世界におけるインフルエンザ流行状況 (更新4)

2013年3月1日 WHO (原文〔英語〕へのリンク

要約

  • 北米のインフルエンザの活動性は、依然として高い地域もありますが、全体的には減少し続けています。インフルエンザB型の占める割合が若干増加しましたが、依然としてインフルエンザA(H3N2)が最も多く検出されています。米国では、例年よりも重症患者が多く、特に65歳以上の高齢者で肺炎の患者数とインフルエンザに関連した入院者数が多く報告されました。
  • ヨーロッパでは、北部と西部でインフルエンザの活動性が減少した国もありますが、東部では活動性が増加しました。インフルエンザA(H1N1)pdm09が最も多く検出されています。例外として、デンマーク、アイルランド、英国では、他の国に比べてインフルエンザA(H3N2)とB型が多く報告されています。また、ブルガリア、イタリア、スペインではインフルエンザA型よりもB型が多く報告されています。ヨーロッパ死亡率監視プロジェクトに超過死亡を報告している14か国の超過死亡は、65歳以上で例年よりも高いですが、過去2シーズンほど高くはありません。
  • アジアの温帯地域の全域で、インフルエンザの活動性は減少しましたが、モンゴルは例外でピークに達したようです。
  • 熱帯地域のインフルエンザの活動性は低い水準であり、南半球のインフルエンザの活動性は、依然としてシーズンオフの水準です。
  • 2月の第3週に、WHOで北半球の2013年から2014年のシーズンのインフルエンザワクチン株選定会議が開催され、インフルエンザA(H3N2)とB型について、前シーズンの株から変更されました。報告書は、下記のURLに掲載されています。http://www.who.int/influenza/vaccines/virus/recommendations/2013_14_north/en/

北半球の温帯地域

北米

北米でのインフルエンザの活動性は、1月上旬にピークに達した後、2月第2週は全体的に減少し続けています。しかし、カナダと米国では、依然として活動性の高い地域がありました。

カナダでは、検査で確定された患者数は前週から減少し、多くの地域で局地的あるいは散発的な活動性と報告されました。国全体でのインフルエンザ様疾患(ILI)の受診率は、昨年の最終週に67.1%とピークに達した後、減少し続けており、2月第3週は38.0%でした。インフルエンザウイルスが陽性となったILI患者の割合は先週の17.0%から15.2%に減少しました。病院、長期療養施設、学校におけるインフルエンザの集団発生は45件の報告があり、120件を超える報告があった1月第2週にピークに達した後は減少し続けています。総合サーベイランスシステム(カナダのインフルエンザの入院患者の一部を集計するシステム)によって、3,316人のインフルエンザに関連した入院患者が報告されており、前シーズンの合計1,777人を超えています。年齢が把握できた入院患者の半数以上(57.2%)が65歳以上で、13.4%が0歳から4歳でした。シーズン当初からインフルエンザに関連した死亡は217人と報告されましたが、その83.0%(203人中169人)が65歳以上でした。シーズン当初から、予防接種監視活動(IMPACT)ネットワークによって、16歳未満のインフルエンザに関連した入院患者は597人と報告されましたが、その43.3%(542人中240人)は24か月未満でした。

カナダでは、2月第3週に926株のインフルエンザウイルスが検出されましたが、86.8%がインフルエンザA型であり、13.2%がインフルエンザB型でした。亜型が解析されたインフルエンザA型のうち、78.2%がインフルエンザA(H3N2)で、21.8%がインフルエンザA(H1N1)pdm09でした。カナダの西部の州で、インフルエンザB型の占める割合が比較的高いと報告されました。シーズン当初から報告された小児のインフルエンザに関連した入院患者のうち、92.8%(597人中554人)がインフルエンザA型に関連し、7.2%(597人中43人)がインフルエンザB型に関連していました。シーズン当初から、国立微生物学研究所で569株のインフルエンザウイルスの抗原解析が行われ、405株がインフルエンザA(H3N2)で、76株がインフルエンザA(H1N1)pdm09で、88株がインフルエンザB型でした。インフルエンザA(H3N2)は、すべて、ワクチン株のA/Victoria/361/2011に抗原的に類似しており、インフルエンザA(H1N1)pdm09はすべて、ワクチン株のA/California/7/09に類似していました。インフルエンザB型ウイルスのうち、73株はB/Wisconsin/01/2010に抗原的に類似しており、15株はB/Brisbane/60/2008に類似していました。今シーズンは、これまでに、1,031株のインフルエンザウイルスで薬剤感受性試験が行われましたが、オセルタミビルまたはザナミビルに対する耐性を示した検体はありませんでした。

米国では、インフルエンザの活動性は12月下旬から1月上旬にかけてピークに達した後、ほとんどの地域で減少し続けていますが、2月第3週で依然として高い地域もありました。国全体では、ILIの外来受診率は、昨年の最終週に6.1%とピークに達した後、2.8%に減少しました。インフルエンザが陽性となった検体の割合も、ピークとなった昨年末の37.6%から16.8%に減少しました。インフルエンザの活動性が広範囲であると報告された州は、前回の報告では38州でしたが、2月第3週は22州でした。122都市の死亡報告システムを通して報告された肺炎とインフルエンザによる全死亡の割合は、1月第4週に9.8%とピークに達し、2月第3週は8.6%と減少しましたが、依然として流行閾値の7.5%を上回っています。過去10年間では、2007年から2008年のシーズンで報告された9.1%が最高でした。今シーズンにおいて、これまでにインフルエンザに関連した小児の死亡は78人報告されました。インフルエンザに関連した小児の死亡は、2011年から2012年のシーズン中に34人、2010年から2011年のシーズン中に122人、2009年から2010年のシーズン(パンデミック)中に282人が報告されました。

シーズン当初から、検査で確定診断されたインフルエンザに関連した入院患者は9,531人と報告されており(累積率では人口10万人当たり34.2)、過去3シーズンに比べて著しく高くなっています(2011年から2012年のシーズンは人口10万人当たり8.6、2010年から2011年のシーズンは人口10万人当たり21.4、2009年から2010年のシーズンは人口10万人当たり29.0)。65歳以上のインフルエンザによる入院患者の割合は、他の年齢層に比べて非常に高くなっており、人口10万人当たり154.3に達しました。2009年から2010年のシーズンは25.3、2010年から2011年のシーズンは64.0、2011年から2012年のシーズンは30.5でした。一方、他の年齢層では、入院患者の割合は例年と同様の水準でした。シーズン当初から検査されたインフルエンザウイルス58,307株のうち、78.6%がインフルエンザA型で、21.4%がインフルエンザB型でした。カナダとは対照的であり、カナダでは確定された検体のうち96.5%がインフルエンザA型でした。シーズン当初から、疾病予防管理センター(CDC)は1,185株のインフルエンザウイルスの抗原解析を行いました。インフルエンザA(H1N1)pdm09の86株は、いずれも、A/California/7/2009-likeで、インフルエンザA(H3N2)の99.5%(744株中740株)は、A/Victoria/361/2011-likeでした。いずれも、北半球で今シーズンに使用されている3価の季節性インフルエンザワクチンに含まれるものです。解析された355株のインフルエンザB型ウイルスのうち、70.8%(355株中241株)は今シーズンに使用されている3価の季節性インフルエンザワクチンに含まれるB/Wisconsin/1/2010-like (山形系統)であり、29.2%(355株中114株)はビクトリア系統でした。シーズン当初から検査された、1, 193株のインフルエンザA(H3N2)、419株のインフルエンザB型ウイルスでは、ノイラミニダーゼ阻害薬であるオセルタミビルとザナミビルに対する耐性は認められませんでした。インフルエンザA(H1N1)pdm09は274株が検査され、オセルタミビル耐性株が2株報告されました。

ヨーロッパ

ヨーロッパの東部では、インフルエンザの活動性は増加し続けましたが、北部や西部では減少し始めた国もあります。ヨーロッパ大陸では、インフルエンザシーズンがピークに達したようですが、特に東部ではまだピークに達していない国もあります。定点機関で採取された検体でインフルエンザが陽性になった検体の割合は、3週前に52%とピークに達した後、先週の報告では50%(2,634検体中1,313検体)と若干減少しました(欧州連合加盟国のうち60%のデータによる)。毎週の重症急性呼吸器感染症(SARI)による入院患者数は、主に東部の国から報告されていますが、2月第2週に今シーズン中で最も多い水準に達しました。2月第3週は、主に西部と北部の地域で、前回の報告に比べて活動性の減少が示されましたが、依然として、大部分の国では伝播は中等度で広範囲に拡大していると報告されました。ベルギー、ドイツ、ルーマニア、ロシア、スイスでは伝播が強く、4か国(ポーランド、英国など)では伝播は低く、その他の国では伝播は中等度と報告されました。今シーズンは、数か国(ノルウェー、ポーランド、英国など)で、早期にILIの活動性がピークに達したようですが、他の国では、まだピークに達していないか、現在ピークを迎えており、数か国では、依然として、ILIや急性呼吸器感染症(ARI)が増加傾向にあると報告されています。

ヨーロッパ死亡率監視プロジェクトに参加している14か国から報告された全死亡者数のデータによれば、65歳以上の超過死亡は例年よりも高いですが、過去3シーズンの水準を下回っています。今シーズンは、これまでのところ、65歳未満の年齢層では、同様の超過死亡の傾向は見られていません。デンマークでは、超過死亡が最も多く、最も長期にわたって報告されており、インフルエンザの活動性は、インフルエンザA(H3N2)が優勢でしたが、インフルエンザB型が優勢になりました。

ヨーロッパ大陸で、最も多く検出されているのは、インフルエンザA型で、主にインフルエンザA (H1N1)pdm09ですが、地域によって差があります。

今シーズンは、47,426株のインフルエンザウイルスが検出され、亜型が解析されました。このうち69%(47,426株中32,556株)がインフルエンザA型で、31%(47,426株中14,870株)がインフルエンザB型でした。この割合は、シーズン当初から変化がありません。しかし、ブルガリア、イタリア、スペインでは、インフルエンザA型よりもインフルエンザB型が多く報告されました。デンマーク、アイルランド、英国では、他の国に比べてインフルエンザA(H3N2)とインフルエンザB型が多く報告されました。亜型が解析された20,778株のインフルエンザA型のうち、73%(20,778株中15,103株)がインフルエンザA (H1N1)pdm09で、27%(20,778株中5,675株)がインフルエンザA(H3N2)でした。シーズン当初から、解析されたウイルスの大部分は、現在の北半球で使用されている季節性インフルエンザワクチンに含まれるウイルス株と抗原的に類似していました。

シーズン当初から、多くのノイラミニダーゼ阻害薬の感受性検査が行われましたが、オランダで、アミノ酸変異(H275Y)を有するオセルタミビル耐性株が1株のみ検出されました。その他のウイルスはすべて感受性がありました。

アフリカ北部

アフリカ北部における、インフルエンザ陽性検体数は、過去数週間にわたって、小さな変動を示しながら減少し続けました。しかし、アルジェリアやチュニジアなどの数か国では、インフルエンザA(H1N1)pdm09とインフルエンザB型がともに伝播していると報告されています。

北アジア

アジアの温帯地域では、ほとんどの地域でインフルエンザの活動性が減少しました。中国北部、韓国、日本では、3週以上にわたって、ILIの活動性と、ILI患者の検体でインフルエンザが陽性になったものの割合が減少しました。モンゴルでは、依然として活動性が高く、まだ減少していないようです。

今シーズンに北アジアのほとんどの地域で最も多く検出されているのはインフルエンザA(H3N2)で、日本で検出されるウイルスのほとんどを占めていますが、中国北部では、最近数週間でインフルエンザA(H1N1)pdm09が増加しました。2月第2週に検出されたインフルエンザウイルス47株は、すべてインフルエンザA型でした。このうち63.8%(47株中30株)はインフルエンザA(H1N1)pdm09で、36.2%(47株中17株)はインフルエンザA(H3N2)でした。今シーズン当初から中国国家インフルエンザセンターで亜型が解析されたインフルエンザウイルスのうち、インフルエンザA(H1N1)pdm09の99.2%(120株中119株)はA/California/7/2009-likeで、インフルエンザA(H3N2)はすべてA/Victoria/361/2011(H3N2)-likeでした。また、インフルエンザB型では、インフルエンザB/Victoriaの98.4%(124株)はB/Brisbane/60/2008-like、B/Yamagataはすべて(20株)B/Wisconsin/01/2010-likeでした。検査されたインフルエンザ検体でノイラミニダーゼ阻害薬であるオセルタミビルとザナミビルに耐性のあるものはありませんでした。

熱帯地域

アメリカ大陸(中米、カリブ海諸国)の熱帯地域

中米とカリブ海諸国では、インフルエンザの活動性は前週と比べ、ほぼ同じか減少し、晩夏のピークから減少し続けました。全体的には、ILIとARIの患者はほとんどがインフルエンザではない疾患と報告されており、RSウイルスとライノウイルスが最も多く報告されています。インフルエンザA(H1N1)pdm09、インフルエンザA(H3N2)、B型が非常に低い水準で検出されました。

南米の熱帯地域では、急性呼吸器疾患の活動性は低いままです。ブラジルではインフルエンザA(H3N2)とB型が少数報告されました。

中部アフリカ

中部アフリカのほとんどの国ではインフルエンザの検出は減少しました。しかし、カメルーンとマダガスカルでは、わずかですが、インフルエンザB型の伝播が持続していると報告されました。

アジアの熱帯地域

東南アジアのほとんどの国では、インフルエンザの活動性は前週と同様でした。カンボジア、インド、スリランカ、タイでは若干減少し、低い水準での伝播です。

インドでは比較的低い水準でインフルエンザA(H1N1)pdm09が報告されており、さらに低い水準でインフルエンザB型も報告されました。一方、スリランカでは、依然として、3種類の型・亜型がほぼ同じ割合で伝播しています。タイも、インフルエンザA(H3N2)とインフルエンザB型が中等度検出されたと報告されました。東南アジアで検出されるウイルスは非常に少数でした。

南半球の温帯地域

南半球の温帯地域のすべての国で、現在、インフルエンザの活動性は、シーズンオフの水準です。

出典

Influenza update1 March 2013 - Update number 180
http://www.who.int/influenza/surveillance_monitoring/updates/latest_update_GIP
_surveillance/en/index.html