報告しています。

出典

Influenza update23November2012 - Update number 173

http://www.who.int/influenza/surveillance_monitoring/updates/latest_update_GIP
_surveillance/en/index.html