世界におけるインフルエンザの流行状況について (更新20)

2014年10月20日 WHO (原文[英語]へのリンク

要約

世界的には、インフルエンザの活動性は、アメリカ大陸の熱帯地域および太平洋諸島の数か国を除いて、低い状態です。

  • ヨーロッパと北米では、全体的にインフルエンザの活動性はシーズンオフのレベルに留まりました。
  • アメリカ大陸の熱帯地域各国では、インフルエンザBがRSウイルス(RSV)とともに流行していました。
  • アフリカと西アジアではインフルエンザの活動性は低い状態でした。
  • 東アジアでは、インフルエンザの活動性はほとんどの国で低いか、8, 9月にみられたインフルエンザA(H3N2)の活動の後に減少しました。
  • アジア熱帯地域では、インフルエンザの活動性は優勢であるインフルエンザA(H3N2)の低下とともに減少し続けている、もしくは、低水準でとどまっています。
  • 南半球では、いくつかの太平洋の島々でインフルエンザ様疾患(ILI)の活動が高いことを除いて、インフルエンザの活動性はほとんどの国で減少しました。南アメリカの温帯地域では、インフルエンザ様疾患(ILI)は減少し、依然としてRSVとの関連は続いたままでした。インフルエンザA(H3N2)ウイルスはもっとも高い頻度で検出されました。オーストラリアとニューカレドニアでもインフルエンザの活動性は減少してきました。
  • WHOは2015年における南半球のインフルエンザワクチンの組成に対する奨励を9月25日に発表しました。奨励と関連する技術報告はWHOのホームページに掲載されています:http://www.who.int/influenza/vaccines/virus/recommendations/2015_south/en/
  • 39週から40週(2014年9月21日から2014年10月4日)のFluNetの報告(協定世界時間2014年10月16日 16:05)によりますと、53の国と地域にある国立インフルエンザセンター(NICs) やその他、国のインフルエンザ研究施設からデータが報告されました。WHO世界インフルエンザサーベイランス及び対応システム(GISRS)の検査施設では、34,991本を越える検体を検査しました。インフルエンザウイルスが陽性となったのは1,465検体で、このうち1,001検体(68.3%)がインフルエンザA型で、464検体(31.7%)がインフルエンザB型でした。亜型が解析されたインフルエンザA型ウイルスのうち、96検体(12.9%)はインフルエンザA(H1N1) pdm09で、649検体(87%)はインフルエンザA(H3N2)、1検体(0.1%)はインフルエンザA(H5)でした。解析されたインフルエンザB型ウイルスのうち、99検体(99%)はB-山形系統で、1検体(1%)はB-ビクトリア系統でした。
  • データ収集の環境の変更により、WHO欧州地域事務局のデータが世界中で一時的に利用できなくなっています。これらのデータは可及的速やかにFluNetとFluIDに報告される予定です。ヨーロッパのインフルエンザの活動性に関する情報はhttp://www.flunewseurope.org/でみることができます。

北半球の温帯地域

北米、ヨーロッパ、北アフリカ、西アジア、中央アジア
北半球の各国で、インフルエンザの活動性はシーズンオフのレベルでした。合衆国では、インフルエンザの活動がわずかに増加しましたが、これは毎年のこの時期における予想範囲内でした。

ヨーロッパでは、インフルエンザの活動は、スペインとイギリスでいくつか散発的にインフルエンザウイルスが検出された程度で低水準でした。欧州地域の17か国からの検体221件の1%でインフルエンザが陽性でした。

東アジア
東アジア地域では、インフルエンザの活動性は依然として低いままで、流行しているのは主にインフルエンザA(H3N2)でした。

中国北部では、インフルエンザの活動性は低かったものの、流行しているのはインフルエンザA(H1N1)pdm09でした。日本と大韓民国では、インフルエンザの活動性はシーズンオフのレベルのままでした。モンゴルではインフルエンザの活動性を示さないインフルエンザ様疾患(ILI)の活動が増加しています。

熱帯地域

アメリカ大陸の熱帯地域/中米とカリブ海諸国
全体としてこの地域では、インフルエンザの活動性には変動がみられました。

カリブ海およびコスタリカおよびニカラグアといった中央アメリカのほとんどの国でインフルエンザB型の流行が報告されました。しかし、中央アメリカのほとんどの国では、最近の数週に渡ってインフルエンザB型の流行は減少してきました。キューバでもインフルエンザB型が優勢でしたが、主に流行しているRSウイルス(RSV)によって重症呼吸器感染(SARI)に関連した入院症例数が増加していました。ニカラグアでは8月のインフルエンザBの最初の流行に続き、インフルエンザ亜型はA(H3)が主流となりました。

南米の熱帯諸国では、毎年のこの時期に予想される範囲内でのインフルエンザ様疾患(ILI)とSARIの活動性が報告されました。RSVは流行し続けていますが減少傾向でした。ボリビアでは、インフルエンザA(H1N1)pmd09が最も高頻度に検出された呼吸器系ウイルスでした。活動性は低いままです。コロンビアでは、インフルエンザの流行は続いており、インフルエンザA(H3N2)が最も高頻度に検出されたウイルスでした。ペルーでも、インフルエンザA(H1N1)pmd09とインフルエンザA(H3N2)、さらにはインフルエンザBの流行の重複循環が続いています。しかし、インフルエンザの活動性は減少してきており、前年と比較して低くなりました。

ブラジルでは、インフルエンザA(H3N2)とインフルエンザBが重複して流行する状態が続いています。インフルエンザの活動性は主に南東部地域で報告されており、そこではインフルエンザA(H3N2)ウイルスがもっとも頻度が高く検出されたウイルスでした。

中央アフリカ熱帯地域
アフリカでは、東アフリカ、中部アフリカ、西アフリカのほとんどの国から報告されたインフルエンザの活動性は低いレベルでした。

アジア熱帯地域
南アジアと東南アジアのほとんどの国々では、インフルエンザの活動性は低下しているか低いレベルにとどまりました。

インド、ネパールでは、主にインフルエンザA(H3N2)と数例のインフルエンザBウイルスの検出による早期のピークの後、活動性は低下しました。

中国南部では、インフルエンザ様疾患(ILI)の受診が僅かに増加していました。しかし、インフルエンザ陽性の検体標本の割合は減少しています。インフルエンザの活動性は主にインフルエンザA(H3N2)によるものです。

ラオス人民共和国とタイでは、インフルエンザの活動性は主としてインフルエンザB型によるもので低いですが、タイでは検査でRSV陽性となる検体の割合が40%を示しRSVの活動性が高くなっていました。

南半球の温帯地域諸国

南米の温帯地域
南米の温帯地域では、インフルエンザの活動性は減少を続けています。

アルゼンチンとチリでは、RSVの減少に伴ってインフルエンザ様疾患(ILI)の活動性が減少を続けています。インフルエンザの検出数も減少を続けおり、検出されるのはインフルエンザAとインフルエンザBの重複です。

パラグアイでは、インフルエンザ様疾患(ILI)による受診率は減少しましたが、これまでの数年と比べると高レベルのままでした。検査でインフルエンザ陽性となる検体の割合は減少しました。

ウルグアイでは、重症呼吸器感染(SARI)とインフルエンザの活動性はともに低下しました。

南アフリカ
南アフリカでは、インフルエンザ様疾患(ILI)および重症呼吸器感染(SARI)の活動性は低下したままで、インフルエンザ陽性ILI検体の間ではインフルエンザBおよびインフルエンザA(H3N2)との重複感染が優勢でした。

オセアニア、メラネシア、ポリネシア
オーストラリアとニュージーランドでは、インフルエンザの活動性が減少してきました。検出されたウイルスはインフルエンザA(H1N1)pmd09とインフルエンザA(H3N2)、数例はインフルエンザBとの重複でした。

オーストラリアではインフルエンザ様疾患(ILI)の活動性および検査確定診断例が全ての区域で減少してきました。

ニュージーランドではILIの受診率は減少し、季節の閾値を下回り、例年の疫学曲線をも下回りました。

太平洋諸島では、ILIの活動性には変動があります。ミクロネシア連邦、グアム、ニューカレドニア、北マリアナ諸島、ソロモン諸島、トケラウで例年値の90%を越える通知があります。

出典

WHO, Influenza update number222, 20 October 2014,
http://www.who.int/influenza/surveillance_monitoring/updates/latest_update_GIP_surveillance/en/