ポリオについて (ファクトシート)

2014年10月 WHO (原文〔英語〕へのリンク

要点

  • ポリオ(急性灰白髄炎)は、主に5歳未満の小児が罹かる疾患です。
  • 感染者200人のうち1人に不可逆性の麻痺が起こります。麻痺を起こした患者の5~10%は呼吸筋が機能しなくなり死亡します。
  • 1988年には35万人いたと推計されるポリオの患者は、2013年には99%以上減少し、416人と報告されました。この減少は、この疾患を撲滅するための努力が世界的に行われた結果です。
  • 1988年にはポリオの常在国が125か国以上ありましたが、2013年の常在国は3か国(アフガニスタン、ナイジェリア、パキスタン)のみです。
  • 感染した小児が 1人でもいれば、すべての国の小児はポリオに罹患する危険が生まれます。 10年以内に最後に残った常在国からポリオを撲滅することができなければ、毎年20万人もの新規患者が発生する可能性が生まれます。
  • 効果的なサーベイランスや予防接種体制を確立することによって、地球全体での努力がほとんどの国で他の感染症に取り組む能力をも高めています。

ポリオとその症状

 ポリオはウイルスによって引きおこされる感染力の強い疾患です。ウイルスは神経系の細胞に侵入し、数時間で全身の麻痺を起こすこともできます。ウイルスは主に糞口感染によって、稀に日常の媒体(ウイルスが含まれる水や食べ物)を通して、ヒトからヒトへと伝播され、腸内で増殖します。初期症状は発熱、全身倦怠感、頭痛、嘔吐、項部硬直や四肢の痛みです。感染者200人のうち1人に不可逆性の麻痺(通常は下肢)が起こります。麻痺を起こした患者の5~10%は呼吸筋が機能しなくなり死亡します。

リスクの高い人

 ポリオは主に5歳未満の小児で起こります。

予防

 ポリオの治療方法はなく、唯一できる方法は予防です。複数回ポリオワクチンを接種することで小児の命を守ることができます。

世界での発生数

 1988年には125か国以上の常在国に35万人のポリオ患者が発生していたと推計されていますが、2013年には99%以上減少し、患者は416人が報告されたのみです。これらのうち常在国で発生した患者は160例だけであり、残りの患者は常在国から常在国以外の国々へ国際的に広かったと説明されています。

 2014年には、世界の中で3か国の一部地域だけが歴史の中で、疾患の地図上最小地域として流行を残しています。3つのポリオ野生株(1型、2型、3型)のうち、2型は1999年に撲滅され、3型も2012年11月にナイジェリアで発生して以降は症例発生がなく最低レベルまで下がっています。

世界ポリオ撲滅イニシアチブ

開始
 1988年、第41回世界保健総会でポリオを全世界で撲滅する決議が採択されました。そこで、各国政府、WHO、国際ロータリー、米国疾病予防管理センター(CDC)、国連児童基金(UNICEF)が主導し、ビル&メリンダ・ゲイツ財団を含む主要な関係機関の支援を受け、世界ポリオ撲滅イニシアチブ(GPEI)が始まりました。これは、1980年の天然痘撲滅宣言に続き、1980年代中にアメリカ大陸からポリオウイルスを排除するために行われているもので、国際ロータリーがすべての小児をポリオから守るために基金を設立することを公約したものです。

進展
 これまでの活動を通して、世界ポリオ撲滅イニシアチブが発足して以来、この疾患の患者数は99%以上減少しました。2014年に、世界でポリオが常在する国は、ナイジェリア、パキスタン、アフガニスタンの3か国のみです。

 WHOの各地域事務局は、1994年にアメリカ大陸で、2000年に西太平洋地域で、2002年6月にはヨーロッパ地域で、それぞれポリオの撲滅を宣言しました。2014年3月27日に、WHO東南アジア地域は、ポリオ撲滅を認定しました。これは、野生株ポリオウイルスの伝播がインドネシアからインドへ延びるこのブロック11か国の中で遮られたことを意味します。この成果は、世界の人口の80%が現在はポリオウイルスが存在しないと認められた地域に住んでいることであり、地球規模での撲滅に向けた大きな飛躍を記しています。

 3種類の野生株ポリオウイルス(1型、2型、3型)のうち、2型の野生株ポリオウイルスの伝播を止めることに成功しました(1999年以降)。

 いまでは、ワクチンがなければ麻痺が起こったかもしれない1,000万人以上の人々が歩いています。ポリオの予防接種活動中にビタミンAを計画的に投与することで、推計150万人以上の小児の死亡を防ぐことができました。

機会とリスク: 緊急的なアプローチ
 ポリオ撲滅に対する戦略は、これらが完全に実施されたときに機能します。これは、2011年1月にポリオの伝播を止めることができたインドの成功例(そこはおそらく最も技術的に困難な場所です)と、2014年3月にWHOが東南アジア全地域に出されたポリオ撲滅宣言、によって明らかです。

 しかし、戦略的なアプローチが実施されなければ、ウイルスの伝播が継続します。伝播が継続しているのは、ナイジェリア、パキスタンとアフガニスタンです。10年以内に最後に残った常在国からポリオを撲滅することができなければ、世界中で毎年20万人もの新規患者が発生する可能性が生まれます。

 疫学的な好機であり、失敗した場合に潜在的に大きなリスクがあることが認識され、ポリオの常在国、利害関係者、支援者、協賛者、国内および国際的な諮問機関と協議した上で、新たなポリオ撲滅と戦略計画最終段階2013-2018が作成されました。新しいプランは、2013年4月末に、アラブ首長国連邦のアブダビで開催された地球ワクチンサミットで発表されました。野生株とワクチン株の両方に由来するポリオウイルス、全てのタイプのポリオ疾患を同時に根絶するための初めての計画です。

 6年以上にわたる計画実行期間中に55億米ドルの費用が生じると計算されていますが、世界的な主導者と個々の資金提供者は、その費用の4分の3を負担し、この計画を進めることに合意しました。また、彼らは新たな資金提供者が世界からポリオが撲滅された状態を維持するために必要となる15億米ドルを提供することを呼びかけました。

ポリオ撲滅の将来に向けた恩恵
 ポリオが撲滅されれば、どこで生活していても、人々は地球規模での公衆衛生上の大きな成果の恩恵を受けることができます。経済学的なモデルでは、ポリオが撲滅されれば、ほとんどの低所得国で、今後20年間に少なくとも40億米ドルから50億米ドルの経費削減になると推計されています。それ以上に重要なことは、ポリオの撲滅に成功すれば、ポリオによって生涯麻痺に苦しむ子どもがいなくなるということです。

出典

WHO. Polio.Fact sheet N°114.Updated October2014.
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs114/en/index.html