世界におけるインフルエンザの流行状況について (更新8)

2014年5月5日 WHO (原文[英文]へのリンク

要約

世界的にみて、北半球でのインフルエンザシーズンはほとんどの国でシーズンオフのレベルに近づきました。ほとんどの地域で、インフルエンザBがシーズン後半に検出される大部分を占めましたが、ヨーロッパでは例外的にインフルエンザBの活動性は一貫して低いままでした。

  • 北米におけるインフルエンザのレベルは、緩徐に低下しました。
  • ヨーロッパでは、インフルエンザ活動性は減少し続け、ほとんどの国ではシーズンオフのレベルに近づいているかまたは終息しました。インフルエンザA (H3N2)が優勢なウイルスで、続いてA(H1N1)pdm09で、インフルエンザBは非常に低い検出率でした。東ヨーロッパではインフルエンザ活動性は低下しましたが、南西ヨーロッパや北ヨーロッパではわずかに高いままで、シーズン初期にピークに達していました。
  • 東アジアでは、インフルエンザの活動性はほとんどの国でシーズンオフのレベルになり、インフルエンザBが、検出されたインフルエンザの大部分を占めていました。
  • アジアの熱帯地域では、ほとんどの国でインフルエンザの活動性は低下し続けましたが、ばらつきが見られました。
  • 北アフリカと西アジアでは、ほとんどの国でインフルエンザの活動性は低いままで、検出されたウイルスでは、インフルエンザBが優勢でした。
  • 南半球では、インフルエンザの活動性は低いままで、散発的に検出されていました。
  • 鳥インフルエンザウイルスA(H7N9)に人への感染に関する更新情報は、WHOのウェブサイトを参照してください。http://www.who.int/influenza/human_animal_interface/influenza_h7n9/

北半球の温帯地域

北米

北米では、全体のインフルエンザ活動性はゆっくり低下しました。インフルエンザBが検出された株の大部分を占めており、シーズン早期、インフルエンザA(H1N1)pdm09が最も頻繁に検出された時点からの変化がみられました。しかし、全体としての活動性は低下し、2013-2014シーズンで最も高い頻度で検出されたのはインフルエンザA(H1N1)pdm09のままでした。活動性は低いままで、シーズンのピークは越えましたが、シーズン後半に増加したインフルエンザBの循環は低下の速度を緩め、いくつかの地域でシーズンがわずかに長引いています。

カナダでは、インフルエンザの活動性は年間のこの時期に予想されるレベルの範囲内ですが、インフルエンザB陽性となる検体の割合が増加し続けています。インフルエンザA(H1N1)pdm09とA(H3N2)の検出はこの数週間で最小となり、3月の中旬から検出される大部分がインフルエンザBでした。インフルエンザBは65歳以上と5歳から19歳の年齢層で大きな割合を占め、一方インフルエンザA(H1N1)pdm09は20歳から64歳未満の年齢層で大きな割合を占めました。

米国では、ほとんどの地域でインフルエンザの活動性がわずかに低下し続けましたが、シーズン後期のインフルエンザBの増加は失速し減少へ転じています。カナダと同様に米国でも、この数週間でインフルエンザBの検出割合が増加しました。肺炎およびインフルエンザに起因する死亡割合は流行状況とする閾値を下回っており、ILI(インフルエンザ様疾患)で受診した外来患者の割合は1.6%から1.4%へ減少し、国の基準値である2.0%より低いレベルでした。

メキシコでは、引き続きインフルエンザの活動性は低下し続け、肺炎の割合はこの時期として予想されるレベルの範囲内でした。米国やカナダと比較して、メキシコではシーズン後期のインフルエンザBの増加は低く、全体での活動性もすぐに減少しました。検査でインフルエンザ陽性となる検体数は非常に少数で、国内のインフルエンザシーズンが終了しインフルエンザの活動性もシーズンオフのレベルに達したことを示唆しました。

ヨーロッパ

ヨーロッパでは、インフルエンザの活動性は、全体的に低下しました。ほとんどの国でインフルエンザの活動性は安定しているか、低下傾向か、低強度でした。現在インフルエンザA(H3N2)が優勢に循環していると報告されましたが、A(H1N1)pdm09もともに低レベルで循環し続けていました。インフルエンザBはほとんど検出されず、主に東ヨーロッパからの報告でした。北部と南西部ヨーロッパでは、検出は減少し続け活動性は低いままでした。東ヨーロッパでは、シーズンの始まりがわずかに遅いと報告されましたが、同様に活動性の低下がみられました。定点でのILI/ARI(急性呼吸器感染症)検体でインフルエンザウイルスが陽性となる割合はわずかに低下し、2012-2013と2011-2012シーズンの同じ週にみられたレベルよりも低い値でした。全体的に、ヨーロッパにおける2013-2014のシーズン中に定点でインフルエンザが陽性となる検体数はこれまでの年より一貫して少数でした。南ヨーロッパの例外はありますが、ILIの割合は一般的にこれまでのシーズンよりも低く、今シーズンは例年よりも低い強度であったと示唆されました。

北アフリカ、西アジア、中央アジア

中央アジアと西アジアでは、ほとんどの国でインフルエンザの活動性は低いままでした。イランおよびトルコでインフルエンザBウイルスの検出が引き続き報告されましたが、低レベルでした。イスラエルでのインフルエンザ検出は低下し、活動性はシーズンオフのレベルに近づいているようです。

東アジア

東アジア地域では、インフルエンザの活動性は低下し続けました。インフルエンザBウイルスが優勢でしたが、低いレベルでインフルエンザA(H1N1)pdm09およびA(H3N2)が検出されました。

中国では、インフルエンザの活動性は減少を続け、シーズンオフの水準に近づきました。インフルエンザが陽性となるILI検体の割合は中国の北部と南部の両方で低下しました。中国では、北部および南部の両地域でインフルエンザBが優勢であり、インフルエンザA(H1N1)pdm09およびA(H3N2)の検出数は低値でした。

モンゴルではILIの活動性は大幅に低下し、モンゴルの許容値上限の60%以下になりました。検体に占めるインフルエンザ陽性の割合と入院を要した肺炎患者数もまた減少しました。東アジア地域内の他の地域と同様に、インフルエンザBが優勢に検出されたウイルスでした。日本では、インフルエンザの活動性がシーズンオフのレベルで、最小限の陽性検体が検出されました。韓国では、インフルエンザの検出は減少し続け、インフルエンザBが主に循環しているウイルスでした。全体的にILIで定点医療機関を受診する患者数の割合は国の基準値である12.1%を下回り12月下旬に基準値を超えて以来、初めて9.6%になりました。ラオスとベトナムは4月の初めにインフルエンザの活動性が高まったと報告しました。

熱帯地域

アメリカ大陸の熱帯地域/中米とカリブ海諸国

中米、南米の熱帯地域におけるインフルエンザの活動性は、全体として低いレベルでした。フランス領ギアナとグアドループではすでにシーズンが始まったと報告されましたが、引き続き高いILI活動性がみられます。

中央アフリカの熱帯地域

アフリカ熱帯地域では、モーリシャスを除きインフルエンザの活動性は全体的に低いレベルでした。西アフリカと中央アフリカでは低いレベルでインフルエンザBが循環しました。モーリシャスではインフルエンザA (H1N1)pdm09ウイルスが高い頻度で検出されましたが、全体的にはインフルエンザの活動性は低下したと報告されました。

アジアの熱帯地域

ほとんどの東南アジア諸国では、インフルエンザの活動性は低下しているか低いレベルにとどまりました。タイでは活動性が低下し、ILI活動性のレベルとインフルエンザの検出は過去2週間で順調に低下しているようです。インフルエンザA (H1N1)pdm09およびインフルエンザBウイルスが循環を続けていました。タイの今期インフルエンザシーズンは例年に比べ多数の重症例が認められました。ブータンでは活動性のピークは過ぎて陽性検体のレベルは低下したようですが、この数週間にインフルエンザの活動性が高まりました。主に検出されるのはインフルエンザA (H3N2)およびインフルエンザBでした。ブータンでのインフルエンザ陽性の検体はいくらか減少したにもかかわらず、ILI活動性は増加し続けました。インドではこの数週間、いくらか低いレベルでのインフルエンザBウイルスの循環が報告されました。

南半球の温帯地域諸国

南半球におけるILIの活動性は、比較的低いままで、インフルエンザA(H1N1)pdm09、A (H3N2)、インフルエンザBが散発的に検出されました。オーストラリアでは、2週間前と比較しILI活動性が増加しましたが低いレベルのままです。太平洋諸島のILI活動性は様々で、いくつかの諸島では増加が認められました。

出典

Influenza update05 May 2014 - Update number 210

http://www.who.int/influenza/surveillance_monitoring/updates
/latest_update_GIP_surveillance/en/