ハンセン病について (ファクトシート)

2014年1月 WHO (原文〔英語〕へのリンク

要点

  • ハンセン病は、らい菌という増殖速度が遅い細菌によって起こる慢性疾患です。
  • らい菌の増殖速度は遅く、疾患の潜伏期間は約5年です。症状が出現するまでに20年かかることもあります。
  • この疾患は、主に皮膚、末梢神経、上気道の粘膜、眼を侵します。
  • ハンセン病は治療可能な疾患です。
  • らい菌の感染性は高くありませんが、治療されていない患者と濃厚かつ頻回な接触で、鼻や口からの飛沫によって伝播します。
  • 早期診断と多剤併用療法は、公衆衛生上の懸念であるハンセン病を排除するために、依然として、重要な要素です。
  • ハンセン病は、治療しなければ、皮膚、神経、手足、眼に、進行性で永続する障害が起こることがあります。
  • 2012年末時点における患者は115 か国から18万9,018人が登録されており、同年の1年間に23万2,857人の新規患者が報告されました。

ハンセン病は、抗酸性の桿菌であるらい菌によって起こる慢性感染症です。この疾患は、主に皮膚、末梢神経、上気道粘膜、眼を侵します。

ハンセン病は治療可能な疾患であり、早期に治療することで、障害を防ぐことができます。

多剤併用療法は、1995年以降、WHOによって、世界中のすべての患者が無料で受けることができるようになっており、ハンセン病のすべての病型に、簡単ですが、効果的な治療が提供されます。

世界的には、ハンセン病の排除(世界でのハンセン病の有病率が1万人当たり1人未満)は2000年に達成しました。過去20年以上に渡って、1,600万人に近いハンセン病の患者が多剤併用療法によって治癒しました。

現在のハンセン病

ハンセン病のコントロールは、ほとんどの常在国で、国または地方自治体の取組によって、著明に改善しました。既存の一般的な保健サービスの中に初期のハンセン病の保健サービスを統合したことで、疾患の診断と治療が容易になりました。

地域の中ですべての患者を発見し、多剤併用療法を使用して、決められた治療を完了することが、「ハンセン病による負荷を更に軽減するために強化された世界戦略」(計画期間は2011年から2015年まで)の基本的な信条です。

この戦略では、専門知識を維持し、ハンセン病に関して熟練したスタッフを増やし、ハンセン病のサービスで影響を受けた人の関与を改善し、外観の変形(グレード2の障害)を減少させ、疾患に関連する汚名をそそぐ必要性が強調されています。

2011年~2015年の国のハンセン病計画の実施は、現在、サービスが行き届かない集団とアクセスが容易でない地域で、サービスの利用しやすさと治療率を改善することに焦点が当てられています。制御の戦略は制限されているので、国の計画は、患者発見、接触者調査、監視、照会、記録の管理を積極的に改善しています。

115か国からの公式報告によると、全世界において、2012年末のハンセン病の有病者数は、18万9,018人でした。2012年に発見された新規患者数は23万2,857人で、2011年は22万6,626人でした。

世界の統計によれば、ハンセン病の新規患者のうち22万810人(95%)は16か国から報告されており、その他の国から報告された新規患者は5%のみでした。

多くの国で、ハンセン病が高度に常在している地区がありますが、参考として、いくつかの国を示します:アンゴラ、バングラデシュ、ブラジル、中国、コンゴ民主共和国、エチオピア、インド、インドネシア、マダガスカル、モザンビーク、ミャンマー、ネパール、ナイジェリア、フィリピン、南スーダン、スリランカ、スーダン、タンザニア。

略史-疾患と治療

ハンセン病は、中国、エジプト、インドの古代文明で認識されていました。ハンセン病について、最初に書物に記されたのは紀元前600年です。歴史を通して、患者は、しばしば、地域や家族から排斥されました。

ハンセン病は、過去には様々な方法で治療されましたが、最初の進展は、1940年代にハンセン病を抑えたダプソンの開発でした。しかし、治療期間は何年にも渡り、時には生涯続くこともあり、患者が治療を継続することが困難でした。1960年代に、らい菌は、当時、世界でらい菌に対する唯一の薬と知られていたダプソンに耐性を持ち始めました。1960年代の初期に、リファンピシン、クロファジミン、その他2種類の成分の併用を推奨する多剤併用療法が発見されました。

1981年にWHOの研究グループは多剤併用療法を推奨しました。多剤併用療法は、ダプソン、リファンピシン、クロファジミンの3種類の薬を組み合わせることによって、病原体を殺し、患者を治療します。

1995年以降、WHOは世界中のすべての患者に無料で多剤併用療法を提供しています。当初は、日本財団からの基金によって提供し、2000年以降は、ノバルティスとノバルティス持続可能開発財団からの基金で提供しています。

公衆衛生学的問題としてのハンセン病の排除

1991年、WHOの最高意思決定機関である世界保健総会は、2000年までにハンセン病を排除する決議を採択しました。ハンセン病の排除は、人口1万人当たりの有病率が1人未満と定義されます。目標は予定通りに達成され、多剤併用療法の使用によって、疾病負荷が劇的に減少しました。

  • 過去20年間以上で1,400万人以上、2000年以降で約400万人のハンセン病患者が治癒しました。
  • 疾患の有病率は、人口1万人当たり21.1から、2000年には人口1万人当たり1未満と、90%減少しました。
  • 全世界での疾病負荷は劇的に減少しました。1985年には520万人の患者が発生していましたが、1995年には80万5,000人、1999年の年末には75万3,000人、2012年末には18万9,018人と減少しました。
  • ハンセン病は、1985年に公衆衛生上の問題として考えられていた122か国のうち119か国から排除されています。
  • これまでに、多剤併用療法を用いた治療で、ハンセン病治療に耐性を示す事例は報告されていません。
  • 現在の取組は、依然として常在している国では国のレベルで、その他の国では地方自治体のレベルで、ハンセン病の排除に焦点が当てられています。

求められる行動と資源

ハンセン病の治療が、すべての患者に行き届くようにするためは、治療は、一般的な保健サービスに完全統合する必要があります。さらに、ハンセン病が、依然として公衆衛生上の問題となっている国では、政治的な関与も継続される必要があります。ハンセン病の排除に関係する機関も、人的資源や財政資源の利用を確保し続ける必要があります。

長年にわたる疾患の汚名は、依然として、自己申告と早期治療の障害となっています。ハンセン病のイメージは、世界レベルでも、国家レベルでも、地方自治体レベルでも変えなければなりません。患者が、どの医療施設でも、躊躇せずに診断と治療を受けられるような新しい環境を作らなければなりません。

WHOの対応

WHOのハンセン病排除のための戦略は、下記の内容から構成されています。

  • 柔軟で患者に優しい薬物供給システムによって、すべての患者が利用できる、継続的な多剤併用療法サービスの確保
  • ハンセン病の保健サービスを一般の保健サービスに統合し、一般の医療従事者がハンセン病を治療する能力を確立することによる、多剤併用療法サービスの継続性の確保
  • 地域での注意喚起とハンセン病のイメージを変えるための普及啓発によって、自己申告と早期治療の励行
  • 多剤併用療法サービスの実施状況、患者ケアの質、国の疾患サーベイランスシステムによる排除に向けた進捗状況の監視

国や国際的な関係機関からの支援を受けた国の計画に基づく、持続的で献身的な努力によって、世界でのハンセン病の疾病負荷は減少しました。保健サービスや地域の一層の関与によって、疾患にかかった人の権利が拡大することで、ハンセン病のない世界が近づきます。

出典

WHO LeprosyFact sheet N°101Updated January2014

http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs101/en/index.html