ベクター媒介性疾患について (ファクトシート)

2014年3月 WHO (原文[英語]へのリンク)

概要

要点

  • ベクター媒介性疾患は全感染症の17%以上を占め、年間100万人以上が死亡します。
  • デング熱だけでも、100か国以上で25億人以上が感染のリスクにさらされています。
  • 世界中で毎年60万人以上がマラリアで死亡し、そのほとんどは5歳未満の子どもです。
  • シャーガス病、リーシュマニア症、住血吸虫症などの他の疾患に、世界中で何億人もが罹患しています。
  • これらの疾患の多くは予防方法を知ることで防ぐことが可能です。

主なベクター(媒介生物)と媒介される疾患

ベクター(媒介生物)は生物体で、ヒト-ヒト間、または動物からヒトへ感染症を伝播します。これらの媒介生物の多くは吸血性の昆虫で、感染した宿主(ヒトまたは動物)から吸血する時に疾患を起こす微生物を取り込みます。その後、続いて新しい宿主を吸血する時に、その微生物を注入して感染させます。

蚊は最もよく知られているベクターです。他には、ダニ、ハエ、サシチョウバエ、ノミ、サシガメ、淡水に生息する巻貝があります。

  • Aedes ヤブカ
    • デング熱
    • リフトバレー熱
    • 黄熱
    • チクングニア熱
  • Anopheles ハマダラカ
    • マラリア
  • Culex イエカ
    • 日本脳炎
    • リンパ性フィラリア症
    • ウエストナイル熱
  • サシチョウバエ
    • リーシュマニア症
    • サシチョウバエ熱(phelebotomus fever)
  • ダニ
    • クリミア・コンゴ出血熱
    • ライム病
    • 回帰熱(ボレリア症)
    • リケッチア症(紅斑熱とQ熱)
    • ダニ媒介性脳炎
    • 野兎病
  • サシガメ
    • シャーガス病(アメリカトリパノソーマ症)
  • ツェツェバエ
    • 睡眠病(アフリカトリパノソーマ症)
  • ノミ
    • ペスト(ノミがネズミからヒトへ伝搬)
    • リケッチア症
  • ブユ
    • オンコセルカ症(河川盲目症)
  • 淡水巻貝
    • 住血吸虫症(ビルハルツ住血吸虫症)

ベクター媒介性疾患

ベクター媒介性疾患は、病原菌や寄生虫によってヒトに起こる疾患です。マラリア、デング熱、住血吸虫症、ヒトアフリカトリパノソーマ症、リーシュマニア症、シャーガス病、黄熱、日本脳炎、オンコセルカ症のようなベクター媒介性疾患に、世界中で毎年10億人以上が罹患し、100万人以上が死亡しています。

ベクター媒介性疾患はすべての感染症疾患の17%以上を占めます。

これらの疾患の分布は環境要因と社会的要因の複雑な力学により決定されます。

旅行や貿易の国際化、無計画な都市化、気候の変化のような環境問題は、近年の疾病伝播に重大な影響を与えています。デング熱、チクングニア熱、ウエストナイル熱ウイルスのようないくつかの疾患が、以前は未確認だった国に発生しています。

気温と雨量の変動による農業の変化は、ベクター媒介性疾患の伝播に影響することがあります。気候情報は、マラリアやその他の気候感度の高い疾患の監視と分布の予測、より長期間の傾向に利用することができます。

WHOの対応

ベクター媒介性疾患のWHOの対応は以下の通りです。:

  • ベクターコントロールと感染からのヒトの防御の最良のエビデンスを提供する;
  • 各国に技術的支援と助言を提供し、それにより効果的に症例と集団発生を管理できるようにする;
  • 報告システムを改良し、各国が疾患の真の負担を把握するための支援をする;
  • 世界中のいくつかの協力センターとともに、臨床的管理、診断、ベクターコントロールの訓練を提供する;
  • 例えば殺虫剤製品や散布技術のような、ベクターを制御するためや疾患を取り扱うための新しいツールの開発。

ベクター媒介性疾患において重要な要素は、行動の変化です。住民が蚊、ダニ、昆虫、ハエ、その他のベクターから自分自身や地域の防御方法を知るために、WHOはパートナーと連携し、教育を提供し認識が改善されるように働きかけています。

シャーガス病、マラリア、住血吸虫症、リーシュマニア症のような多くの疾患に対して、WHOは、寄付または助成薬剤を用いて制御プログラムを開始しています。

水や衛生設備へのアクセスは、疾患の制御と排除において非常に重要な要因です。WHOはこれらの疾患を制御するために、多くの様々な政府部門と連携しています。

各論

マラリア

マラリアは感染したハマダラカによって媒介される寄生虫感染症で、ハマダラカは主に夕暮れから夜明けに吸血します。世界中で、ベクターと認められた60種類以上のハマダラカがあります。人間では、マラリアは4種類の寄生虫によって起こります。:熱帯熱マラリア原虫Plasmodium falciparum、三日熱マラリア原虫Plasmodium vivax、四日熱マラリア原虫Plasmodium malariae、卵形マラリア原虫Plasmodium ovaleです。

最新のWHOの推計によりますと、毎年60万人以上がマラリアで死亡し、そのほとんどは5歳未満の小児です。世界中で、マラリアの感染は97か国で発生し、34億人が疾患のリスクにさらされています。

この疾患の負荷は主にサハラ以南のアフリカに集中しており、年間のマラリアによる死亡者の推計90%がここで発生しています。

医療機関へのアクセスが制限されているへき地の、貧しく感染に弱い社会が最も深刻です。マラリアによる死亡者のうち、10人中4人は最も深刻な2か国、すなわちコンゴ民主主義共和国、ナイジェリアに住んでいます。

マラリアは、最初は発熱、悪寒、インフルエンザ様症状を起こします。もし治療されなければ、重篤な合併症を起こし、死亡する可能性があります。マラリアの症状は蚊に刺されてから通常7日以降に出現します。

マラリアの感染を避ける最も良い方法は、長期作用型殺虫剤含浸蚊帳の常時使用、残留殺虫剤の屋内噴霧、WHOが勧告する予防治療を使うことです。

Fact sheet on malaria

デング熱

デング熱は世界で最も急速に広がっている蚊媒介性ウイルス疾患です。ネッタイシマカAedes aegyptiはデング熱の主なベクターですが、他の蚊とは異なり、日中に刺します。ヒトスジシマカAedes albopictusはデング熱の第2のベクターですが、より涼しい地域で生息することができます。ウイルスには4つの近い関連血清型がありデング熱を起こしますが、感染後は終生免疫ができます。

過去50年で、感染は新しい国々に地理的に広がり発生は30倍に増加し、この10年で都会から農村に広がりました。

25億人以上の人々-世界人口の40%以上-が現在デング熱のリスクにさらされています。WHOは現在、毎年世界中で5千万人から1億人がデング熱に罹患していると推定しています。

重症型デング熱(デング出血熱としても知られています)はほとんどのアジアやラテンアメリカの国々の熱帯や亜熱帯地域でみられます。年に推計50万人が重症型デング熱で入院し、これらの人の多くは小児ですで、この患者の約2.5%は死亡します。

デング熱の症状は発熱、重篤な頭痛、眼の奥の痛み、筋肉痛、関節痛、リンパ節腫脹、発疹です。デング熱には予防接種や特異的な治療法はありません。デング熱に罹患した人は休息をとり、水分を十分に補給し、パラセタモールを使用して熱を下げます。

重症型デング熱(デング出血熱)は発熱、腹痛、持続する嘔吐、出血、呼吸困難が特徴としてあげられます。主に小児では、致死的な合併症となり得ます。

重症型デング熱は、疾患の影響や進展に関して経験のある医師と看護師による医療により救命でき、20%以上の致死率を1%未満に減少させることができます。重症型デング熱の治療では、患者の体液量の管理が非常に重要です。

デング熱ウイルスの伝播を下げる唯一の方法は媒介蚊を制御し、蚊に刺されることを防御することです。

Fact sheet on dengue

チクングニア熱

チクングニア熱もシマカに媒介されるウイルス性熱帯疾患です。

比較的珍しく、あまり報告されていません。この疾患はアフリカ、アジアと、カリブ海、インド洋、太平洋の島々でみられます。

典型的な症状は発熱、皮疹、身体の自由を奪う関節痛を伴う急性疾患で、この関節痛は数週間持続することがあります。この関節痛はチクングニア熱とデング熱を区別する点ですが、それ以外は同じ媒介蚊、症状、地理的分布を共有しています。

この疾患の治療法や市販の予防接種はありません。ほとんどの患者は完全に回復しますが、場合によっては関節痛が数ヶ月や数年も持続することがあります。

デング熱のように、チクングニア熱ウイルスの伝播を減ずる唯一の方法は、媒介蚊を制御し、蚊に刺されることを防御することです。

Fact sheet on chikungunya

黄熱

黄熱はシマカによって媒介される急性ウイルス性出血性疾患です。名前の「黄色」は一部の患者で黄疸を来すことに由来します。

毎年世界中で20万人の黄熱患者が発生し、そのうち3万人が死亡していると推定されています。

黄熱の原因ウイルスはアフリカとラテンアメリカの熱帯地域に常在しており、両地域には9億人以上の住民がいます。黄熱の常在しない国にはわずかな輸入症例があります。

疾患の症状には発熱、背部の顕著な筋肉痛、頭痛、悪寒、食欲減退、嘔気、嘔吐があります。ほとんどの患者は回復し、3-4日後に症状は消退します。

しかし患者の15%は初期寛解の24時間以内に、より中毒期である第2期に移行します。再び高熱となり、いくつかの器官が冒されます。患者は急速に黄疸が出現し、嘔吐と内出血を伴う腹痛を訴えます。患者の半数は10-14日以内に死亡します。

黄熱に特異的な治療法はなく、脱水、呼吸不全、発熱に対する支持療法があるだけです。

予防接種は黄熱を予防する最も重要な方法です。黄熱ワクチンは安全で手頃な価格で非常に有効です。1回の黄熱ワクチンで黄熱に対し生涯予防するために十分です。

Fact sheet on yellow fever

日本脳炎

日本脳炎ウイルスは感染したイエカが媒介しヒトに伝播します。

毎年5万人の患者が発生し、そのうち1万人が死亡していると推定されていますが、そのほとんどは5歳未満の子どもです。

アジア全域で発生しており、東は西太平洋諸島から西はパキスタン国境まで、北は韓国から南はパプアニューギニアまで発生しています。

ほとんどのヒトは感染しても無症状か軽度の症状しかでません。しかし、感染者のうちわずかな割合で、急に出現する頭痛、高熱、見当識障害、昏睡、振戦、痙攣発作を伴う脳の炎症(脳炎)が出現します。重症患者の4分の1は死亡することがあり、その生存者の30%には中枢神経障害が残ります。

日本脳炎ウイルスの伝播は本来地方の農業地域、特に水田の周辺で起こりますが、都会の中心部でも起こることがあります。アジアの温帯地域では、ウイルスの伝播は季節性です。

ウイルスは、蚊、特にコガタアカイエカCulex tritaeniorhynchusとブタや水鳥のような動物の間で伝播します。ヒトは偶発的または最終の宿主です。なぜなら通常、蚊が吸血するときに感染させるには十分高い血中のウイルス濃度にならないからです。

この疾患には特異的な治療法はありません。;支持療法と合併症の管理でいくらか軽快することがあります。

日本脳炎ワクチンは、この疾患に対する唯一の最も効果的な予防法です。

Fact sheet on Japanese encephalitis

リンパ性フィラリア症

リンパ性フィラリア症は、通常象皮病として知られていますが、細長いフィラリア寄生虫が蚊によってヒトに媒介され感染します。

リンパ性フィラリア症は異なる種類の蚊によって媒介されます、例えば、イエカ;広範囲な都市部と準都市部地域、ハマダラカ;主に農村地域、シマカ;主に太平洋諸島やフィリピンの一部;により媒介されます。また、3種類の寄生虫があります(症例の90%を占めるバンクロフト糸状虫、マレー糸状虫とチモール糸状虫です)。

顕微鏡的微小寄生虫がリンパ系組織に留まり、免疫機能障害を起こします。虫は人の体内で6~8年生き、生活史の中で何百万ものミクロフィラリア(小幼虫)を産み、ミクロフィラリアは血中を循環します。

現在、1億2,000万人以上の人が感染しており、約4,000万人がこの疾患による外観の変形、障害を被っています。世界的に、2,500万人以上の男性が生殖器疾患に苦しんでおり、1,500万人を超える人がリンパ浮腫で苦しんでいます。

感染しても多くの場合は無症候性ですが、免疫機能障害を起こすのと同時に、リンパ系組織と腎臓に軽い障害を起こします。皮膚、リンパ節、リンパ管を含む局所炎症の急性発作は、しばしば慢性のリンパ浮腫(組織腫脹)を伴います。

感染者の約65%はWHO東南アジア地域、30%はアフリカ地域に住んでおり、残りは他の熱帯地域に住んでいます。

血中から寄生虫を駆除するために推奨される治療は、ジエチルカルバマジンまたはイベルメクチンのどちらかと一緒にアルベンダゾールを単回投与することです。リスクのある地域の住民の少なくとも65%を5年以上治療すれば、感染の伝播を止めることが達成できます。

Fact sheet on lymphatic filariasis

リーシュマニア症

リーシュマニア症は感染したメスのサシチョウバエに刺され、寄生虫がヒトに伝搬されて発生します。

リーシュマニア症には3種類の主な病型があります。内臓リーシュマニア症(カラ・アザールとしても知られ、最も重篤な病型です)、皮膚リーシュマニア症(最も頻度が高い病型です)、皮膚粘膜リーシュマニア症があります。

過去10年間で、疾患はかなり広がっています。1年間に約130万人の新たな患者が発生し、約3万人が死亡しています。

リーシュマニア症はアメリカ大陸、東南アジア、東アフリカ、西アジア、中央アジア、地中海地域でみられます。この疾患は社会の最も貧しい人々に感染し、低栄養、人口の移動、粗末な家屋、免疫の脆弱、資源の不足と関連しています。その広がりは移住や森林開発、ダムの建設、潅漑、都市化などの環境の変化に関係しています。

リーシュマニア症の病型により、発熱、体重減少、肝脾腫、貧血、発疹、皮膚潰瘍を起こすことがあります。

リーシュマニア症は治療、治癒が可能です。早期の診断治療は、疾患の広がりを抑え、障害や死亡を防ぎます。リーシュマニア症の予防や制御には、サシチョウバエの刺咬に対する住居の状況と個人的防御を改善し、サシチョウバエと動物の宿主(犬や猫を含む)の制御を含む戦略を組み合わせる必要があります。

Fact sheet on leishmaniasis

クリミア・コンゴ出血熱

クリミア・コンゴ出血熱はダニ媒介性ウイルス疾患で感染者の30%が死亡します。

ウイルスはダニの刺咬か、牧牛、羊、山羊、ダチョウのような感染動物の血液や組織の接触を介して伝搬されます。

ヒト-ヒト感染は、感染者の血液、臓器や他の体液の濃厚接触によって起こることもあります。

ウイルスはアフリカ、バルカン半島、アジアに存在します。

発症は突然であり、発熱、筋肉痛、めまい、項部痛と項部硬直、背部痛、頭痛、眼痛、羞明(眼が光に対して通常よりも過敏である状態)が起こります。また、早期に悪心、嘔吐、下痢、腹痛、咽頭痛が起こることもあり、続いて気分の変動が激しくなり、錯乱状態になることもあります。その他の所見としては、頻拍(心拍数の増加)、発疹、リンパ節腫脹、肝不全と腎不全があります。

感染者の1/3以上が発症第2週目以内に死亡します。

クリミア・コンゴ出血熱の治療の主なアプローチは対症療法です。抗ウイルス薬リバビリンが有効であることが示されています。

現在ヒトに広く使用できる安全で有効なワクチンはありません。

ヒトへの感染を減らす最善の方法は、ダニの侵入を制御し、ダニの刺咬を防ぐことです。動物の屠殺や解体を行う人は防護服を着用すべきで、動物は屠殺する2週間前に殺虫剤で治療すべきです。

医療従事者は、クリミア・コンゴ出血熱の疑いのある人の医療に従事するときは、感染制御のためにWHOの勧告に従うべきです。

Fact sheet on Crimean-Congo haemorrhagic fever

シャーガス病

シャーガス病は、Trypanosoma cruzi(T.cruzi)という原虫が寄生することによって起こる疾患で、死亡することもあります。

主にサシガメ(”kissing bugs”という名で知られています)の糞によってヒトに感染します。感染者からの輸血や臓器移植時に感染したり、妊娠中や出産時に母親から新生児に感染することがあります。

世界中で、約700万人から800万人が感染していると推定されており、その大部分はシャーガス病が常在しているラテンアメリカで発生しています。輸血や臓器移植を通して移住者によりほかの大陸に広がっています。

ほとんどの患者では、症状はないか軽度ですが、発熱、頭痛、リンパ節の腫脹、蒼白、筋肉痛、呼吸困難、浮腫、腹痛、胸痛がみられることもあります。サシガメに刺された人の50%未満で最初の可視的病変として、皮膚病変または紫色の一側性眼瞼浮腫がみられます。

この疾患は後に慢性化し、心疾患や消化器疾患や、または神経疾患を起こすことがあります。後年に心筋障害に進展し、突然死や心不全を来すことがあります。

シャーガス病にはワクチンはありません。

もし感染後速やかに投薬されれば、寄生虫を殺虫する治療は有効です。

血液や臓器の提供者のスクリーニングは、母親が感染者である乳幼児のスクリーニングと同様に、感染の拡大を防ぎ、早期の診断治療を可能にします。

家屋の噴霧や蚊帳の使用などのベクターコントロールは、ラテンアメリカではシャーガス病の最も効果的な予防法です。

Fact sheet on chagas disease

ライム病

ライム病(Lyme Borreliosis)はボレリア菌によって起こり、感染したシカのダニ(lxodes種)の刺咬で媒介されます。多くの種類のほ乳類が感染し、齧歯類とシカは重要な保菌宿主の役割を果たします。

この疾患の最初に確認された集団発生は1975年にアメリカ合衆国、コネチカットで起こりました。米国疾病対策予防センターによる現在の有病率は、アメリカ合衆国の10万人あたり7.9人と推定されています。

1980年代半ば以来、この疾患はいくつかのヨーロッパ諸国で報告されるようになりました。ライム病はアジア、北西、中央、東ヨーロッパ、アメリカ合衆国の農村地域で発生しています。現在では、北半球で最も一般的なダニ媒介性疾患です。

農村地域に住む人々や訪れる人々、特にキャンパーやハイカーは最もリスクがあります。もし咬まれた場合、ダニはできるだけ早く除去する必要があります。

ライム病の症状は発熱、悪寒、頭痛、疲労感、筋肉痛、関節痛があります。発疹はダニに刺咬された部位にしばしば出現し、体の他の部位に広がる前に、中央に透明帯を伴って輪状に徐々に広がります。もし放置すれば、感染は関節や心臓や中枢神経系に波及することがあります。関節炎は、発症後2年まで進展することがあります。

ライム病のほとんどの症例は、一連の抗生剤で治療できます。

住血吸虫症

住血吸虫症は慢性の寄生虫疾患で、吸血虫(吸虫類)によって起きます。

ヒトは、淡水巻貝から放出された寄生虫の幼虫で汚染された水に接触すると、幼虫が皮膚を貫通して感染します。

体内で幼虫は成長して成虫の住血吸虫になります。成虫は血管内に寄生して、そこでメスが卵を産みます。いくつかの卵は糞便中や尿中に排出され体外で寄生虫の生活環を継続します。他は体組織に留まり、免疫反応や、組織や血管に進行性損傷を起こします。

2012年には、4,210万人以上の人が住血吸虫症の治療を受けました。

住血吸虫症は、ほとんどはアフリカの、熱帯および亜熱帯地域の78か国で見られます。農業、家事、レクレーション活動で感染した水に暴露する人々は、感染のリスクがあります。

住血吸虫症の症状は、虫卵に対する体の反応によって起き、住血吸虫自体では起きません。

腸住血吸虫症は、腹痛、下痢、血便、肝脾腫、腹水貯留、腹部血管の高血圧を起こすことがあります。

泌尿生殖器住血吸虫症は、血尿や膀胱、尿管、および生殖器の病変と線維化、腎障害および時に膀胱癌を起こします。不妊を起こすこともあります。

小児では、住血吸虫症は貧血と発育障害を起こし、学習力が落ちることがあります。

住血吸虫症の制御は、リスクのある集団の定期的な大規模治療、安全な水へのアクセス、衛生施設の改善、衛生教育や巻貝の制御に基づいています。

Fact sheet on schistosomiasis

出典