予防接種について (ファクトシート)

2015年4月 WHO (原文[英語]へのリンク

要点

  • 予防接種は、子宮頸がん、ジフテリア、B型肝炎、麻しん、流行性耳下腺炎、百日咳、肺炎、急性灰白髄炎(ポリオ)、ロタウイルスによる下痢、風しん、破傷風を含むワクチンで防ぐことができる病気を予防し、障害や死亡を防ぎます。
  • 世界における予防接種の接種率は、安定した水準を維持しています。
  • 現在、予防接種は推定で毎年200万人から300万人の死亡を防いでいます。
  • しかし、世界では推定で2,180万人の幼児が基本的なワクチンを接種できずにいます。

概要

予防接種は、推定で毎年200万人から300万人のジフテリア、破傷風、百日咳、麻しんによる死亡を防いでいます。世界における予防接種の接種率(世界の子どものうち、推奨されるワクチンを接種した子どもの割合)は、過去数年間、安定した水準を維持しています。

2013年には、世界の約84%(1億1,200万人)の乳児がジフテリア-破傷風-百日咳(DTP3)の3回の予防接種を受け、重篤な病態、障害、死亡を起こしうる感染症から予防されました。2013年までに、DTP 3種混合ワクチンの接種率は129か国で少なくとも90%に到達しています。

2013年における世界の予防接種率

ヘモフィリスインフルエンザ菌b型(Hib)
インフルエンザ菌b型(Hib)は、髄膜炎や肺炎を起こします。Hibワクチンは2013年末までに189か国で導入されました。世界におけるHibワクチンの3回接種率は52%と推計されています。地域間で大きな差があります。アメリカ大陸では、接種率は推定で90%ですが、西太平洋と東南アジアの地域ではそれぞれ18%と27%しかありません。

B型肝炎
B型肝炎は肝臓に障害を起こすウイルス感染症です。幼児に対するB型肝炎ワクチンは、2013年末までに183か国で全国規模で導入されました。世界における3回のB型肝炎ワクチンの接種率は81%と推計されており、西太平洋では92%の高さです。

ヒトパピローマウイルス(HPV)
ヒトパピローマウイルスは生殖器系の最もよくみられるウイルス感染症です。子宮頸がん、その他のがん、生殖器疣贅を男女ともに起こす原因となります。ヒトパピローマウイルスワクチンは、2013年末までに55か国で導入されました。

麻しん
麻しんは非常に感染力が強いウイルス性疾患で、通常、高熱と発疹が現われ、失明や脳炎を起こしたり、死に至らせたりすることがあります。2013年末までに、小児の84%が2歳の誕生日までに最初の麻しん予防接種を受け、148か国では2回目の接種を定期予防接種の一部として導入しています。

髄膜炎菌A
髄膜炎菌A型は、重篤な脳の障害を起こし得る感染症で、しばしば死に至ります。WHOとPATH(Program for Appropriate Technology in Health;保健分野における適切な技術を導入することを目的に設立された非政府組織)によって開発されたワクチン(MenAfriVac)は、導入から3年経過した2013年末までに、この疾患が流行しているアフリカの国々で1億5,000万人以上に接種されました。

流行性耳下腺炎
流行性耳下腺炎は非常に感染力が強いウイルス性疾患で、有痛性の耳下腺腫脹、発熱、頭痛、筋肉痛を起こし得ます。ウイルス性髄膜炎を起こすこともあります。流行性耳下腺炎のワクチンは、2013年末までに120か国において全国規模で導入されました。

肺炎球菌
肺炎球菌性疾患は、肺炎、髄膜炎、発熱性菌血症のほか、中耳炎、副鼻腔炎、気管支炎を起こします。肺炎球菌ワクチンは、2013年末までに103か国に導入され、世界全体で接種率が推定で25%となりました。

ポリオ
ポリオは感染力の強いウイルス性疾患で、不可逆的な麻痺を起こし得ます。2013年には、世界の84%が3回のポリオ予防接種を受けました。世界的撲滅を目標としており、ポリオはアフガニスタン、ナイジェリア、パキスタンの3か国以外のすべての国で抑止されている状況です。清浄国でもポリオの輸入感染が起こりうるため、ポリオが完全に撲滅されるまではすべての国、特に紛争や政情不安がある国にリスクが存在し続けます。

ロタウイルス
ロタウイルスは、世界中で、子どもの重症の下痢性疾患を起こす原因として最も多くみられます。ロタウイルスワクチンは、2013年末までに52か国で導入され、世界での接種率は推定で14%となっています。

風しん
風しんはウイルス性疾患で、子どもでは通常軽症です。しかし、妊娠初期に感染すると胎児死亡や、脳、心臓、眼、耳が障害される先天性風しん症候群が起こることがあります。風しんワクチンは、2013年末までに137か国において全国規模で導入されました。

破傷風
破傷風は、不潔な傷口や清潔に保たれていない臍帯のような、酸素に触れない状況下で生存する細菌によって起こります。破傷風菌が産生する毒素は重症の合併症や死亡を起こし得ます。母親と新生児の破傷風を予防するために、2013年末までにワクチンが103か国で導入されました。推定で82%の新生児が予防接種によって守られました。母親と新生児の破傷風は、主にアフリカ及びアジアの25か国では、依然として公衆衛生上の問題として残っています。

黄熱
黄熱は感染した蚊によって媒介される急性ウイルス性出血熱です。2013年の時点で、アフリカ大陸及びアメリカ大陸で黄熱に感染するリスクのある44の国・地域のうち35の国・地域において、黄熱ワクチンが幼児の定期接種に組み込まれ、接種率は推定で41%となりました。

課題に向けた要点

世界における予防接種の接種率は過去10年間に改善しましたが、資源が限られていること、保健上の優先課題が競合していること、保健システムの管理体制が不十分であること、モニタリングや指揮監督が不十分であることから、依然として地域や地方での格差があります。

2013年には、世界で推定2,180万人の幼児が定期の予防接種を受けられずにいましたが、その半数以上の幼児は、インド、インドネシア、ナイジェリアの3か国に住んでいます。

世界の中で、特に予防接種を受けていない子どもが多い国では、定期の予防接種の強化を優先する必要があります。(ワクチンが)行き届いていない地域に到達するように、特に、遠隔地、都市部の貧困地域、治安が不安定な地域、紛争で荒廃した地域に到達するように、特別な取り組みが必要とされています。

WHOの取り組み

WHOは、2012年5月の世界保健総会で採択されたこれらのイニシアチブを含め、世界全体のワクチンの接種率を改善するために国や関係機関と連携して取り組んでいます。

世界ワクチン接種行動計画
世界ワクチン接種行動計画(The Global Vaccine Action Plan; GVAP)は、ワクチンの接種環境をより公正なものに整えることにより、何百万人もの感染者の死亡を予防するロードマップです。各国は、2020年までに、全国で90%以上、すべての地区で80%以上の接種率を目標としています。GVAPは、ワクチンで予防可能なすべての疾患の制御を促進する一方で、最初の目標としてポリオの根絶を設定しています。GVAPは、次世代ワクチンの研究・開発の推進も目標としています。

この計画は、国連、政府、国際機関、開発団体、保健の専門家、学術団体、製造者、市民団体といった複数の関係機関によって作成されました。WHOは、GVAPに示された計画を実施するために地域・国を支援する取り組みを進めています。

2014年の世界保健総会では、加盟国はGVAPの目標に向けた進展について議論し、到達しようとする場合に対処しなければならない問題点を鮮明にしました。

  • ワクチン-特により新しいワクチン-がすべての国で手頃な価格で継続的に利用できること
  • ワクチンの品質保証を確保する手段として、ワクチンの地域における製造を容易にするために技術移転をすること
  • 電子登録のような新しい技術の活用を通して、データの質を改善すること
  • 予防接種やワクチン接種率への影響に関する誤った情報に対処するためのリスクの伝達と管理体制
  • 現地の優先事項やニーズに基づいた意思決定を行うためのエビデンスの見直しや経済分析

世界予防接種週間
WHOと関係団体は、毎年4月の最終週を世界予防接種週間としています。ここでは、世界中で致命的な疾患から人々に彼ら自身と彼らの子どもたちにワクチン接種を奨励しながら、予防接種が如何に生命を守るかということの国民の意識を高めることを目指しています。

2014年は、"Are you up-to-date?(予防接種は予定通りに受けていますか)"という世界に向けた標語の下、世界予防接種週間の期間中、180以上の国・地域において、予防接種キャンペーン、訓練のためのワークショップ、円卓会議、一般市民への情報提供キャンペーンを含む活動が行われました。

出典

WHO.Immunization coverage.Fact sheet N°378.Update April2015.
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs378/en/