世界におけるインフルエンザの流行状況について (更新5)

2014年3月24日 WHO(原文〔英語〕へのリンク

要約

  • 世界的にみて、インフルエンザの活動性は全体的に減少し続けました。インフルエンザB型の活動性は、早期にはインフルエンザA型よりも弱かったものの、一部の地域で増加しました。
  • 北米におけるインフルエンザの活動性は、依然として減少傾向にあり、指標はインフルエンザのシーズンが終息に向かっていることを示しています。しかし、この地域ではインフルエンザB型の検出が若干増加しました。
  • ヨーロッパでは、インフルエンザの活動性は国によって異なりました。活動性の全体的な傾向は、東部で増加しましたが、南西部と北部では減少しました。インフルエンザA(H1N1)pdm09とインフルエンザA(H3N2)が伝播し続けましたが、優勢な亜型は国によって異なりました。
  • 東アジアでは、全体的に活動性は減少しましたが、インフルエンザB型の活動性が若干増加しました。中国では、インフルエンザの活動性は2月下旬に減少した後、依然として安定した水準でした。モンゴルにおけるインフルエンザの活動性は依然として増加しました。
  • アジアの熱帯地域では、インフルエンザの活動性は全体的に減少しましたが、タイではインフルエンザA(H1N1)pdm09の活動性が増加し、インフルエンザB型が検出される割合が増加したと報告されました。
  • 北アフリカと西アジアでは、インフルエンザの活動性は全体的に減少しましたが、インフルエンザB型が陽性となった検体の割合が増加し始めました。
  • FluNet(3月20日時点)によれば、第9週から第10週(2月23日から3月8日)の間、96の国・地域にある国のインフルエンザ・センターやその他の国内のインフルエンザ研究施設からデータが報告されました。WHO世界インフルエンザサーベイランス及び対応システム(GISRS)の検査施設では、74,758以上の検体を検査しました。インフルエンザが陽性となったのは13,548検体で、このうち10,289検体(75.9%)がインフルエンザA型で、3,259検体(24.1%)がインフルエンザB型でした。亜型が解析されたインフルエンザA型ウイルスのうち、4,470(65%)がインフルエンザA(H1N1)pdm09、2,410検体(35%)がインフルエンザA(H3N2)でした。解析されたインフルエンザB型ウイルスのうち、222検体(87.4%)が山形系統で、32検体(12.6%)がビクトリア系統でした。
  • 鳥インフルエンザウイルスA(H7N9)に関する更新情報は、WHOのウェブサイトを参照してください。
    http://www.who.int/influenza/human_animal_interface/influenza_h7n9/

北半球の温帯地域

北米

北米では、インフルエンザの活動性は全体的に減少し続け、指標はこの地域のインフルエンザのシーズンが終息に向かっていることを示しています。しかし、3月上旬以降、インフルエンザB型ウイルスの検出率が若干増加したと報告されました。

カナダでは、インフルエンザの活動性は全体的に減少し続けました。今シーズンは、依然としてインフルエンザA(H1N1)pdm09が優勢でした。最近、インフルエンザB型の検出が増加し、3月2日から3月8日の週では、インフルエンザA型とB型の検出数がほぼ同じ割合となりました。今シーズンでインフルエンザの影響を最も受けたのは20歳から64歳の年齢層でしたが、最近のインフルエンザB型の伝播によって、高齢者と小児が大きな影響を受けました。

米国におけるインフルエンザの活動性は、前週に比べて減少傾向が続き、指標はインフルエンザのシーズンが終息に向かっていることを示しています。肺炎およびインフルエンザによって死亡した人の割合は流行閾値を下回りました。ILI(インフルエンザ様疾患)で受診した外来患者の割合は2.0%で、国の閾値と同じ水準でした。米国では、依然としてインフルエンザA(H1N1)pdm09が優勢でした

メキシコでは、インフルエンザの活動性は減少し続け、肺炎の割合はこの時期として予想される水準でした。ARI(急性呼吸器感染症)、ILI、SARI(重症急性呼吸器感染症)に関連して医療機関を受診した者の割合も前週に比べて減少しました。インフルエンザが陽性となった検体のうち、90%がインフルエンザA型で、インフルエンザA(H1N1)pdm09が70%、インフルエンザA(H3N2)が20%でした。残りの10%はインフルエンザB型でした。

ヨーロッパ

ヨーロッパでは、インフルエンザの活動性は、国によって強度、地理的広がり、傾向が異なりました。増加傾向を示した国は、オーストリア、アゼルバイジャン、クロアチア、エストニア、オランダ、カザフスタン、マルタ、モンテネグロ、ルーマニア、英国(北アイルランド)です。ギリシャでは、依然として活動性が高いと報告されましたが、その他の国の活動性は中等度または低いと報告されました。イタリアやスペインなどの南部と西部の国では、早期にピークに達したようであり、過去4週間で減少傾向にあると報告され、南部と西部ではインフルエンザのシーズンが終息した可能性があることを示しています。全体的に、ヨーロッパのほとんどの地域におけるILIとARIの受診率は減少しました。

全域で、インフルエンザA(H1N1)pdm09とインフルエンザA(H3N2)が伝播し、優勢な亜型は国によって異なりましたが、全体的には、ほぼ同じ割合でした。インフルエンザが陽性で、入院を要する患者では、インフルエンザA(H3N2)よりもインフルエンザA(H1N1)pdm09が多く検出されました。定点のサーベイランスで採取された検体ではインフルエンザA(H3N2)が多く検出されましたが、合計ではインフルエンザA(H1N1)pdm09が多く検出されました。インフルエンザのシーズンにおける様々な指標によれば、優勢なウイルスとシーズンの重症度は国によってかなり異なりました。

アフリカ北部、西アジア、中央アジア

中央アジアと西アジアでは、インフルエンザの活動性は全体的に減少しました。パキスタンでは、インフルエンザが陽性となった検体とILIの患者数が減少したと報告されました。イランでは、インフルエンザA型の活動性は減少し続けたものの、インフルエンザB型の活動性が増加し始めたと報告されました。その他の国におけるインフルエンザの活動性は依然として低い水準でした。

東アジア

東アジアでは、全体的なインフルエンザの傾向は国によって異なるものの、全体的な活動性が減少傾向にあります。インフルエンザA(H1N1)pdm09、インフルエンザA(H3N2)、インフルエンザB型ウイルスがともに伝播しましたが、インフルエンザB型の割合が増加しました。中国では、インフルエンザの活動性とILIの報告数は、北部と南部ともに、2月中旬に減少した後、過去2週間は安定した水準でした。香港では、インフルエンザの活動性は、3月上旬に減少しましたが、依然として高い水準が続いたと報告されました。モンゴルにおけるILIの活動性は、3月3日から3月9日の週で減少しましたが、この割合は流行閾値を超えています。日本では、ILIの患者数は減少したと報告されました。韓国では、インフルエンザの活動性は2月にピークに達した後、減少し続けたと報告されました。

熱帯地域

アメリカ大陸の熱帯地域

カリブ海諸国、中米、南米の熱帯地域におけるインフルエンザの活動性は、全体として低い水準でした。

中部アフリカの熱帯地域

アフリカでは、インフルエンザの活動性は全体的に低い水準でした。モーリシャスでは、インフルエンザの活動性が増加したと報告され、3種類の亜型すべてが検出されました。数か国でインフルエンザB型の活動性が報告されましたが、低い水準でした。

アジアの熱帯地域

東南アジア諸国におけるインフルエンザの活動性は全体的に減少し続け、カンボジア、ラオス、ベトナムは低い水準でした。タイでは、インフルエンザの活動性とILIの患者数は依然として増加し、優勢な亜型はインフルエンザA(H1N1)pdm09ですが、インフルエンザB型の検出割合が増加したと報告されました。

南半球の温帯地域

南半球におけるILIの活動性は、依然として比較的低い水準が続いており、インフルエンザA(H1N1)pdm09、インフルエンザA(H3N2)、インフルエンザB型ウイルスが低い水準で検出されました。

出典

Influenza update24 March 2014 - Update number 207
http://www.who.int/influenza/surveillance_monitoring/updates/latest_update_GIP_
surveillance/en/index.html