エボラウイルス疾患(EVD)の未承認治療に関する倫理的考慮についてWHOが声明を出しました

2014年8月12日 WHO (原文[英語]へのリンク

2014年8月12日世界保健機関(WHO)はエボラウイルス疾患(EVD)の未承認治療に関する倫理的考慮について声明を発表しました。内容は以下のとおりです。

西アフリカは、史上最大規模の、最も過酷で複雑なエボラウイルス疾患の流行を経験しています。エボラの流行は、早期発見および隔離、接触者の追跡調査および監視、感染制御手順の遵守といった、利用可能な介入処置によって封じ込めることが可能です。しかし、特異的な治療法やワクチンは、ウイルスに対抗するために役立つ有力な手段になりうるでしょう。

過去十年間以上にわたって、エボラウイルス疾患のための薬剤およびワクチンの開発へ、研究努力が注がれてきました。これらのうちのいくつかでは、実験室の段階で期待が持てる結果が示されました。しかし、それらはまだ、人において安全性および有効性に関する評価がなされていません。2014年西アフリカにおける流行により、感染を受けた人が多数生じたこと、また致死率が高いことから、患者の命を救い流行を抑制する目的のため、実験的な薬剤治療を行おうという要求が高まりました。

これを受けて、2014年8月11日に、WHOは、未承認薬を治療のために用いることが可能かどうかという臨床的判断をするために、倫理的な側面での考察および評価をするための諮問委員会を召集しました。

委員会は、この流行の特殊な状況下で、特定の条件が満たされた場合において、効果や副作用が現段階では未知数である治療法を、可能性がある治療法あるいは予防法として提供することは、倫理的に問題ないという合意に達しました。

そのような治療法を提供する際には、複数の倫理基準によって方針づけがなさければなりません。これには、治療、インフォームドコンセント、選択の自由、機密性、個人の尊重、人の尊厳の保持、およびコミュニティーの関与など、すべての側面についての透明性が含まれています。

これらの治療法の安全性および効果を理解するために、委員会は、未承認薬が患者治療に使用されるとしたら、またその場合に、「例外的使用(臨床治験を外れた未承認薬へのアクセスの許可)」によって提供される治療によるものを含み、生成されたデータをすべて集め共有する道義的な義務があることを勧告しました。

委員会は、これらの実験的治療の安全性および効果に関して、時宜を得た正確な情報を確実に得るために、どのようにこれらの治療の適用に関する評価を科学的に行えるか検討しました。これらの治療または予防のための介入について、その安全性と効果を決定的に証明するかあるいはそれを停止するための証拠を示すために、この状況の下で可能な最良の臨床試験によって、同じく評価を行う道義的な義務があるという点で、委員会は意見の一致をみました。継続して行われる評価により、今後の治療介入の道筋が示されなければなりません。

この勧告に加えて委員会は、以下のような分野について、より詳細な解析および議論を必要とすることを確認しました。

  • 流行状況で最適な治療を提供する努力を続ける中、データを収集するための倫理的方法
  • 未承認の実験的治療およびワクチンの使用を優先的に行う際の倫理的基準
  • 新しいとりうる治療法(そのいずれもが短期に需要を満たすことができないことが予想される)の数が増えるのに際し、コミュニティーや国々の間で公平に分配が行われるための倫理基準

この会議の議事録報告は、2014年8月17日までに公に入手可能になります。

出典

WHO statement
Ethical conciderations for use of unregistered interventions for Ebola virus disease(EVD),
Summary of the panel discussion,12 August 2014
http://www.who.int/mediacentre/news/statements/2014/ebola-ethical-review-summary/en/

参考

西アフリカにおける2014エボラ発生に関する国際保健規則緊急委員会会合についてのWHO声明(概要)
https://www.forth.go.jp/topics/2014/08082224.html