オンコセルカ症について (ファクトシート)

2014年3月 WHO (原文[英語]へのリンク

要点

  • オンコセルカ症は河川盲目症とも呼ばれ、回旋糸状虫(Onchocerca volvulus)という寄生虫によって起こります。
  • 人は、感染したブユ(Simulium)に繰り返し刺されて感染します。
  • 症状には、激しい掻痒や皮膚の外観が損なわれるほか、永久的な失明を含む視覚障害があります。
  • 感染者の99%以上がアフリカの31か国で発生していますが、ラテンアメリカやイエメンの一部地域でも発生しています。
  • アフリカでは、オンコセルカ症を排除するための中核的な戦略は、イベルメクチンを用いた地域主導型治療です。一方、アメリカ大陸の戦略は、イベルメクチンを用いた年2回の大規模な治療です。
  • 2013年の検証の結果、WHOはコロンビアのオンコセルカ症の排除を宣言しました。

オンコセルカ症は河川盲目症とも呼ばれ、回旋糸状虫(Onchocerca volvulus)という糸状虫によっておこる寄生虫症です。オンコセルカ症は感染したブユ(Simulium spp.)に繰り返し刺されることによって感染します。ブユは流れの速い河川で繁殖し、ほとんどが、人間が農業に頼っている肥沃な土地の近くにある僻村に生息しています。

回旋糸状虫の成虫は、人間の体内でミクロフィラリア(被鞘幼虫)を産み、そのミクロフィラリアは皮膚、眼、その他の臓器に移行します。メスのブユは、感染したヒトを吸血する際にミクロフィラリアを同時に取り込み、ブユの体内で回旋糸状虫が成長し、次にヒトを刺した際にヒトに感染します。

所見と症状

オンコセルカ症は眼と皮膚の疾患です。症状はミクロフィラリアによって引き起こされますが、ミクロフィラリアが体中の皮下組織を移行し、特に、ミクロフィラリアが死滅する際に激しい炎症反応を誘発します。感染した人は、激しい掻痒や様々な皮膚症状を呈します。ほとんどの場合、皮下に小結節が生じます。感染した人の中には、眼病変が生じ、視覚障害や永久的な失明に至ることもあります。

地理的分布

Map:Distribution of onchocerciasis, worldwide,2013 png, 620kb

オンコセルカ症は主に熱帯地域で発生しています。感染者の99%以上は、以下に示すサハラ以南のアフリカにある31か国で発生しています。アンゴラ、ベナン、ブルキナファソ、ブルンジ、カメルーン、中央アフリカ、チャド、コンゴ共和国、コートジボワール、コンゴ民主共和国、赤道ギニア、エチオピア、ガボン、ガーナ、ギニア、ギニア・ビサウ、ケニア、リベリア、マラウイ、マリ、モザンビーク、ニジェール、ナイジェリア、ルワンダ、セネガル、シェラレオネ、南スーダン、スーダン、トーゴ、ウガンダ、タンザニアまた、イエメンでも発生しています。

さらに、以下に示すラテンアメリカの5か国の12地域でもオンコセルカ症がみられています。
ブラジル、エクアドル、グアテマラ、メキシコ、ベネズエラ

予防、感染制御、排除計画

回旋糸状虫を予防するワクチンや医薬品はありません。

1974年から2002年にかけて、オンコセルカ症対策計画(Onchocerciasis Control Program; OCP)によって西アフリカのオンコセルカ症は制御されました。主に、ヘリコプターや航空機でブユの幼虫に対する殺虫剤スプレーを散布するというベクター・コントロールを行っていましたが、1989年以降、イベルメクチンの大規模な配布が強化されました。

OCPによって、4,000万人の感染を予防し、60万人の失明を防ぎ、1,800万人の小児が疾患と失明の脅威に晒されずにすみました。また、2,500万ヘクタールの土地が耕され、人が居住し、農業生産が行えるようになり、1年間に1,700万人の食事を賄うことが可能となりました。

1995年に、依然としてオンコセルカ症が常在していた国におけるオンコセルカ症の制御を目的として、アフリカオンコセルカ症対策計画(the African Programme for Onchocerciasis Control; APOC)が進められました。その計画の主な戦略はイベルメクチンを用いた継続的な地域主導型治療と、必要に応じた環境に悪影響を与えない方法でのベクター・コントロールでした。

2010年には、イベルメクチンを用いた継続的な地域主導型治療(community-directed treatment with ivermectin; CDTI)を実施した16か国で、約7,600万人にイベルメクチンが配布されました。計画を感染制御から排除に移行させるためには、さらに、今後数年間で少なくとも1,500万人にイベルメクチンを配布する必要があります。

アメリカ・オンコセルカ症排除計画(the Onchocerciasis Elimination Program of the Americans; OEPA)は1992年に開始されました。その目的は、2012年までにイベルメクチンを用いた年2回の大規模な治療により、アメリカ大陸全域でオンコセルカ症による眼疾患の罹患と感染の伝播を排除することです。2006年に感染者が発生している全13地域で85%以上の人に治療が行われ、2011年末までに、13地域のうち10地域で疾患の伝播が止まりました。

国際的関係機関の支援により、感染地域の住民の大規模な治療が成功し、コロンビアでは2007年に、エクアドルでは2009年に、それぞれこの疾患の伝播が阻止されました。メキシコとグアテマラでも2011年に感染の伝播を止めることができました。排除に向けた取り組みは現在、ブラジルとベネズエラに住むヤノマミ族に焦点が当てられています。

2013年4月5日、WHOの事務局長は、コロンビアがオンコセルカ症の排除を達成したことを承認する公式文書を出しました。コロンビアの大統領は2013年7月29日にボゴタで開催された式典で、このWHOの証明を公表しました。コロンビアはその後、WHOがオンコセルカ症の排除を証明し宣言した世界で最初の国となっています。

治療

WHOは、オンコセルカ症の治療として、約10年から15年間、イベルメクチンを少なくとも年1回投与することを推奨しています。回旋糸状虫とロアロアという別の糸状虫がともに常在しているカメルーン、中央アフリカ共和国、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国、ナイジェリア、南スーダンでは、重篤な副反応が起こったときの管理を行うため、メクチザンに関する専門家会議(the Mectizan Expert Committee; MEC)とAPOCの推奨に従うことが勧められます。

世界保健機関(WHO)の対応

WHOはAPOCの実施機関です。WHO本部は、行政研究や、技術的研究、運営上の研究を支援しており、WHOアフリカ地域事務局は、APOCの管理を行っています。WHOはOEPAのパートナーシップを通じて、常在国や国際的な関係機関と連携しています。

WHOは、現在、イエメン保健省、世界銀行、その他の国際的な関係機関と連携して、イエメンの排除計画を推進しています。

出典

WHO.Onchocerciasis.Fact sheet N°374. March 2014.
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs374/en/