2015年のニュース

予防接種について (ファクトシート)

2015年9月 WHO (原文[英語]へのリンク

要点

予防接種は、ワクチンで防ぐことのできる子宮頸がん、ジフテリア、B型肝炎、麻しん、流行性耳下腺炎、百日咳、肺炎、急性灰白髄炎(ポリオ)、ロタウイルスによる下痢、風しん、破傷風などの疾病を予防し、障害や死から護ります。
世界におけるワクチンの接種率は、安定した水準を維持しています。
新しい未活用のワクチンの取り入れが増えてきています。
現在、予防接種は推定で毎年200万人から300万人の死亡を防いでいます。
しかし、世界では推定で1,870万人の幼児が基本的なワクチンを接種できないままにいます。

概要

 予防接種は、推定で毎年200万人から300万人のジフテリア、破傷風、百日咳、麻しんによる死亡を防いでいます。世界におけるワクチンの接種率(世界の子どものうち、推奨されるワクチンを接種した子どもの割合)は、過去数年間、安定した水準を維持しています。

 2014年には、世界の約86%(1億1,500万人)の幼児がジフテリア-破傷風-百日咳(DTP3)の3回の予防接種を受け、重篤な病態、障害、死亡を起こしうる感染症から保護されました。2014年までに、DTP 3種混合ワクチンの接種率は129か国で少なくとも90%に到達しています。

2013年における世界の予防接種率

ヘモフィリスインフルエンザ菌b型(Hib)
 インフルエンザ菌b型(Hib)は、髄膜炎や肺炎を起こします。Hibワクチンは2014年末までに192か国で導入されました。世界におけるHibワクチンの3回接種率は56%と推計されています。しかし、地域間で大きな差があります。アメリカ大陸では、接種率が推定で90%ですが、西太平洋と東南アジアの地域ではそれぞれ21%と30%しかありません。

B型肝炎
 B型肝炎は肝臓に障害を起こすウイルス感染症です。幼児に対するB型肝炎ワクチンは、2014年末までに184か国に全国規模で導入されました。世界における3回のB型肝炎ワクチンの接種率は82%と推計されており、西太平洋では92%です。

ヒト・パピローマウイルス(HPV)
 ヒトパピローマウイルスは生殖器系で最もよくみられるウイルス感染症です。子宮頸がん、その他のがんや生殖器疣贅を男女ともに起こします。ヒト・パピローマウイルス ワクチンは、2014年末までに63か国で導入されました。

麻しん
 麻しんは非常に感染力が強いウイルス性疾患で、通常、高熱と発疹が現われ、失明や脳炎を起こし、ときに死に至らせます。2014年末時点で、85%の子どもが2歳の誕生日までに最初の麻しん予防接種を受け、154か国では2回目の接種を定期予防接種に組み入れています。

髄膜炎菌A
 髄膜炎菌A型は、重篤な脳の障害を起こし得る感染症で、しばしば死に至ります。WHOとPATH(Program for Appropriate Technology in Health;保健分野における適切な技術を導入することを目的に設立された非政府組織)によって開発されたワクチン(MenAfriVac)は、導入から3年が経過した2013年末までに、この疾患が流行しているアフリカの国々で1億5,000万人以上に接種されました。

流行性耳下腺炎
 流行性耳下腺炎は非常に感染力が強いウイルス性疾患で、有痛性の耳下腺腫脹、発熱、頭痛、筋肉痛を起こし得ます。ウイルス性髄膜炎を起こすこともあります。流行性耳下腺炎のワクチンは、2014年末までに121か国に全国規模で導入されました。

肺炎球菌
 肺炎球菌性疾患は、肺炎、髄膜炎、発熱性菌血症のほか、中耳炎、副鼻腔炎、気管支炎を起こします。肺炎球菌ワクチンは、2014年末までに117か国に導入され、世界全体で接種率が推定で31%となりました。

ポリオ
 ポリオは感染力の強いウイルス性疾患で、不可逆的な麻痺を起こし得ます。2014年には、世界中で86%の幼児が3回のポリオ予防接種を受けました。ポリオは世界全体での撲滅を目標としており、アフガニスタン、ナイジェリア、パキスタンの3か国以外のすべての国で発生が抑止されている状況です。ポリオの清浄国でも輸入感染が起こりうるため、ポリオが完全に撲滅されるまでは、すべての国、特に紛争や政情不安がある国に、リスクが残されています。

ロタウイルス
 ロタウイルスは、世界中で、子どもに重篤な下痢症を起こす原因として最も多くみられます。ロタウイルス ワクチンは、2014年末までに74か国で導入され、世界での接種率は推定で19%となっています。

風しん
 風しんはウイルス性疾患で、子どもでは通常軽症です。しかし、妊娠初期での感染では、胎児死亡や、脳、心臓、眼、耳が障害される先天性風しん症候群を起こすことがあります。風しんワクチンは、2014年末までに140か国において全国規模で導入されました。

破傷風
 破傷風は、不潔な傷口や清潔に保たれていない臍帯のような、酸素に触れない状況下で増殖する細菌によって起こされます。破傷風菌は重症の合併症を起こし死に導く毒素を産生します。2014年末までに、母親と新生児の破傷風を予防するためのワクチンが103か国で導入されました。推定で83%の新生児が予防接種によって保護されました。母親と新生児の破傷風は、主にアフリカ及びアジアの24か国では、依然として公衆衛生上の問題として残っています。

黄熱
 黄熱は感染した蚊を介して感染する急性ウイルス性出血熱です。2014年の時点で、黄熱に感染するリスクのあるアフリカ大陸及びアメリカ大陸44か国と地域のうち35か国と地域において、黄熱ワクチンが幼児の定期接種に組み込まれました。

課題に向けた要点

 世界における予防接種の接種率は過去10年間に改善しましたが、人的・物質的資源が限られていること、保健上の優先課題が競合していること、医療体制の運営が不安定であること、モニタリングや指揮監督が不十分であることから、依然として地域や地方で格差が存在します。

 2014年には、世界で推定1,870万人の幼児がDPT 3種混合ワクチンなどの定期の予防接種を受けられませんでした。これらの子どもの60%以上は、コンゴ民主共和国、エチオピア、インド、インドネシア、イラク、ナイジェリア、パキスタン、フィリピン、ウガンダ、南アフリカの10か国に住んでいます。

 世界の中で、特に予防接種を受けていない子どもが多い国では、定期予防接種の強化を優先する必要があります。(ワクチンが)行き届いていない地域、特に、遠隔地、都市部の貧困地域、治安が不安定な地域、紛争で荒廃した地域に(ワクチンが)到達するように、特別な取り組みが必要とされています。

WHOの取り組み

 WHOは、2012年5月の世界保健総会で採択されたこれらの率先すべき取り組みを含め、世界全体のワクチンの接種率を改善するために国や関係機関と連携して取り組んでいます。

世界ワクチン接種行動計画
 
世界ワクチン接種行動計画(The Global Vaccine Action Plan:GVAP)は、ワクチンの接種環境をより公正なものに整備し、何百万もの人々を感染による死から保護するロードマップです。各国は、2020年までに、全国で90%以上、すべての地域で80%以上のワクチン接種率の達成を目標としています。GVAPは、ワクチンで予防可能となるすべての疾患の制御を促進するとともに、ポリオの根絶を最初の目標に設定しています。GVAPは、次世代ワクチンの研究・開発の促進も目標としています。

 この計画は、国連、政府、国際機関、開発団体、公衆衛生の専門家、学術団体、製造業者、市民団体といった複数の関係機関によって作成されました。WHOは、GVAPを実行するために国と地域を支援する取り組みを進めています。

 2015年4月、WHOは、活用されていないワクチンの導入が十分に進められるという目標以外、GVAPの6つのうちの5つの目標が達成されていないことに警鐘を鳴らしました。この結果は、予防接種に関する戦略諮問委員会(SAGE)による独立した評価報告書に基づいて下されました。

GVAPは予防接種のギャップを埋めるために3つの鍵となる手順を勧めています。

1. 母親と赤ちゃんのための産後検診のような、その他の保健サービスと予防接種を統合すること
2. 医療体制は危機のときでさえもワクチンが提供され続けるように強化しておくこと
3. 誰もがワクチンを利用でき、それらに余裕をもって支払える金額のワクチンを確保すること

世界予防接種週間
 WHOと加盟団体は、毎年4月の最終週を世界予防接種週間としています。ここでは、自分自身と自分の子どもたちに致命的な疾患に対するワクチンを接種することを世界中の人々に奨励しながら、予防接種がどのように生命を守っているかという国民意識を高めることを目指しています。

 2015年は、"Close the immunization gap(予防接種のギャップを埋める)"という世界に向けた標語の下、世界予防接種週間の期間中、180以上の国と地域において、予防接種キャンペーン、訓練のためのワークショップ、円卓会議、一般市民への情報提供キャンペーンを含む活動が行われました。

出典

WHO. Immunization coverage. Fact sheet N°378. Update September 2015
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs378/en/