世界におけるインフルエンザの流行状況について (更新16)

2014年8月25日 WHO (原文[英語]へのリンク

要約

世界的にみて、インフルエンザの活動性は南半球で増加傾向を続けましたが、他の地域では低いままでした。

  • 北米とヨーロッパでは、全体的にインフルエンザの活動性はシーズンオフのレベルで推移していました。
  • アフリカと西アジアではインフルエンザの活動性は低かったです。
  • 東アジアでは、インフルエンザの活動性はほとんどの国でシーズンオフのレベルに到達し、インフルエンザA(H3N2)とインフルエンザBウイルスが優勢でした。中国南部地域では、インフルエンザA(H3N2)の活動性が持続していました。
  • 南半球では、インフルエンザの活動性はほとんどの国で増加し続けました。南アメリカの温帯地域では、主としてインフルエンザA(H3N2)ウイルスに関連するインフルエンザの活動性が増加しましたが、RSウイルスの活動性は低下しました。オーストラリアとニュージーランドでは、インフルエンザシーズンがILI(インフルエンザ様疾患)によって始まったようにみえ、インフルエンザウイルスの検出数が増加しました。インフルエンザA(H1N1) pdm09が最も一般に検出されたウイルスでした。南アフリカではインフルエンザの検出率が増加し、インフルエンザA(H3N2)が最も高頻度に検出されました。
  • 31週から32週(2014年7月27日から2014年8月9日)のFluNetの報告(協定世界時間2014年8月25日 11:25)によりますと、51の国・地域にある国のインフルエンザセンター(NICs) やその他の国内のインフルエンザ研究施設からデータが報告されました。WHO世界インフルエンザサーベイランス及び対応システム(GISRS)の検査施設では、26,644以上の検体を検査しました。インフルエンザウイルスが陽性となったのは4,014検体で、このうち3,645検体(90.8%)がインフルエンザA型で、368検体(9.2%)がインフルエンザB型でした。亜型が解析されたインフルエンザA型ウイルスのうち、534検体(16.8%)はインフルエンザA(H1N1) pdm09で、2,636検体(83.2%)はインフルエンザA(H3N2)でした。解析されたインフルエンザB型ウイルスのうち、37検体(94.9%)はB-山形系統で、2検体(5.1%)はB-ビクトリア系統でした。

北半球の温帯地域

北米、ヨーロッパ、北アフリカ、西アジア、中央アジア
ほとんどの北半球の国で、インフルエンザの活動性はシーズンオフのレベルでした。

メキシコではインフルエンザのレベルは低いままでしたが、シーズンオフとして予想されるレベルを上回っていました。同定された症例については、ほとんどがインフルエンザB型でした。

東アジア
東アジア地域では、インフルエンザの活動性は低いままで、インフルエンザA(H3N2)が循環している主なウイルスでした。

中国南部では、これまでの数週に比べてインフルエンザの活動性は低下しましたが、例年に比べると依然として高い状態でした。報告のあったインフルエンザウイルスの検出例のほとんどがインフルエンザA(H3N2)で、一部がインフルエンザBでした。

中国北部、日本、モンゴル、韓国ではインフルエンザの活動性はシーズンオフのレベルに達しました。

熱帯地域

アメリカ大陸の熱帯地域/中米とカリブ海諸国
全体としてこの地域では、インフルエンザの活動性は低いままでした。

ホンジュラス、ジャマイカ、ニカラグアを含む、カリブ海および中央アメリカのいくつかの国では、インフルエンザB型の循環が増加していることが観察され、インフルエンザA型がグアテマラ(亜型は未同定)とパナマ(A(H1N1)pmd09)で同時に循環していることが報告されました。

南米の熱帯の国では、予想の範囲内でILIとSARI(重症呼吸器感染)の活動性が報告されました。RSウイルスの優位がこの地域のほとんどの国で続いていましたが、依然としてインフルエンザの活動性も(特にボリビアにおいて)検出されました。ボリビアでは、この数週にわたって、主としてインフルエンザA(H3N2)とインフルエンザA(H1N1)pmd09の検出が報告されました。

ブラジルでは、インフルエンザの活動性が南部地域で生じており、インフルエンザA(H3N2)ウイルスが優勢でした。RSウイルスが引き続き高いレベルで循環していました。

中央アフリカの熱帯地域
アフリカでは、東アフリカ、中部アフリカ、西アフリカのほとんどの国から報告されたインフルエンザの活動性は低いレベルでした。

マダガスカルでは、インフルエンザの活動性の増加が報告され、主にインフルエンザA型(亜型は未同定)によるもので、いくらかがインフルエンザBウイルスの症例でした。

アジアの熱帯地域
ほとんどの南アジアと東南アジアの諸国では、インフルエンザの活動性は低下しているか低いレベルにとどまりました。

ラオス、ベトナムでは、インフルエンザの活動性がある程度報告されましたが、低いレベルでした。

タイでは主としてインフルエンザB型の活動性が報告されましたが、レベルは中等度のままでした。

インドではインフルエンザの活動性が報告され、ほとんどがインフルエンザA(H3N2)によるもので、一部がインフルエンザB型によるものでした。ブータンでもある程度のインフルエンザの活動性が報告され、インフルエンザB型の症例数が増加し、インフルエンザA(H3N2)がいくらか検出されました。

南半球の温帯地域諸国

南米の温帯地域
南米の温帯地域では、インフルエンザの活動性は上昇し続けましたが、RSウイルスとILIの活動性は低下しました。インフルエンザA(H3N2)が最も高い頻度で検出されたインフルエンザウイルスで、インフルエンザA(H1N1)pmd09がいくらか同時に循環していました。

チリでは、前週に比べてILIの活動性とインフルエンザの検出数はやや増加しました。SARIの症例の中ではRSウイルスが最も優勢で、検査陽性となった呼吸器検体の48%を占め、次いでインフルエンザ(5%)でした。検出されたインフルエンザウイルスの81%がインフルエンザA(H3N2)で、21%がインフルエンザB型でした。

パラグアイでは、ILIによる受診率は前週と同程度であり、高レベル(警戒域)を示しました。過去数週で、SARI関連の入院割合は減少しました。インフルエンザ陽性の検体の占める割合はさらに増加し、インフルエンザウイルスの93.7%がインフルエンザA型で6.3%がインフルエンザB型でした。

南アフリカ
南アフリカでは、インフルエンザの検出は前週と比較して増加し、インフルエンザA(H3N2)が最も流行している亜型で、インフルエンザB型の症例がいくらかみられました。

オセアニア、メラネシア、ポリネシア
オーストラリアとニュージーランドの両方で、ILIおよびインフルエンザの検出数が増加しました。最も高頻度に検出されたウイルスは、インフルエンザA(H1N1)pmd09でした。オーストラリアでは、過去数週でILIの活動性および検査室確定診断例の通報が増加しましたが、全体として活動性は前年に比べて低く、予想される季節変動に合致していました。ニュージーランドではILIの受診率は季節の閾値を少し超えていました。検査された824の呼吸器検体のうち、231(30%)がインフルエンザ陽性で、インフルエンザA(H1N1)pmd09が検出されたインフルエンザウイルスで最も頻度が高いものでした。

太平洋諸島では、ILIの活動性には変動があり、いくつかの島で減少傾向が観察されました。しかし、アメリカ領サモア、ニウエ、キリバス、サモア、ツバル、バヌアツでは、ILIの活動性は増加しました。

出典

WHO Influenza update 25 August 2014-Update number218
http://www.who.int/influenza/surveillance_monitoring/updates/latest_update_GIP_surveillance/en/