世界におけるインフルエンザの流行状況について (更新10)
2014年6月2日 WHO(原文[英語]へのリンク)
要約
世界的にみて、インフルエンザシーズンはほとんどの国でシーズンオフのレベルでした。
- 北米におけるインフルエンザのレベルは、インフルエンザB型の循環がまだ検出されましたがシーズンオフのレベルでした。
- ヨーロッパでは、ほとんどの国ではシーズンオフのレベルでした。
- 東アジアでは、インフルエンザの活動性はほとんどの国でシーズンオフのレベルに近づき、インフルエンザB型ウイルスが低いレベルで検出されました。
- 南アジアと東南アジアでは、ほとんどの国でインフルエンザの活動性は低下し続けましたが、イランでは例外的にわずかな増加がみられました。北アフリカと西アジアでは、ほとんどの国でインフルエンザの活動性は低いままでした。
- 南半球では、インフルエンザの活動性は低いままでしたが、南米の温帯地域のいくつかの国ではインフルエンザ様疾患(ILI)が増加しインフルエンザの検出がわずかにみられました。
- FluNet報告(協定世界時間6月2日12:25)によりますと2014年第19週から第20週(5月4日から5月17日)までに86の国・地域にある国のインフルエンザ・センター(NICs)やその他の国内のインフルエンザ研究施設からデータが報告されました。WHO世界インフルエンザサーベイランス及び対応システム(GISRS)の検査施設では、31,706以上の検体を検査しました。インフルエンザが陽性となったのは2,920検体で、このうち1,417検体(48.5%)がインフルエンザA型で、1,503検体(51.5%)がインフルエンザB型でした。亜型が解析されたインフルエンザA型ウイルスのうち、241(29.8%)がインフルエンザA(H1N1)pdm09、568検体(70.2%)がインフルエンザA(H3N2)でした。解析されたインフルエンザB型ウイルスのうち、32検体(94.1%)がB-山形系統で、2検体(5.9%)がB-ビクトリア系統でした。
- 鳥インフルエンザウイルスA(H7N9)の人への感染に関する更新情報は、WHOのウェブサイトを参照してください。http://www.who.int/influenza/human_animal_interface/influenza_h7n9/
北半球の温帯地域
北米
北米では、全体のインフルエンザ活動性は徐々に低下し、シーズン後半のインフルエンザB型も同様にピークに達したようです
カナダでは、インフルエンザの活動性は年間のこの時期に予想されるレベルの範囲内で、インフルエンザB型ウイルスの循環が続いていました。インフルエンザ様疾患(ILI)とインフルエンザB型が陽性となる検体の割合はさらに減少しました。
米国では、インフルエンザの活動性は低下し続け、ILIの割合はシーズンオフのレベルになりました。しかしインフルエンザB型のシーズン後期の循環がいくらかみられました。肺炎およびインフルエンザに起因する死亡割合は流行状況とする閾値を下回ったままでした。
メキシコでは、インフルエンザの活動性はこの時期として予想されるレベルの範囲内で、インフルエンザウイルスの検出も低レベルでした。肺炎の割合と急性呼吸器感染症(ARI)活動性は前週に比べ低下しました。検査で陽性となった検体のうち41.7%がインフルエンザA型ウイルス(32.0%がA(H1N1)pdm09、60.0%がA(H3N2)、8.0%が型不明)で、58.3%がインフルエンザB型ウイルスでした。
ヨーロッパ
ヨーロッパでは、インフルエンザの活動性は全体的に低下し、ほとんどの国でシーズンの終息が示唆されました。この地域ではインフルエンザA型が2013/2014シーズンで優勢なウイルスのままでした。ほとんどの国でILIとARIの受診率はシーズンオフのレベルに近づいています。重症急性呼吸器感染症(SARI)の入院数とインフルエンザ陽性SARI検体数はさらに減少しました。
北アフリカ、西アジア、中央アジア
北アフリカ、中央アジアと西アジアでは、ほとんどの国でインフルエンザの活動性は低いままでした。バーレーンは最近インフルエンザA(H1N1)pdm09とB型ウイルスの検出が増加したと報告しました。
東アジア、南アジア
東アジア地域では、インフルエンザの活動性は低下し続けました。インフルエンザB型ウイルスが優勢でしたが、低いレベルでインフルエンザA(H1N1)pdm09およびA(H3N2)も検出されました。
中国では、インフルエンザの活動性はさらに低下し、シーズンオフのレベルに達しました。インフルエンザが陽性となった検体の割合は中国の北部と南部の両方で低い値でした。ILI症例の割合は予想されるレベル値内でした。
モンゴルでは、インフルエンザではないものもILIの活動性が最近数週間に比べ増加しました。日本と韓国では、インフルエンザの活動性はシーズンオフのレベルになりました。
イランでは、インフルエンザA(H1N1)pdm09の検出される割合がこの数週間増加したと報告しました。これは冬期インフルエンザシーズンの最初はインフルエンザA(H3N2)の検出が優勢で、続いてインフルエンザB型の検出が優勢だったことに続く傾向です。
ブータンでは3月中旬のインフルエンザ検出のピークの後、検出数は減少しています。前週は高止まりだったILI活動性も減少しました。タイでは活動性は低下し、ILI活動性も基準値以下になり、インフルエンザA(H1N1)pdm09とB型ウイルスの検出も低いレベルでした。
熱帯地域
アメリカ大陸の熱帯地域/中米とカリブ海諸国
カリブ海諸国、中米、南米の熱帯地域におけるインフルエンザの活動性は、全体として低いレベルでした。ペルー、ボリビアの熱帯地域ではわずかにインフルエンザ活動性が増加し、主にインフルエンザA(H3N2)によるものと報告されました。
中央アフリカの熱帯地域
アフリカでは、西アフリカ(ガーナ、コートジボアール、ナイジェリア)、中央アフリカ(カメルーン)、東アフリカ(ケニア、モーリシャス、ルワンダ、タンザニア)で主にインフルエンザA(H3N2)の検出が報告され、例外的にモーリシャスでインフルエンザA(H1N1)pdm09ウイルスがまだ報告されました。
東南アジアの熱帯地域
ほとんどの東南アジア諸国では、インフルエンザの活動性は低下しているか低いレベルにとどまりました。
南半球の温帯地域諸国
南半球におけるILIの活動性は、比較的低いままで、インフルエンザA (H3N2)、A(H1N1)pdm09、インフルエンザB型ウイルスが低いレベルで循環しました。オーストラリア、ニュージーランドでは、2週間前と比較しILI活動性が増加しましたが低いレベルのままでした。太平洋諸島のILI活動性は様々で、いくつかの諸島では増加が認められました。南米諸国ではILI活動性の増加が報告されましたが、例年この時期として予想されるレベルの範囲内で、インフルエンザウイルスの検出は低いレベルでした。
チリではインフルエンザ(シーズン)が始まりました。インフルエンザ陽性検体の中のほとんどがA型亜型不明で、インフルエンザA(H3N2)とインフルエンザB型がいくつか同定されました。ILI活動性の増加は主にRSV(RSウイルス)とアデノウイルスのこの地域における循環によるものでしたが、この時期に予想される基準値以下にとどまりました。
パラグアイではインフルエンザ活動性が増加し、この時期に予想される基準値を超えました。陽性検体のうち、ほとんどがインフルエンザA(H3N2)とインフルエンザB型でした。ILI活動性も前週より増加し、予想基準値を超えましたがこれはRSVとインフルエンザによるものでした。
南アフリカではインフルエンザ活動性がいくらかありましたが、検出は散発的でシーズンはまだ始まっていないようです。
オーストラリアとニュージーランドでは、インフルエンザ活動性は低く閾値に達していませんでした。全国的にインフルエンザ活動性のレベルは安定していましたが、前年よりは高いレベルでした。両国ではインフルエンザA型が優勢なウイルス型でした。
出典
Influenza update19 May 2014 - Update number 212
http://www.who.int/influenza/surveillance_monitoring/updates/latest_update_GIP_surveillance/en/