世界におけるインフルエンザの流行状況について (更新19)

2014年10月6日 WHO (原文[英語]へのリンク[PDF形式:682KB]

要約

世界的にみて、南半球のインフルエンザのシーズンは終息に向かいつつあるようです。その中で、オセアニアでは依然として活動性は高い状態です。他の地域では、インフルエンザの活動性はアメリカ大陸の熱帯地域の数か国を除き低いままでした。

  • ヨーロッパと北米では、インフルエンザの活動性はシーズンオフのレベルに留まりました。
  • アメリカ大陸の熱帯地域各国では、インフルエンザBがRSウイルス(RSV)とともに流行していました。
  • アフリカと西アジアではインフルエンザの活動性は低かったです。
  • 東アジアでは、インフルエンザの活動性はほとんどの国で低いか、8, 9月にみられたインフルエンザA(H3N2)活動性の後に減少しました。
  • 南半球では、インフルエンザの活動性はほとんどの国で減少しました。南アメリカの温帯地域では、インフルエンザ様疾患(ILI)は減少し、依然として主としてRSVに関連したものでした。インフルエンザA(H3N2)ウイルスがもっとも高い頻度で検出されたインフルエンザウイルスでした。オーストラリアとニューカレドニアでは、インフルエンザシーズンが続き、A(H1N1) pdm09とA(H3N2)ウイルスに関連した高い活動性がみられました。ILIの活動性が太平洋諸島のいくつかで増加しました。
  • 37週から38週(2014年9月7日から2014年9月20日)のFluNetの報告(協定世界時間2014年10月2日 11:15)によりますと、50の国・地域にある国のインフルエンザセンター(NICs) やその他、国のインフルエンザ研究施設からデータが報告されました。WHO世界インフルエンザサーベイランス及び対応システム(GISRS)の検査施設では、21,796以上の検体を検査しました。インフルエンザウイルスが陽性となったのは1,540検体で、このうち1,049検体(68.1%)がインフルエンザA型で、491検体(38.9%)がインフルエンザB型でした。亜型が解析されたインフルエンザA型ウイルスのうち、289検体(38.9%)はインフルエンザA(H1N1) pdm09で、454検体(61.1%)はインフルエンザA(H3N2)でした。解析されたインフルエンザB型ウイルスのうち、52検体(96.3%)はB-山形系統で、2検体(3.7%)はB-ビクトリア系統でした。

北半球の温帯地域

北米、ヨーロッパ、北アフリカ、西アジア、中央アジア
北半球の各国で、インフルエンザの活動性はシーズンオフのレベルでした。しかし、メキシコでは、急性呼吸器感染症(ARI)の活動性が増加し、検査が行われた708検体でインフルエンザ陽性となったものが15.3%ありました。優勢であったウイルスはインフルエンザB(60.2%)でした。

東アジア
東アジア地域では、インフルエンザの活動性は依然として低いままでしたが、インフルエンザA(H3N2)が循環している主なウイルスでした。

中国北部では、インフルエンザの活動性は低かったものの、徐々に増加傾向(陽性率3.2%)を示しました。日本、モンゴル、韓国ではインフルエンザの活動性はシーズンオフのレベルのままでした。

熱帯地域

アメリカ大陸の熱帯地域/中米とカリブ海諸国
全体としてこの地域では、インフルエンザの活動性には変動がみられました。

ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカなど、カリブ海および中央アメリカのほとんどの国では、インフルエンザB型の循環が報告されました。しかし、中央アメリカのほとんどの国で、最近の数週に渡ってインフルエンザB型の循環は減少しました。キューバでもインフルエンザB型が優勢でしたが、重症呼吸器感染(SARI)に関連した入院症例数が増加し、循環している主要なウイルスはRSウイルス(RSV)でした。

南米の熱帯諸国では、年のこの時期に予想される範囲内でインフルエンザ様疾患(ILI)とSARIの活動性が報告されました。RSVは循環し続けていますが減少傾向でした。ボリビアでは、インフルエンザA(H1N1)pmd09とインフルエンザA(H3N2)が、この2か月間で最も高頻度に検出された呼吸器系ウイルスでしたが、8月の半ばから活動性は減少しました。コロンビアでは、インフルエンザの活動性は循環を続けており、インフルエンザA(H3N2)が最も高頻度に検出されたウイルスでした。コロンビアと同様に、ベネズエラでもインフルエンザA(H3N2)の循環の持続がみられていました。ペルーでも、インフルエンザの活動性(34.1%の陽性率)の持続がみられましたが、前年と比較するとインフルエンザの活動性は低値でした。

ブラジルでは、インフルエンザウイルスが陽性になる検体の割合は、8月初めに較べ低率でした。インフルエンザの活動性は主に南東部地域で報告されており、そこではインフルエンザA(H3N2)ウイルスがもっとも一般的に検出されたウイルスでした。

中央アフリカの熱帯地域
アフリカでは、東アフリカ、中部アフリカ、西アフリカのほとんどの国から報告されたインフルエンザの活動性は低いレベルでした。

アジアの熱帯地域
ほとんどの南アジアと東南アジアの諸国では、インフルエンザの活動性は低下しているか低いレベルにとどまりました。

インド、ネパール、中国南部では、主としてインフルエンザA(H3N2)によって早期のピークが生じた後に、活動性は低下しました。

タイでは主としてインフルエンザB型による低いインフルエンザの活動性が報告されましたが、高いRSVの活動性がみられ、検査でRSV陽性となる検体の割合が40%を示しました。

南半球の温帯地域諸国

南米の温帯地域
南米の温帯地域では、インフルエンザの活動性は減少を続けました。

アルゼンチンとチリでは、ILIの活動性と検査で確定したインフルエンザの検出数は減少を続け、ILIの症例のほとんどがRSVによるものでした。

パラグアイでは、ILIによる受診率は減少しましたが、これまでの数年と比べると高レベルのままでした。検査でインフルエンザ陽性となる検体の割合は減少しました。インフルエンザウイルスの83.3%がインフルエンザA型で16.7%がインフルエンザB型でした。

ウルグアイでは、インフルエンザの活動性は低下し、インフルエンザA(H3N2)とRSVが優勢なウイルスでした。

南アフリカ
南アフリカでは、ILIおよびSARIの活動性は低下し、インフルエンザBが最も一般的に検出されたインフルエンザウイルスでした。

オセアニア、メラネシア、ポリネシア
オーストラリアとニューカレドニアでは、インフルエンザの活動性が保たれたままでした。オーストラリアとニュージーランドでこのシーズンに最も高頻度に検出されたウイルスはインフルエンザA(H1N1)pmd09でした。

オーストラリアではILIの活動性および検査室確定診断例の通報が依然として高い状態でした。しかし、9月早期には減少傾向が観察されました。オーストラリアのほとんどの管区でインフルエンザA(H1N1) pdm09が優性ですが、ニューサウスウェールズ州ではインフルエンザA(H3N2)ウイルスがもっとも一般的でした。クイーンズランド州、南オーストラリア州でのインフルエンザの通報数は、近年の通報数よりも多くなっていました。

ニュージーランドではILIの受診率は減少し、季節の閾値を下回り、インフルエンザ陽性となった検体の割合も低下しました。

太平洋諸島では、ILIの活動性には変動があり、米領サモア、仏領ポリネシア、グアム、ニューカレドニア、北マリアナ諸島、ニウエ、バヌアツ、ウォリス・フツナなど、いくつかの島では増加傾向が観察されました。

出典

WHO Influenza update6 October 2014 2014 - Update number 221
http://www.who.int/influenza/surveillance_monitoring/updates/latest_update_GIP_surveillance/en/