2014年のニュース

ブルーリ潰瘍(マイコバクテリウム・ウルセランス感染症)について (ファクトシート)

2014年7月 WHO (原文[英語]へのリンク

要点

ブルーリ潰瘍は、恒久的に外観を損なう障害を起こしうる、慢性消耗性皮膚軟部組織感染症です。
マイコバクテリウム・ウルセランス(Mycobacterium ulcerans)菌により起こります。
熱帯、亜熱帯、温帯気候の少なくとも33カ国でブルーリ潰瘍は報告されています。
毎年33か国中15か国から、5,000~6,000症例が報告されています。
この疾患はアフリカ、南アメリカ、西太平洋地域で発生します。
患者のほとんどは15歳未満の子どもです。
早期に検出された症例の80%は、抗生物質を組み合わせることにより治療できます。

 ブルーリ潰瘍は17つの顧みられない熱帯病の一つです。これは、マイコバクテリウム・ウルセランスの感染によって起こります。マイコバクテリウム・ウルセランスは、結核、ハンセン病を起こす細菌の科に属する生物です。

 感染により皮膚や軟部組織が破壊され、通常、足や腕に大きな潰瘍をつくります。早期に治療されないと患者は長期の機能障害に苦しみます。早期の診断と治療は罹患率を最小化し、障害を予防する唯一の方法です。

問題の広がり

 ブルーリ潰瘍はアフリカ、アメリカ大陸、アジア、西太平洋の33か国で報告されています。オーストラリア、中国、日本を除くと、ほとんどの症例は熱帯と亜熱帯地域で発生しています。

 西アフリカ、中部アフリカの一部の国-ベニン、カメルーン、コートジボワール、コンゴ民主共和国、ガーナ-でほとんどの症例は報告されています。

 2013年に、33か国中14か国がWHOにデータを報告しました。

症例の臨床的および疫学的特性

 症例の臨床的および疫学的側面は、国や環境の中においても、国や環境が違ってもかなり異なります。

 オーストラリアでは感染者の10%が15歳未満の子どもで、日本では19%であるのに対し、アフリカでは、感染者の約48%が15歳未満の子どもです。

 この疾患の性別分布もまた、様々です。
アフリカ-男性52%、女性48%
オーストラリア-男性55%、女性45%
日本-男性34%、女性66%

 一般的に、病変の約35%は上肢、55%は下肢、10%は身体の他の部分に発生します。

 アフリカでは、ほとんどの症例はまだ遅くに診断されています: カテゴリーⅠ(32%)、カテゴリーⅡ(35%),カテゴリーⅢ(33%)。オーストラリアと日本では、ほとんどの病変(>90%)はカテゴリーⅠで診断されます。

 アフリカの一部の国では、症例の約70%が潰瘍の段階で診断されます、一方、オーストラリアと日本では90%以上が潰瘍の段階で診断されますが、ほとんどの病変は小さなものです(カテゴリーⅠ)。

 データの違いは主に、人口統計的特性、流行地域のレベル、疾患に対する意識、積極的なサーベイランスの程度、治療へのアクセスのしやすさによるものです。

原因微生物

 マイコバクテリウム・ウルセランスは増殖するためには、29~33℃の温度(結核菌は37℃で増殖)と低酸素濃度(2.5%)が必要です。この生物は、マイコラクトン-組織損傷を引き起こし、免疫応答を阻害する特有の毒素を産生します。

伝播

 マイコバクテリウム・ウルセランスの伝播の正確な感染方式はまだ不明です。

所見と症状

 ブルーリ潰瘍は多くの場合、痛みのない腫脹(結節)で始まります。それはまた、硬結(プラーク)の広い無痛性領域や、脚、腕、顔のびまん性無痛性腫脹(浮腫)として、初期に現れることがあります。マイコラクトン毒素の局所免疫抑制の特性は、この疾患が痛みや発熱に進展しないようにすることができます。治療をしなかったり、時に抗生物質の治療中に、結節やプラークや浮腫は、古典的な下掘れの境界を伴い4週間以内に潰瘍化します。時に、骨が感染して大きな変形を起こします。

診断

臨床診断
 一般的には、訓練を受けた流行地域の医療専門職の臨床診断は信頼できます。患者の年齢、病変の部位、痛み、地理的地域により、他の(健康)状態は除外診断されるべきです。これらは、熱帯性潰瘍、動脈および静脈不全による慢性下腿潰瘍(多くの場合高齢者層における)、糖尿病性潰瘍、皮膚リーシュマニア症、広範な潰瘍性フランベジア、軟性下疳菌による潰瘍を含みます

 初期の結節性病変は時におでき、脂肪腫、ガングリオン、リンパ節結核、オンコセルカ症結節、真菌感染症のような他の皮下感染症と混同されています。

 オーストラリアでは、丘疹病変は最初は虫刺されと混同されることがあります。

 蜂巣炎はマイコバクテリウム・ウルセランス感染症により起こった浮腫のように見えるかもしれませんが、蜂巣炎の場合、病変は有痛性で、患者は具合が悪く、発熱します。

 HIV感染症は危険因子ではありませんが、共通流行国ではHIV感染症は患者の管理を複雑にします。免疫力の低下はブルーリ潰瘍の臨床的進行をより強くし、治療成績は悪くなります。

検査室的診断
 4つの標準的な検査室的方法はブルーリ潰瘍を確定するために用いることができます。

 IS2404ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は最も高い感度を有しており、結果は48時間以内に得られるので、確定するのに一般的な方法です。他の方法は、直接顕微鏡検査、組織病理、培養です。

 WHOは最近、検査室の科学者や医療従事者を指導するために、これらの4つの方法のマニュアルを公開しています。

 WHOのネットワークは14の感染流行地と非感染流行地の機関における17の研究室から成り立っていますが、症例を確定するために国の制御プログラムをサポートしています。

治療

 ブルーリ潰瘍の治療は患者が早期に検出された場合は簡単です、言い換えれば進行した段階で発見された場合は、治療は複雑でコスト高になるでしょう。 これは、抗生物質の組み合わせと補完する治療で成り立っています。

抗生物質
 8週間投与される抗生物質の異なる組み合わせが、ステージに関わらずブルーリ潰瘍を治療するために使用されます。以下の組み合わせの1つを患者に応じて使用できます:

リファンピシン(10mg/kg、1回/日)とストレプトマイシン(15mg/kg、1回/日)の組み合わせ、または
ランダム試験によってその有効性は証明されていませんが、リファンピシン(10mg/kg、1回/日)とクラリスロマイシン(7.5mg/kg、2回/日)の組み合わせが使われています。

 ストレプトマイシンは妊娠には禁忌なため、リファンピシンおよびクラリスロマイシンの組み合わせもまた、妊娠中の患者のためにはより安全な選択肢と考えられています。;ランダム試験によってその有効性は証明されていませんが、リファンシピン(10mg/、1回/日)とモキシフロキサシン(400mg、1回/日)の組み合わせもまた、使用されます。

罹患率の管理と障害の予防
 これらには、傷の治癒を促進する治療と障害の予防が含まれています。

 治療は、傷の管理(主にデブリードマンや皮膚移植)と障害を防ぐまたは最小化するための介入です。

 質の高い治療へのアクセスを確保するために、流行地域で医療制度を強化することは重要です。 患者、家族、医療従事者は力を合わせて、最良の結果を得ます。

予防

 ブルーリ潰瘍の伝播方法はわからないため、予防措置をすることはできません。ブルーリ潰瘍の一次予防のためのワクチンはありません。しかし、カルメット-ゲラン(Bacille Calmette-Guérin: BCG)ワクチン接種は、この疾患を短期的に防御するように思われます。二次予防は、症例の早期発見と治療に基づいています。

管理

目標と戦略
 ブルーリ潰瘍管理の目的は、苦痛、障害、社会経済的な負担を最小限に抑えることです。

 戦略は、早期発見と抗生物質治療に基づいています。以下の活動は、この戦略を実施するために不可欠です。

1.初期の報告を強化するために、地域社会レベルでの健康教育
2.医療従事者やボランティアの訓練
3.症例の検査室的確認
4.記録と報告の標準化と地図の作成
5.保健施設の強化
6.管理活動の監視と評価

 WHOは、これらの活動の実施を支援するための技術や情報資料を開発しています。

プログラムの目標
 次のプログラムの目標は、2013年3月25-27日にスイスのジュネーブで行われたブルーリ潰瘍の制御と研究の会議の間に合意されました。

2014年の終わりまでに、どの地区や国からでも報告された症例の少なくとも70%はPCR陽性で確定される。
2014年の終わりまでに、どの地区や国からでも報告されたカテゴリーⅢ病変の割合を2012年の平均33%から25%に下げる。
2014年の終わりまでに運動制限を現す患者の割合を、どの地区や国でも診断時に2012年の平均25%から15%に下げる。
2014年の終わりまでに潰瘍病変の割合を、どの地区や国から報告されても診断時に2012年の平均84%から60%に下げる。

研究の優先順位

 現場の管理対策を改善する必要性に基づいて、BU研究のために3つの主な優先事項があります。

1.経口抗生物質治療の開発
 WHOにより調整された無作為化臨床試験が、ブルーリ潰瘍の経口ベースの治療を開発する目的で、2013年にベニンとガーナで始まりました。この研究は2016年に完了する予定です。

2.迅速な治療開始時の診断的検査の開発
 迅速な治療開始時の診断的検査の開発は、現場においてこの疾患の制御と管理を簡素化するでしょう。 2013年11月、WHOと革新的新診断のための財団(Foundation for Innovative New Diagnosis: FIND)は、迅速診断の開発を加速するために優先分野とその隔たりについてジュネーブで会議を開催しました。ヒト組織において毒素、マイコラクトンを検出する革新的な方法は進行中で、ブルーリ潰瘍疑い症例を確定する、より簡素で、迅速で、安価な代替法を提供するかもしれません

3.伝播様式
 伝播様式は、10年以上の解読するための努力にもかかわらず、依然として不明です。しかし、研究はまだ、この問題に取り組むために進行中です。

WHOと世界的な対応

 WHOは技術的な手引きを提供し、政策を開発し、制御と研究の取り組みを調整します。

 WHOは、ブルーリ潰瘍に関係するすべての主要な関係者を、情報を共有するために定期的に招集し、疾病管理と研究の取り組みを調整し、進行状況を監視します。これらの取り組みはまた、ブルーリ潰瘍の可視性を高めることを助け、それと戦うための資源を結集しています。

 非政府組織、研究機関、感染流行国の政府と共にWHOのリーダーシップの下で、着実に力強く進展しています。

 これはブルーリ潰瘍を、破壊的な消耗性難治性疾患から、現在、抗生物質を用いて治療できるものに変えました。

文献
1Mitjà, O et al. Haemophilus ducreyi as a cause of skin ulcers in children from a yaws-endemic area of Papua New Guinea. Lancet Global Health: 2014; Vol 2, Issue 4: e235 - e241.
2Converse PJ et al. Accelerated detection of mycolactone production and response to antibiotic treatment in a mouse model of Mycobacterium ulcerans disease . PLOS Neglected Tropical Diseases, January 02, 2014

出典

WHO Fact Sheet N°199
Buruli ulcer, Update July 2014
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs199/en/