エボラウイルス疾患:背景とサマリー

2014年3月 WHO (原文〔英語〕へのリンク

WHOは、エボラウイルス疾患(EVD;以前はエボラ出血熱と呼ばれていました)の流行発生に対応して各国政府を支援しています。現在流行の原因はザイールエボラウイルスと非常に相同性の高い(98%)エボラウイルス株によるものと確定されています。これは西アフリカでこの疾患が確認された最初の事例です。初発症例はギニア南東部で報告されました。すぐに流行が始まりいくつかの地区とコナクリでEVD患者と死亡者が報告されました。少数の疑い症例と死亡者が近隣国でも報告され、その全員がギニアへの渡航歴がありました。確定症例はギニアとリベリアから報告されています。

最新の疑い症例、確定症例、死亡者についての報告はホームページを参照してください。(参照:http://www.who.int/csr/don/en/

エボラウイルス属はフィロウイルス科3属の中の一つで、フィロウイルス科には他にマールブルグウイルス属、クウェバウイルス属があります。エボラウイルス属には5種が属しています。ブンディブギョエボラウイルス(BDBV)、ザイールエボラウイルス(EBOV)、レストンエボラウイルス(RESTV)、スーダンエボラウイルス(SUDV)、タイフォレストエボラウイルス(TAFV)。BDBV、EBOV、SUDVの3種は、アフリカで、エボラ出血熱の大きなアウトブレイクを起こしてきました。一方で、RESTVとTAFVでは、これまで大きなアウトブレイクは起きていません。今回の流行の患者から採取された検体でEBOVが陽性になりました。

アフリカではオオコウモリがエボラウイルスの自然宿主と考えられています。ウイルスは野生動物から感染したオオコウモリと接触したヒトへ伝播されるか、コウモリの唾液や糞との接触で感染したサル、チンパンジーやゴリラ、ブタを介してヒトへ伝搬されます。

感染した動物を食肉解体する過程や血液、ミルク、生肉、半調理肉を摂取したりすることでヒトへ感染する可能性があります。

そして感染したヒトの血液、分泌物、他の体液に直接接触したり、汚染された注射針や環境中の他の物品と接触したりすることでヒトからヒトへ伝搬されます。

EVDは致死率が90%にもなりますが、重症の急性ウイルス性疾患で、しばしば急に発症し、極端な衰弱、筋肉痛、頭痛、吐き気や咽頭痛がみられます。その後、嘔吐、下痢、肝や腎機能不全がみられ、一部では内出血、外部出血がみられます。検査データではしばしば白血球や血小板減少、肝酵素の上昇が認められます。

ウイルスの感染から発症までの潜伏期間は、2日から21日です。感染したヒトの血液や分泌物にウイルスが存在する間は、他のヒトに感染する可能性があり、発症後61日間にもわたったという報告があります。

EVDの診断を考えるとき、他のもっとよくある疾患を見落としてはいけません;例えば、マラリア、腸チフス、細菌性赤痢、コレラ、レプトスピラ症、ペスト、リケッチア症、回帰熱、髄膜炎、肝炎、他のウイルス性出血熱です。

EVDの確定診断は検査室での検査によってなされます。患者検体は感染源としてのリスクが高いので、検査は生物学的封じ込めの最大の環境下で行われます。

ワクチンも、特異的な治療法もありません。重症例に対しては、集中的な支持療法が必要です。患者は、しばしば脱水症状を起こし、電解質を含んだ輸液や経口補水液の投与が必要です。

ヒトでの感染と死亡を減らすためには、エボラウイルスに感染する危険因子の認識の向上と個人ができる予防対策を行うことしかできません。無防備でのエボラ患者との濃厚接触は避けるべきです。家庭で患者の看護をする際には、手袋や個人予防具(個人予防具着装前、特に脱装後の手指衛生を含め)の適切な使用の訓練を行うべきです。通常の手指衛生は病院へ患者の見舞いへ行った後や家庭で病人の看護をするときにも必要です。

ヘルスケアワーカーの感染のほとんどが基本的な感染防御対策がとられていないことに起因すると報告されています。 どのような患者を介護するヘルスケアワーカーも標準的予防策を訓練すべきです。エボラウイルス感染が疑われる又は確定された患者を介護するときは、ヘルスケアワーカーは標準防予防策に加え、患者の血液や体液、またはそれらを含んでいる可能性のある状況への暴露を避けるための感染制御策をとるべきです。

エボラウイルス疾患で死亡した患者の遺体の埋葬への対応もウイルスを伝播する高いリスクがあります。死亡した患者は迅速かつ安全に埋葬されるべきです。

WHOは政府や自治体、技術的なパートナーと協調して、状況の評価と制御を支援するための専門家を配置しました。隔離施設や、移動検査室を設置しました;感染予防、制御、臨床的な管理ガイドラインが提供されました;注意喚起と教育キャンペーン、社会的動員、リスクコミュニケーションが流行地域で実施されています。

EVDが最近報告された地域へ滞在する人は感染時の症状に注意し最初の症状が出たらすぐに受診して下さい。

流行地域へ渡航し帰国した人が疑わしい症状で受診した場合、医師はEVDの可能性を考慮してください。マラリア、腸チフス、細菌性赤痢、コレラ、レプトスピラ症、ペスト、リケッチア症、回帰熱、髄膜炎、肝炎、他のウイルス性出血熱との鑑別診断が必要です。

WHOは、EVDを疑わせる症状のサーベイランスを含むサーベイランスの強化と、IHR(2005)に基づくヒト感染症の検知と報告を確実にするため、通常ではないパターンの注意深い観察と国家健康対策の継続を各国に奨励します。

WHOはこの事例に関し渡航や貿易の制限を推奨しません。

参考

WHO
Ebola virus disease:background and summary3 April 2014
http://www.who.int/csr/don/2014_04_ebola/en/