世界におけるインフルエンザの流行状況 (更新19)

2015年10月5日 WHO(原文[英語]へのリンク)[PDF形式:671KB]

要約

地球全体で見ると、総じてインフルエンザの活動は下がるか低い状態にあります。僅かな国で呼吸器疾患のレベルの上昇が報告されています。

  • 北半球の国々では、インフルエンザの活動は、散発的な検出だけのオフシーズンの低いレベルが続いています。アメリカ合衆国では、RSウイルスの活動の高まりが報告されました。
  • アフリカからは、インフルエンザの活動はほとんど報告されていません。アフリカ東部からインフルエンザの活動が報告された国では、主にインフルエンザA型が占めていました。アフリカ西部では、全体的にインフルエンザの活動が下がっています。
  • アメリカ大陸の熱帯地域、中米、カリブ地域では、インフルエンザの活動は低いレベルにあります。例外的にキューバでは、インフルエンザA(H1N1)pdm09とRSウイルスが関係し、依然としてたくさんの重症急性呼吸器感染症(SARI)が報告されています。コロンビアでは、この数週間でRSウイルスの活動に伴い急性呼吸器疾患の活動が僅かに上昇してきました。
  • アジア熱帯地域では、全体として南アジアと東南アジアの国々でインフルエンザの活動の低い状態が報告されています。例外的に、インドではインフルエンザA(H1N1)pdm09により活動が高まり、ラオスではインフルエンザA(H3N2)により活動の高まっていることが報告されています。中国南部では、インフルエンザの活動が低下してきました。
  • 南米温帯地域では、全体的に呼吸器系ウイルスの活動は下がるか低い状態でした。しかし、チリではインフルエンザA(H1N1)pdm09の検出増加に伴いインフルエンザ様疾患(ILI)の活動が上昇していました。
  • 南アフリカでは、インフルエンザの活動は低いレベルにあります。この数週間はインフルエンザB型が占めていました。
  • オーストラリアでは南部で、インフルエンザA(H3N2)の検出に続いてインフルエンザBの検出も増加し、インフルエンザの活動が高まっています。南部以外では、全体としてピークが過ぎたとみられます。ニュージーランドでは、インフルエンザの活動はインフルエンザA(H3N2)とインフルエンザBの流行に伴い8月の第2週にピークを迎えたとみられます。インフルエンザ様疾患(ILI)の活動はシーズンの注意レベルを上回っています。しかし、警戒レベルは下回っています。
  • 2016年南半球冬期のワクチンの推奨が作成されました。以下のリンクで確認できます。
    http://www.who.int/influenza/vaccines/virus/recommendations/2016_south/en/
  • 2015年9月7日から9月20日までのデータが、FluNet(協定世界時間2015年10月1日 12:17:00現在)に基づき、71の国と地域にある国立インフルエンザセンター(NICs)とその他の国立インフルエンザ研究施設から集められています。WHO世界インフルエンザ・サーベイランス及び対応システム(GISRS)の検査施設では、35,084本を超える検体が検査されました。インフルエンザウイルスが陽性となった検体は2,096本で、このうち1,722検体(82.2%)がインフルエンザA型、374検体(17.8%)がインフルエンザB型でした。亜型が解析されたインフルエンザA型ウイルスのうち、305検体(21.3%)がインフルエンザA(H1N1)pdm09、1,124検体(78.7%)がインフルエンザA(H3N2)でした。解析されたインフルエンザB型ウイルスのうち、110検体(92.4%)がB-山形系統で、9検体(7.6%)がB-ビクトリア系統でした。

北半球の温帯地域

北半球の国々では、インフルエンザの活動はオフシーズンの低いレベルにあります。カナダでは散発的にインフルエンザA(H3N2)ウイルスが検出され、アメリカ合衆国ではRSウイルスの活動が高まってきました。多くの国がオフシーズン中は調査活動を休止するか、調査活動の数を減らす体制をとっています。

熱帯地域

中米、カリブ海、南米の熱帯地域
カリブ海の国々、中米、アンデスの一部地域では、この期間、インフルエンザとRSウイルスの活動が低いか下がりつつあることが報告されています。キューバでは、インフルエンザA(H1N1)pdm09の活動とRSウイルスの検出の増加に伴い、たくさんの数の重症急性呼吸器感染症(SARI)患者が報告され続けています。南米の熱帯地域の国々では、インフルエンザA(H3N2)ウイルスが一部ではインフルエンザBを伴って流行し、全体としてのインフルエンザの活動は昨シーズンの同時期と比べて今シーズンの方が低くなっています。この数週間は、コロンビアではインフルエンザの活動が高く、RSウイルスの活動が高まりを維持しているため、急性呼吸器疾患(ARI)の活動が昨年よりもやや高いレベルにあります。

アフリカ熱帯地域
アフリカ東部では、インフルエンザの活動を報告している国は僅かしかありません。主にインフルエンザA(H1N1)pdm09が占めています。マダガスカルでは、主にインフルエンザA(H1N1)pdm09ウイルスにより2か月以上にわたってインフルエンザの活動が高まり続けています。

アフリカ西部では、コートジボアールとセネガルでインフルエンザA(H1N1)pdm09、インフルエンザA(H3N2)およびインフルエンザBのウイルス検出が報告されました。

アフリカ中央部でデータが報告された国では、この数週間、カメルーンでのインフルエンザウイルス検出が僅かながら続いています。

アジア熱帯地域
アジア南部では、今回の報告の間、全体的にインフルエンザの活動レベルが低いか下がる傾向にあることが報告されました。

インドでは、主にインフルエンザA(H1N1)pdm09ウイルスによる活動の高まりが続いています。

香港では、インフルエンザの活動は低い状態にありました。中国南部では、活動は下がる傾向でした。主にインフルエンザA(H3N2)が検出されています。

東南アジアでは、カンボジア、インドネシア、フィリピン、シンガポールで、インフルエンザの活動が下がるか低下傾向にありました。主にインフルエンザA(H3N2)によるものです。ラオスでは、インフルエンザA(H3N2)ウイルスの活動の高まりが報告されています。

南半球の温帯地域

南米温帯地域
南米温帯地域では、インフルエンザもRSウイルスも検出数は少なく、全体としてインフルエンザ様疾患(ILI)と重症急性呼吸器感染症(SARI)の活動は下がるか低い状態にありました。今シーズンは、インフルエンザA(H1N1)pdm09とインフルエンザA(H3N2)のインフルエンザA型が優勢で、僅かにインフルエンザBも検出されました。

チリでは、インフルエンザ様疾患(ILI)の活動がこの数週間で高まってきました。重症急性呼吸器感染症(SARI)の活動は昨シーズンに一致した予想されたレベルですが、この数週間は少しずつ上昇してきていました。インフルエンザの活動は、主にインフルエンザA(H1N1)pdm09の検出を伴い上昇を続け、インフルエンザA(H3N2)およびインフルエンザBもこれに続いています。RSウイルスの活動はこの数週間で下がってきました。

アフリカ南部
南アフリカでは、この数週間はインフルエンザの活動が低い状態にあると報告されています。最近は、インフルエンザBが流行していました。一方、シーズン前半はインフルエンザA(H1N1)pdm09とインフルエンザA(H3N2)が流行していました。

オセアニア、メラネシア、ポリネシア
サウスオーストラリアを除くほとんどでは、インフルエンザの活動のピークは過ぎたとみられます。インフルエンザBが全国的に流行し、インフルエンザA(H3N2)も流行を続けていました。オーストラリアの首都特別地域とオーストラリア西部では、インフルエンザAがインフルエンザBに置き換わりつつあります。ノーザンテリトリー、クィーンズランド、サウスオーストラリアおよびオーストラリア西部では検出数の増加が見られます。

ニュージーランドでは、インフルエンザA(H3N2)とインフルエンザBウイルスが流行し、インフルエンザの活動は8月の第2週にピークを迎えたようです。インフルエンザ様疾患(ILI)の活動はシーズンの注意レベルを上回っています。しかし、警戒レベルは下回っています。

フランス領ポリネシアと太平洋の島々では、この数週間はインフルエンザ様疾患(ILI)の活動にバラツキがあります。クック諸島、ミクロネシア連邦、フランス領ポリネシア、グアム、北マリアナ諸島では、活動が高まってきました。

出典

WHO.Influenza Update number247. 5 October 2015
http://www.who.int/influenza/surveillance_monitoring/updates/2015_10_05_surveillance_update__247.pdf?ua=1[PDF形式:671KB]