2014年のニュース

マラリアについて (ファクトシート)

2014年12月 WHO (原文〔英語〕へのリンク

要点

マラリアは、寄生虫によって起こされる、生命に危険のある疾患で、感染した蚊に刺されることによって人に感染します。
2013年には、推計で58万4,000人[36万7,000人、75万5,000人]がマラリアで死亡し、そのほとんどがアフリカの子どもでした。
マラリアは予防でき、そして、治療できる疾患です。
マラリア予防と感染制御の対策が進み、マラリアによる苦悩は多くの場所で劇的な減少をみていいます。
マラリアが常在していない地域からの免疫を持たない渡航者が感染すると、彼らは非常に(マラリアが起こす病態に)脆弱です。

 2014年12月に公表された最新の推計によりますと、2013年のマラリア患者数は、約1億9,800万人[1億2,400万人、2億8,300万人]で、推計58万4,000人[36万7,000人、75万5,000人]が死亡しました。マラリアによる死亡者は、2000年以降、世界で47%減少し、アフリカでは54%減少しました。

 死亡者のほとんどはアフリカに住む子どもで、アフリカでは1分に1人の子どもがマラリアで死亡しています。アフリカの子どものマラリアの死亡率は2000年以降で58%減少したと推計されています。

 マラリアはマラリア原虫(Plasmodium)という寄生虫によって引き起こされる疾患です。この寄生虫は、「マラリアベクター」と呼ばれる感染したAnopheles mosquitoes(ハマダラカ)に刺されることで人間に広がります。ハマダラカは、主に夕暮れから明け方にかけて吸血します。

 人のマラリアの原因になる原虫には、以下の4種類があります。

熱帯熱マラリア原虫 Plasmodium falciparum 
三日熱マラリア原虫 Plasmodium vivax
四日熱マラリア原虫 Plasmodium malariae
卵形マラリア原虫  Plasmodium ovale

 このうち、熱帯熱マラリアと三日熱マラリアがよくみられます。熱帯熱マラリアは最も致死的です。

 近年、東南アジアの特定の森林地帯でサルが感染するマラリア原虫Plasmodium knowlesiによるマラリア患者も数例発生しています。

伝播

 マラリアは、ハマダラカ属の蚊に刺されることによってのみ伝播します。伝播の程度は、寄生虫、媒介蚊、人とその環境に影響されます。

 世界では、地域的に重要なハマダラカ属が約20種類あります。重要な媒介蚊は、すべて夜間に吸血します。ハマダラカ属は水中に産卵し、種によって産卵様式は特徴的であり、例えば、ある種類は水田や家畜の蹄の足跡のような浅い新鮮な水たまりに好んで産卵します。蚊の寿命がより長い場所(そのため、蚊の体内で原虫が成育するのに十分な時間があります)や他の動物よりも人間の血液を好んで吸血する蚊がいる場所では、マラリアの伝播はより深刻になります。例えば、アフリカでは、媒介蚊の寿命が長く、人の血液を好んで吸血するため、世界のマラリア死亡者の90%以上が(ここで)発生しています。

 伝播は、降雨パターン、気温や湿度など、蚊の個体数や生息に影響を与える気候の状況からも影響を受けます。多くの場所では、伝播は季節性で、ピークは雨期とその直後にみられます。人々がマラリアに対してほとんどまたは全く免疫を持たない地域において、突然に気候や他の条件がマラリアの伝播しやすい条件に傾いたときに、マラリアの流行が起こることがあります。また、(マラリアへの)免疫の低い人々が、マラリアの流行地域で、仕事を探したり、難民となったりして、移り住んだときにもマラリア流行が起こることがあります。

 (マラリアに対する)人の免疫、特にマラリアが中等度から高度に流行している地域の成人の免疫がもう一つの重要な要素となります。何年にもわたり暴露されることで部分的に免疫ができます。その免疫は完全に(マラリアを)防御できるものではありませんが、重症化するリスクを低減することができます。このため、アフリカでのマラリアによる死亡者は、ほとんどが子どもによるものです。これに対して、伝播が少なく、免疫をほとんど持たない地域では、すべての年齢層に(感染の)リスクがあります。 

症状

 マラリアは急性熱性疾患です。(マラリアへの)免疫をもたない人では、感染した蚊に刺されてから、7日(通常は10日~15日)以上後に発症します。初発症状(発熱、頭痛、悪寒、嘔吐)は軽く、あまりマラリアとは気づきません。(しかし)熱帯熱マラリアは24時間以内に治療しなければ、重症化し、しばしば死亡します。小児の重症マラリアでは、高度の貧血、代謝性アシドーシスに伴う呼吸窮迫、脳マラリアのうち1つ以上の症状が頻繁にみられます。成人では、しばしば多臓器不全に陥ります。マラリアが常在する地域では、不顕性感染を起こす部分的な免疫ができる可能性もあります。

 三日熱マラリアと卵形マラリアでは、マラリアが常在する地域を離れていても、初めての感染の後、数週間から数か月して再発することがあります。この再発症状は、肝臓で休眠期(熱帯熱マラリア原虫や四日熱マラリア原虫では存在しません)にあった原虫が再び増殖を始めることによって起こります。感染に治療するためには、肝臓での感染状態を標的とする特異的な治療が必要となります。

リスクのある人とは?

 世界人口の約半数にマラリアのリスクがあります。ほとんどのマラリア患者と死亡者はサハラ以南のアフリカで発生しています。しかし、アジアやラテンアメリカ、また、数は少ないですが、中東やヨーロッパの一部でも感染が起きています。2014年には97の国と地域でマラリアの発生が続いています。

 特にリスクのあるグループは以下の人々です。

感染が常在する地域では、重症型のマラリアに対する免疫をもたない子どもにリスクがあります。
免疫をもたない妊婦では、マラリアは高率に流産を起こし、妊産婦も死亡することがあります。
感染が常在する地域で部分的に免疫を持つ妊婦では、(感染は)流産や低出生体重児の原因となり、特に、初回の妊娠時と二度目の妊娠時に(流産が)発生しやすくなります。
感染が常在する地域では、部分的に免疫があるものの、HIVに感染している妊婦では、全ての妊娠期間を通してリスクがあります。マラリアが胎盤を通じて感染すると、新生児がHIVに感染するリスクも高くなります。
HIV/AIDS感染者
非流行地からの渡航者は、(マラリアに対する)免疫を持たないためリスクがあります。
感染が常在する地域からの移民、常在しない地域に住む小児、常在する地域から常在しない地域に移住した人で祖国の友人や親戚を訪問するために(感染が常在する)祖国へ渡航する人は、免疫が低下しているか、免疫を持たないために、同様にリスクがあります。

診断と治療

 マラリアの早期診断と早期治療は、疾患を減少させ、死亡を未然に防ぎます。これはマラリアの伝播の減少につながります。

 最も良い治療法は、特に熱帯熱マラリアでは、アルテミシニン併用療法(ACT)です。

 WHOは、マラリアが疑われる症例には全例、治療の前に寄生虫学的検査(顕微鏡検査または迅速診断検査)を用いて確定診断することを推奨しています。寄生虫学的検査は15分以内で結果が得られます。症状のみで診断して治療することは、寄生虫学的検査ができないときに限定されるべきです。さらに詳しい推奨内容は、マラリア治療のガイドライン(第2版)に記載されています。2015年には改訂版が発行される予定です。

薬剤耐性

 抗マラリア剤への耐性は常に問題となっています。前世代の薬剤であるクロロキンやスルファドキシン-ピリメサミンに対する耐性熱帯熱マラリアは、1970年代と1980年代に広がり、マラリアの感染制御のための取り組みを切り崩し、死亡する子どもを増加させました。

 近年、アルテミシニンに対する耐性が大メコン圏のカンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナムの5か国で報告されています。薬剤耐性マラリアが発生し広がることには多くの要因があるようですが、経口アルテミシニン単剤での治療が重大な要因であると考えられています。経口アルテミシニン単剤療法では、マラリアの症状が急速に改善するので、完全に治る前に患者が服薬をやめてしまうことがあります。不完全な治療は、そのような患者の血液に原虫の残存を起こします。アルテミシニンと第2薬剤を併用して治療されなかった場合、耐性マラリア原虫は生き残り、蚊を介して他の人に移動することができます。

 アルテミシニンに対する耐性化が進み、地理的に他の地域に拡大すると、公衆衛生上、悲惨な結果となるでしょう。

 WHOは、抗マラリア剤耐性に対し日常的にモニタリングすることを推奨しており、モニタリングが重要な地域での取り組みを強化するために各国を支援しています。

 さらに包括的な推奨は、2011年に公表された、アルテミシニン耐性抑制計画(GPARC)に示されています。大メコン圏の国々に対して、WHOは2013年に「大メコンにおけるアルテミシニン耐性に対する緊急対策」と題した対策活動のための地域的な枠組みを発行しています。

予防

 地域社会レベルで、マラリア伝播を減少させる有力な方法はベクターコントロールです。ベクターコントロールはマラリア伝播が極めて高い状態からゼロに近づけることができる唯一の介入方法です。

 ひとりひとりにおいては、蚊に刺されないように各自が防御することがマラリア予防の第一選択です。

 広範囲な環境下では、2つのベクターコントロールの方法に効果があります。

殺虫剤処理された蚊帳(ITNs)
 長期作用型殺虫剤含浸蚊帳(LLINs)は公衆衛生普及計画のための蚊帳(ITNs)としてよく採用されています。WHOは、リスクのあるすべての人と多くの場所に分配されることを推奨しています。LLINを無償で支給することが最も費用対効果が高い方法です。その結果、誰もが毎晩、LLINの中で寝ることができます。

屋内での残留殺虫剤噴霧
 屋内残留殺虫剤噴霧(IRS)はマラリア伝播を急速に抑えることに威力のある方法です。標的とする地域で、少なくとも80%の家屋で噴霧された場合に、十分な威力を発揮することが確認されています。屋内での噴霧は、使用される殺虫剤や噴霧される表面の形状にもよりますが、3~6か月間効果を持続します。DDTでは9~12か月間効果が続くこともあります。IRSの計画で使用する新しい種類の殺虫剤と同時に、より効果の長いIRS殺虫剤の開発が続けられています。

 抗マラリア剤はマラリアを予防するためも使用することができます。渡航者は、予防内服によってマラリアを予防することができます。これは血中でのマラリア感染を抑制することで、発症を予防します。また、WHOは、感染の伝播が激しい地域に住む妊婦に対して、妊娠初期の3か月の後のそれぞれの定期検診時にサルファドキシン・ピリメサミンを間欠的に予防内服することを推奨しています。同様に、アフリカの感染の伝播が激しい地域に住む乳幼児にも、定期の予防接種と並行して、サルファドキシン・ピリメサミンを間欠的に3回予防投与することを推奨しています。2012年、WHOは、アフリカのサヘルの一部の地域に対し、マラリア予防のさらなる戦略として、季節に合わせて抗マラリア薬の予防内服することを推奨しました。この戦略では、5歳未満の全ての小児に対して、感染の伝播が激しく起きる季節に、アモジアキンとサルファドキシン・ピリメサミンを毎月投与することになっています。

殺虫剤耐性

 現在まで、マラリア制御におけるほとんどの成功例は、ベクターコントロールによるものです。ベクターコントロールは、主に、ピレスロイドを使って行われています。現在、ピレスロイドは、ITNsやLLINsで使用が推奨されている唯一の殺虫剤です。近年、多くの国でピレスロイドに耐性を獲得した蚊が出現してきました。地域によっては、公衆衛生上使用される4種類の殺虫剤すべてに耐性を獲得した蚊も発見されています。幸い、この耐性獲得は、効果の低下に関係することは極めてまれであり、LLINsとIRSは、ほとんどすべての場所で依然として高い有効性を保っています。

 しかし、サハラ以南のアフリカ各国とインドでは、懸念は深刻です。これらの国では、ひとつの特徴として、マラリア感染の伝播が激しく、殺虫剤に対する耐性も広範囲であることが報告されています。代替となる新たな殺虫剤を開発する優先度は高く、いくつかの有望な製品の開発が既に進行中です。蚊帳に使用する新しい殺虫剤の開発は、特に優先度が高いです。

 殺虫剤耐性の確認は、最も効果的なベクター制御を行うために、すべての国のマラリア制御対策の取り組みにおいて必須項目です。IRSに使用する殺虫剤の選択は、直近の、その地域における標的ベクターの感受性の情報に基づくべきです。

 殺虫剤耐性の脅威に対して、迅速かつ協調した対応を世界規模で行うために、WHOは幅広い関係者とともにマラリアのベクターに対する殺虫剤耐性管理の世界計画(GPIRM)の策定を進め、2012年5月に公表しました。GPIRMでは、世界のマラリアが常在する地域に求める、以下の5つの柱から成る戦略を提唱しています。

マラリア常在国で、殺虫剤耐性の管理戦略を計画し、実行すること。
適切かつ迅速な昆虫学的モニタリングと耐性モニタリングを確実に実施すること。また、効果的なデータ管理を確実に実施すること。
新たに革新的なベクターコントロールの方法を開発すること。
殺虫剤耐性の仕組みと現在の耐性殺虫剤管理手法の影響に関する知見を収集すること。
効果的な体制(アドボカシー(提唱)、人的資源、財源)の配備を確実に実施すること。

サーベイランス

 追跡調査を進めることは、マラリアの制御対策における大きな課題です。2012年、マラリアのサーベイランスシステムで発見される患者は、世界で推計される患者数の約14%に過ぎません。感染の常在地域での迅速かつ効果的なマラリア対策を行い、新興や再興を防ぎ、追跡調査を進め、各国政府と世界のマラリア常在地域が責任を持って行動するために、より強力なマラリアのサーベイランスシステムが早急に必要とされています。

排除

 マラリアの排除は、特定の地域で蚊によるマラリアの伝播がない、つまり、その地域での(患者の)発生がないことと定義されています。マラリアの根絶は、特異な物質、即ち特定のマラリア原虫種によって起こるマラリアの発生が世界中でなくなること定義されています。

 2013年に報告された患者数に基づけば、2015年までに世界保健総会の目標である罹患率75%という目標に沿って、55か国で順調に減少しています。WHOが推奨する戦略の大規模な展開、現在使用可能な方法、確固たる国家の責任ある意志、関係者との協力態勢で臨めば、より多くの国が(特にマラリアの伝播が低いもしくは変動している国では)マラリアの負荷を軽減し、排除へと進ませることができるでしょう。

 最近、2007年にアラブ首長国連邦、2010年にモロッコとトルクメニスタン、2011年にアルメニアの4か国が、WHOの事務局長からマラリアを排除したと認められました。

マラリアワクチン

 現在、マラリアや人に感染する他の寄生虫に対して認可されたワクチンはありません。RTS,S/AS01として知られている熱帯熱マラリア原虫に対するワクチンの研究が最も進んでいます。このワクチンは、現在、アフリカの7か国で大規模臨床試験の評価が行われ、欧州医薬品庁に申請され、審査が行われています。このワクチンの使用に関するWHOの推奨は、大規模臨床試験の最終結果と規制当局の審査結果によって行われます。このワクチンが既存のマラリア制御薬に追加する必要があるかどうかの推奨は、2015年後半にできると期待されています。

WHOの対応

 WHO世界マラリア計画(GMP)はマラリアの制御と排除に対して以下の方法で導くことに責任をもって取り組んでいます。

根拠に基づく基準、標準方法、政策、技術的な戦略、ガイドラインを示し、公開し、推進すること。
世界的な進捗状況を独立して評価すること。
y対応能力の確立、組織強化、サーベイランスへの取り組みを推進すること。
新たな行動分野とともにマラリアの制御と排除に対する脅威を見極めること。

 世界マラリア計画(GMP)は、公開の推薦手続で任命された世界中のマラリア専門家15人で構成されているマラリア政策の諮問委員会(MPAC)の事務局を努めています。マラリア政策の諮問委員会は、年2回開催され、マラリアの制御と排除のために推奨される政策をWHOに助言します。諮問委員会の役割は、迅速かつ透明で信頼性のある政策決定過程の一部として、戦略的な助言と技術的な考え方を提供することであり、マラリアの制御と排除に関することのすべてに及びます。

 WHOは、マラリアに対し共同で行動する世界的な組織であるロールバック・マラリア・パートナーシップ(Roll Back Malaria partnership)の共同創立者であり主催者でもあります。この組織は、活動し、(物資と人の両面での)資源を動員し、合意を形成します。マラリア常在国、開発関係者、民間関係者、非政府団体、共同体単位の組織、基金、研究機関、学術団体を含む500以上のパートナーで構成されています。

出典

WHO. Malaria. Fact sheet N°94. Updated December 2014.
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs094/en/index.html