世界におけるインフルエンザ流行状況 (更新3)

2013年2月15日 WHO (原文〔英語〕へのリンク

要約

  • 北米のインフルエンザの活動性は、インフルエンザA(H3N2)が優勢ですが、減少し始めました。米国では、65歳以上の高齢者で肺炎の患者数とインフルエンザに関連した入院者数は増え続けました。
  • ヨーロッパでは、大部分の国でインフルエンザの活動性が増え続けており、インフルエンザA(H1N1)pdm09が優勢です。ほとんどの国で、伝播は中等度から強く、広範囲に拡大しており、増加傾向にあると報告されました。
  • アジアの温帯地域の全域で、インフルエンザの活動性が続いています。
  • カリブ海、中米、南米の熱帯地域では、インフルエンザの活動性は依然として低い水準です。
  • アフリカのほとんどの国では、インフルエンザの活動性は減少しました。
  • 南半球のインフルエンザは、依然としてシーズンオフの水準です。

北半球の温帯地域

北米

北米では、第5週(1月27日から2月2日)におけるインフルエンザの活動性は、ほとんどの地域で変動がなかったか、または減少しました。しかし、カナダと米国では、依然として広範囲な伝播が報告されています。

カナダでは、全国の検査で確定された患者数は前週と同じ水準で、多くの地域では依然として広範囲で局地的な活動性と報告されました。国全体でのインフルエンザ様疾患(ILI)の受診率(受診者1,000人当たり)は、1月第4週の36.6から、2月第1週には53.7に増加し、この時期に予想される水準を上回っています。一方、ILIの患者から採取された検体のうち、インフルエンザウイルスが陽性となった検体の割合は先週から変動はありませんでした(22.4%)が、RSウイルスが陽性になる割合が急増しました。病院、長期療養施設、学校におけるインフルエンザの集団発生は99件の報告があり、1月第2週にピークに達した後は減少しています。学校におけるインフルエンザの集団発生の報告数は、先週に比べて増加しました。また、総合サーベイランスシステム(カナダのインフルエンザの入院患者の一部を集計するシステム)によって、3,010人のインフルエンザに関連した入院患者が報告されており、前シーズンの合計1,777人を超えています。年齢が把握できた入院患者の半数以上(57.9%)が65歳以上で、13.3%が0歳から4歳でした。シーズン当初からインフルエンザに関連した死亡は203人と報告されましたが、その83.3%(203人中169人)が65歳以上でした。シーズン当初から、予防接種監視活動(IMPACT)ネットワークによって、16歳未満のインフルエンザに関連した入院患者は542人と報告されましたが、その44.3%(542人中240人)は24か月未満でした。

2月第1週に1,511株のインフルエンザウイルスが検出されましたが、94.6%がインフルエンザA型であり、5.4%がインフルエンザB型でした。亜型が解析されたインフルエンザA型のうち、80.5%がインフルエンザA(H3N2)で、19.5%がインフルエンザA(H1N1)pdm09でした。インフルエンザB型の占める割合は、今シーズン全体の累積率に比べ、わずかに高くなりました。シーズン当初から報告された小児のインフルエンザに関連した入院患者542人のうち、95.0%(542人中515人)がインフルエンザA型に関連し、5.0%(542人中27人)がインフルエンザB型に関連していました。インフルエンザA型ウイルスのほとんど(85.4%)は亜型解析されていませんが、亜型のデータが得られたもののうち、86.7%(75人中65人)がインフルエンザA(H3N2)で、13.3%(75人中10人)はインフルエンザA(H1N1)pdm09でした。一方、成人の入院患者で報告されたインフルエンザA(H1N1)pdm09の割合は5.3%(95人中5人)でした。

シーズン当初から、国立微生物学研究所で452株のインフルエンザウイルスの抗原解析が行われました。452株のうち、297株がインフルエンザA(H3N2)で、58株がインフルエンザA(H1N1)pdm09で、72株がインフルエンザB型でした。インフルエンザA(H3N2)は、すべて、ワクチン株のA/Victoria/361/2011に抗原的に類似しており、インフルエンザA(H1N1)pdm09はすべて、ワクチン株のA/California/7/2009に類似していました。インフルエンザB型ウイルスのうち、58株はワクチン株のB/Wisconsin/01/2010(山形系統)に抗原的に類似しており、14株はB/Brisbane/60/2008(ビクトリア系統で、2011年から2012年の季節性インフルエンザワクチンに含まれていた株)に類似していました。今シーズンは、これまでに、396株のインフルエンザウイルスで薬剤感受性試験が行われましたが、ノイラミニダーゼ阻害薬のオセルタミビルまたはザナミビルに対する耐性が認められた検体はありませんでした。

米国では、ほとんどの地域でインフルエンザの活動性が減少しましたが、2月第1週は、依然として高い水準です。国全体の活動性は1月第2週にピークに達したようです。国全体では、ILIの外来受診率は、昨年の最終週に6.1%とピークに達した後、6週連続で減少し、3.6%でした。インフルエンザが陽性となった検体の割合も、昨年の最終週の37.6%から23.3%に減少しました。インフルエンザの活動性が広範囲であると報告された州は、前回の報告では47州でしたが、2月第1週は38州でした。活動性が地域的であると報告された州は東南部が多い傾向にありました。122都市の死亡報告システムを通して報告された肺炎とインフルエンザによる全死亡の割合は、前回の報告の9.8%がピークであり、2月第1週は9.0%と若干減少しましたが、流行閾値の7.4%を上回っています。過去10年間では、2007年から2008年のシーズンで報告された9.1%が最高でした。一方、今シーズンにおいて、これまでにインフルエンザに関連した小児の死亡は59人報告されました。インフルエンザに関連した小児の死亡は、2011年から2012年のシーズン中に34人、2010年から2011年のシーズン中に122人、2009年から2010年のシーズン(パンデミック)中に282人が報告されました。シーズン当初から、検査で確定診断されたインフルエンザに関連した入院患者は8,293人と報告されました(人口10万人当たり29.8)。人口10万人当たりの入院患者の割合は依然として増加しており、既に過去3シーズンを上回りました(2011年から2012年のシーズンは8.6、2010年から2011年のシーズンは21.4、2009年から2010年のシーズンは29.0)。年齢別では、65歳以上の入院患者の割合が非常に多くなっており、人口10万人当たり134.8に達しました。2009年から2010年のシーズンは25.3、2010年から2011年のシーズンは64.0、2011年から2012年のシーズンは30.5でした。一方、他の年齢層では、入院患者の割合は例年と同様の水準でした。米国では、カナダとは対照的に、インフルエンザB型の占める割合が高くなっています。シーズン当初から検査されたインフルエンザウイルス51,129株のうち、80.2%がインフルエンザA型で、19.8%がインフルエンザB型でした。カナダでは確定されたインフルエンザウイルスのうち94.6%がインフルエンザA型ウイルスでした。シーズン当初から、疾病予防管理センター(CDC)は972株のインフルエンザウイルスの抗原解析を行いました。インフルエンザA(H1N1)pdm09の66株は、いずれも、A/California/7/2009-likeで、インフルエンザA(H3N2)の99.7%(608株中606株)は、A/Victoria/361/2011-likeでした。いずれも、北半球で今シーズンに使用されている3価の季節性インフルエンザワクチンに含まれるものです。解析された298株のインフルエンザB型ウイルスのうち、70.8%(298株中211株)は今シーズンに使用されている3価の季節性インフルエンザワクチンに含まれるB/Wisconsin/1/2010-like (山形系統)であり、29.2%(298株中87株)はビクトリア系統でした。

シーズン当初から検査された、1,001株のインフルエンザA(H3N2)、298株のインフルエンザB型ウイルスでは、ノイラミニダーゼ阻害薬であるオセルタミビルとザナミビルに対する耐性は認められませんでした。インフルエンザA(H1N1)pdm09は184株が検査され、1月第3週にオセルタミビル耐性株が1株報告されました。

ヨーロッパ

ヨーロッパでは、大部分の国で、インフルエンザの活動性は増加し続けましたが、数か国で減少したと報告されました。前回の報告と同様に、ほとんどの国で、伝播は中等度から強く、広範囲に拡大しており、22か国ではインフルエンザの活動性が増加傾向にあると報告されました。ベルギー、ドイツ、ルクセンブルク、スウェーデンでは伝播が強く、19か国では伝播は中等度、4か国(ポーランド、英国など)では伝播は低いと報告されました。今シーズンは、数か国(ノルウェー、ポーランド、英国など)で、早期に臨床的な活動性のピークに達したようですが、数か国(デンマーク、ギリシャ、アイルランド、ルクセンブルク)でILIの受診率が再度増加しました。

インフルエンザウイルスの流行は、依然として、地域の中で異なっており、2週前の報告と同様でした。インフルエンザA型のうち、主にインフルエンザA (H1N1)pdm09が優勢と報告されたのは、北部、東部、中部で、オーストリア、チェコ、ドイツ、ロシアなどです。一方、インフルエンザB型が優勢と報告されたのは、南部と西部の数か国で、フランス、アイルランド、イタリア、スペイン、英国などです。これらの地域に挟まれた地域ではインフルエンザA (H1N1)pdm09、インフルエンザA(H3N2)、インフルエンザB型が同時に流行していると報告されました。

定点機関で採取された検体でインフルエンザが陽性となった検体の割合は、今シーズンで最も高い水準に増加しました。3週連続で増加し、約40%から52%(2,949検体中1,541検体)になりました。インフルエンザが陽性であった重症急性呼吸器感染症(SARI)の入院患者の割合も増加し続けており、主にインフルエンザA (H1N1)pdm09が検出されました。定点の病院では、検査で陽性になる割合は増加していますが、入院患者数は増加していないようです。ヨーロッパの定点機関のデータでは、ILIや急性呼吸器感染症(ARI)患者の検体から検出されるウイルスの割合と入院患者の検体から検出されるウイルスの割合は同様です。報告された患者のほとんどが0歳から4歳の小児でした。ヨーロッパ死亡率監視プロジェクトに参加している13か国から報告された全死亡者数は過去の平均値に近い数でした。しかし、16か国のうち、デンマークと英国(スコットランドとイングランド)の2か国では、65歳以上の死亡率が増加しました。

今シーズンは、インフルエンザウイルスのうち70%(30,119株中21,097株)がインフルエンザA型で、30%(30,119株中9,022株)がインフルエンザB型でした。亜型が解析されたインフルエンザA型のうち、71%(13,107株中9,355株)がインフルエンザA (H1N1)pdm09で、29%(13,107株中3,752株)がインフルエンザA(H3N2)でした。インフルエンザA (H1N1)pdm09の占める割合は、過去2週間以上にわたって増加しました。シーズン当初から、解析されたウイルスの大部分は、現在の北半球で使用されている季節性インフルエンザワクチンに含まれるウイルス株と抗原的に類似していました。

シーズン当初から、278株のウイルスに対してノイラミニダーゼ阻害薬の感受性検査が行われましたが、オセルタミビルに耐性のあるインフルエンザA (H1N1)ウイルスが1株のみ検出されました。その他のウイルスはすべて感受性がありました。

アフリカ北部

アフリカ北部における、陽性検体数は、過去数週間にわたって、小さな変動を示しながら減少し続けました。しかし、アルジェリアやチュニジアなどの数か国では、過去数週間で報告されたインフルエンザの陽性検体の割合が増加しました。インフルエンザA型(H1とH3)とインフルエンザB型がともに流行していますが、若干、A(H1N1)pdm09が優勢です。

西アジア

西アジアでは、特にトルコとグルジアで、インフルエンザが明らかに増加しました。しかし、エジプトやヨルダンなど、数か国では減少傾向にあると報告されました。地域によって、優勢なウイルスの亜型は異なっており、グルジアやトルコなど北部の国ではインフルエンザA(H1N1)pdm09が非常に優勢ですが、エジプトやヨルダンなど、他の国ではインフルエンザA(H3N2)やインフルエンザB型が多く報告されました。この相対的な傾向は、エジプトやトルコなどでは先週と同様ですが、バーレーンとヨルダンでは、インフルエンザA(H1N1)pdm09とインフルエンザB型の割合が変化しました。

中央アジア

中央アジアにおけるインフルエンザの活動性は、カザフスタン、キルギス、ウズベキスタンなどで、過去数週間にわたって若干増加しました。カザフスタンではインフルエンザA(H3N2)が優勢と報告されており、ウズベキスタンではインフルエンザB型とインフルエンザA(H3)がともに優勢で、キルギスではインフルエンザB型とインフルエンザA(H1N1)pdm09がともに優勢と報告されました。

アジアの温帯地域

アジアの温帯地域の全域で、インフルエンザの活動性が続いています。中国北部では、1月の最終週におけるILIの受診率は3.5%で変化がなく、過去6年間に見られた範囲内にあります。モンゴルでは、同時期に、インフルエンザの活動性を検出する指標が増加し、インフルエンザの活動性は増加傾向を示しました。

中国では、南部も北部もインフルエンザA(H1N1)pdm09の割合が増加し、インフルエンザA(H3N2)とインフルエンザB型の占める割合を超えました。1月の最終週にインフルエンザの検査が行われた検体のうち23.2%(2,342検体中543検体)がインフルエンザ陽性であり、インフルエンザが陽性となった検体のうち98.5%(543検体中535検体)がインフルエンザA型でした。1月の最終週に検査で陽性となった割合は、北部で31.8%、南部で14.5%であり、いずれも先週よりも若干増加しました。

1月の最終週に中国国家インフルエンザセンターで亜型が解析されたインフルエンザウイルスのうち、インフルエンザA(H1N1)pdm09はすべてA/California/7/2009-likeで、インフルエンザA(H3N2)はすべてA/Victoria/361/2011(H3N2)-likeでした。また、インフルエンザB/VictoriaはすべてB/Brisbane/60/2008-like、B/YamagataはすべてB/Wisconsin/01/2010-likeでした。検査されたインフルエンザ検体でノイラミニダーゼ阻害薬であるオセルタミビルとザナミビルに耐性のあるものはありませんでした。香港でも同様の傾向が見られましたが、オセルタミビルに耐性を示すインフルエンザA(H1N1)pdm09が散発的に1株分離されました。

韓国におけるインフルエンザの活動性は増加し続けており、インフルエンザA(H3N2)とA(H1N1)pdm09が検出されました。日本でのインフルエンザの活動性は1月第2週に急増しましたが、その後は徐々に減少しており、優勢な亜型はインフルエンザA(H3N2)です。

熱帯地域

アメリカ大陸の熱帯地域

中米とカリブ海では、インフルエンザの活動性は前週と比較し、ほぼ同じか減少し、晩夏のピークから減少し続けました。全体的には、ILIとARIの患者はほとんどがインフルエンザではない疾患と報告されており、RSウイルスとライノウイルスが最も多く検出されています。インフルエンザの伝播を報告している国では、低い水準で、インフルエンザA(H1N1)pdm09、インフルエンザA(H3N2)、B型がともに伝播しています。

中部アフリカ

中部アフリカのほとんどの国ではインフルエンザの検出は減少しました。以前にコンゴ民主共和国とガーナで循環していたインフルエンザA(H1N1)pdm09は、現在シーズンオフの水準まで減少しました。カメルーンとマダガスカルでは、依然として、インフルエンザB型が低い水準で報告されました。ガーナとタンザニアではインフルエンザB型が若干増加したと報告されました。

アジアの熱帯地域

東南アジアのほとんどの国では、インフルエンザの活動性は前週と同様でした。カンボジア、インド、スリランカ、タイ、ベトナムでは若干減少し、低い水準での循環が続いています。イランでは前回の報告以降、インフルエンザの活動性が穏やかに減少しました。

インドではインフルエンザA(H1N1)pdm09とインフルエンザB型が優勢ですが、スリランカでは、依然として、3種類の型・亜型が循環しています。カンボジア、タイ、ベトナムなど東南部の国では、インフルエンザB型とインフルエンザA(H3N2)がともに優勢です。特に、タイでは、インフルエンザB型とともにインフルエンザA(H1N1)pdm09が循環していた約12週から15週前とは対照的です。

シンガポールのインフルエンザの活動性は、依然として、シーズンの閾値より低い水準で、3種類の型・亜型が循環しています。

南半球の温帯地域

南半球の温帯地域のすべての国で、現在、インフルエンザの活動性は、シーズンオフの水準です。

出典

Influenza update 15 February 2013 - Update number 179
http://www.who.int/influenza/surveillance_monitoring/updates/latest_update_GIP
_surveillance/en/index.html