緊急に必要とされる、迅速、高感度、安全かつ簡便なエボラ診断検査

2014年11月18日 WHO  (原文[英語]へのリンク)

2014年11月18日に、WHOよりエボラ診断の検査についての取り組み状況が公表されました。詳細は以下のとおりです。

エボラウイルス流行拡大の連鎖を断ち切ることの目標の達成は、検査室の支援に大きく依存します。この支援は、疑い例の確認または破棄、患者の仕分けと臨床的な決断の誘導、接触者追跡の援助、および暴露歴を持つ人々の中での患者早期発見、を促進するために必要とされます。同様に、症状の激しい患者の発見および隔離についてのWHOの目標も、検査室の支援に依存します。

西アフリカのエボラ流行を封じ込めのための努力は、現在、検査室のバイオセーフティと、高性能の機械を扱う専門知識をもつスタッフという高レベルの要件を含む、大量の追加物品の流通や長時間を要する検査時間などが課せられている複雑な診断テストによって妨げられています。

現在、エボラ対策を支援する可動検査室などで使用されている標準的な分子アッセイ系は、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、またはRT-PCR試験を使用しています。訓練を受けたスタッフによってしか実施できないたくさんの煩雑な処理作業を伴う検査は、非常に正確な結果を提供してくれます。しかし、各検査は、血液のフルチューブを必要とし、検査に2~6時間かかり、およそ100ドルがかかります。これらの要件は、このように著しく検査体制の能力を制限するので、財源に制約のある西アフリカで設定することは困難です。

患者と治療にとっての浪費されている時間

研究所の西アフリカの限られた数の検査室に、道路事情の悪い中で患者の検体を輸送することで浪費される時間は、検査結果を待つ数日の間、患者とその家族に不安を強いることを意味します。浪費される時間は、感染した人がその地域にとどまり、気づかないうちに他の人に感染させるという深刻な危険性を抱えていることも意味します。さらに、迅速な検査支援トがないことで、似た症状を示し、マラリア及びデング熱のような普段から感染することのある他の感染症にかかった人々が、不当に予防措置としてエボラ患者の「専門病院への搬送」センターに置かれるかもしれません。もし、その人たちがエボラでなかったとしても、センターで収容されるときには、残念ながらそこでエボラに感染するかもしれません。

家族や地域社会に深刻なリスクをもたらすという理由とは別に、現在もみられているように、診断未確定および管理の及んでいない患者は、有効な感染対策から溢れ落ちることによって、再び新しい連鎖を起こす起点となり、伝播の悪循環のパターンに落ち込んでいます。

最も重要なことは、リベリアの首都モンロビアでの700人以上のエボラ患者の管理に基づく最近の調査が、迅速なpoint-of-care 診断検査の結果を使った臨床判断が大幅に治療成績を向上させてたことを示唆していることです。

西アフリカにおけるエボラ出血熱:臨床症状と管理
New England Journal of Medicine

さらに、そのよう検査を容易に利用できることは、致死的で恐ろしい病気を管理することへの要求と同時に、伝染からの恐怖によって荒廃した西アフリカの保健システムの中にいくつかの秩序を回復させることができます。

また、迅速な流行対策を促進すること以外にも、迅速な診断検査はエボラの初期症状と類似する多くの風土病がある国において恒久的な価値を持つことになります。現に、そのような検査を実施できることはエボラ再燃の可能性のある西アフリカの他の地域で保健サービスのより良い準備を残すことになります。

WHOの取り組み:適切なテストの診断技術革新と展開への刺激

これらすべての理由から、WHOは診断の技術革新を促し、西アフリカ各国で、より良く、より速く検査を配信することを促進する(数ヶ月の代わりに数年に圧縮する)ために2つの緊急的な取り組みを始めました。

最初の取り組みの目的は、必要性を明確に定義し、研究開発の初期段階の検証材料および臨床検体の利用環境の整備のための選択肢を識別し、流行国にこれらの新しい検査の配置と準備調整を行うことによって、それらの検査を開発および配備する診断企業が直面する障壁をできる限り押さえることです。この取り組みについては、検査企業、医師団のサンセリフ国境なき医師団(MSF)、そして非営利団体財団革新的な新しい診断のための学術研究者(FIND)からのスタッフが緊密な連携をとりあって進めています。

「理想とする」分析結果

必要性を明確に定義し、試験の開発を誘導するために、WHOはこのように財源に厳しい制約のある設定条件の中でウイルス伝播の封じ込めを促進できる可能性が最も高い「理想とする迅速、高感度、安全かつ簡単な診断テスト」の詳細な内容を発表しました。

例えば、理想とする検査は設備の整っていない地方の診療所での使用にも適していなければなりません。検査の手順は、より少ない3ステップで30分以内に結果を出し、個人用保護具の着用以上のバイオセーフティ要件を持つべきではありません。

追加の動作の説明は、スタッフの訓練に半分以上の時間と取られるこく、簡便な保管および試薬の再構成に影響します。理想とする検査および関連する携帯機器には電源を必要とせず、管理の必要のないものにしなくてはなりません。

ほとんどの商業用のエボラ検査が規制当局の関与がないままなので、WHOがこれらの検査の品質も評価しています。現在までに、市場または開発中の迅速検査は、それらが現場で使用される前に、これらの製品の独立した評価の必要性と、完全な規制の評価を受けていないことを強調しています。いくつかの検査は研究のためだけで、患者のためには販売されていません。

緊急の品質評価のための新しい体制

WHOの取り組みのもう一つは、緊急の品質評価機体制の設立に関するものです。これは診断の品質、安全性と性能を評価するための迅速な査読プロセスです。

10月の初め、WHOはエボラウイルスの診断検査に取り組んでいる企業に、検査の安全性、品質、性能を編纂した根拠を示す書類を提出することを要請する書簡を送りました。提出されるべき情報は、推奨される検体のタイプ、感度および特異性を含む検査性能の根拠、重要な製品部品、原材料およびサービスの提供元、および現在の在庫と製造能力と品質に関するデータです。

16組の書類が10月中旬までに受け取られました。この中には、従来のRT-PCR診断キット、一括検体処理で自動化された「デスクトップ」型のPCRシステム、および新しい数分で数分以内にフルチューブ検体の代わりに指のプリックから血液をとってエボラウイルス感染を検出するpoint-of-care検査テストがあります。書類は独立してウイルス学専門家によってWHOに対して評価されました。このうち最も有望な性能をもつ検査は、臨床検体を用いて、迅速に検査室で検証されます。

緊急の品質評価体制は、現在、提出された16のうちの最初の5つの書類を評価しています。オーストラリア、ベルギーとオランダの査読者が、体外診断プログラムに対するWHOの事前資格審査からのスタッフとともに評価に参加しています。

全体的な目的は、今後数ヶ月以内に西アフリカに対して最適の検査方法を受けて、WHOやその他のパートナーによる大量調達の意思決定を導くことです。

歓迎すべきニュース

WHOが述べているように、検査結果を利用して迅速かつ簡単な検査方法の開発は、技術的に着実に達成されてきています。それらの商業的な価格は、従来のPCR法よりも安価であることが期待されています。バイオマーカーは、すでにあります。開発の際に重大な技術的なハードルはありません。

さらなる進歩と際だった必要性が、12月にジュネーブで開催される革新的なエボラ診断検査についてWHO専門家の相談会議のときに議論される予定です。

出典

WHO, Situation assessments:Ebola virus disease,
Urgently needed:rapid, sensitive, safe and simple Ebola diagnostic tests,18November2014
http://www.who.int/mediacentre/news/ebola/18-november-2014-diagnostics/en/