狂犬病の撲滅に対する世界での新たな取り組み

2015年12月10日に、WHOより、狂犬病の撲滅に対する世界での新たな取り組みが発表されています。

人の狂犬病を撲滅し、毎年数万人の生命を救うための新たな取り組みが、WHO、国際獣疫事務局(OIE)、国連食糧農業機関(FAO)と狂犬病のコントロールのための世界同盟(GARC)によって始められました。

取り組みは、3つの鍵となる行動となる、人用ワクチンと抗体を手頃な価格で利用できるようにすること、咬まれた人が速やかに治療を受けられる環境を確保すること、その感染源となる狂犬病に取り組むための大量の犬用予防ワクチンを備えること、からなります。

WHO事務局長マーガレット・チャン博士は「狂犬病は、暴露後のワクチン接種と適切な免疫機能の備えによって100%予防が可能です。しかし、咬まれた後の治療環境の利用には多額の費用を必要とし、アジアやアフリカの多くの国々ではその余裕がありません。私たちがもっと広い範囲に取り組みを広げられれば、狂犬病を歴史の本に載せ、過去の物にすることができます。」と述べています。

アジアとアフリカに最大の脅威である狂犬病

世界中で、毎年何万人もの人々が狂犬病で死亡しています。狂犬病が疑われる犬に咬まれた10人のうち4人は、15歳未満の子供です。アジアやアフリカでは10分毎に1人が死亡し、最大の脅威となっています。

しかしながら、狂犬病を予防するための人用ワクチンの費用は、それを必要とするこれらの人々の多くには手の届かないところにあります。そして、それは、感染が発生するいくつかの国では40日分の賃金に相当する40-50米ドルを必要とします。人用の狂犬病ワクチンが現在は手頃な値段ではないことを認識し、新たな取り組みでは、人に狂犬病を起こす99%が犬であるため、犬へのワクチン接種を通じての予防が強調されています。犬用のワクチンは、 1米ドル以下しかかかりません。

「狂犬病が発生する地域で定期的に70%の犬にワクチンを接種すると、患者をゼロに減らすことができます。犬へのワクチン接種を通して犬の狂犬病を排除することが、最も費用対効果のある長期的には唯一の解決策です。」とOIE事務局長Bernard Vallat博士は述べています。「WHOが推奨するように、大量の犬への予防接種は、OIEの政府間規格に準拠するだけでなく咬傷の治療も含めて、ペット犬と野良犬両方の管理を組み合わせることとなり、人の死亡を予防することができます。」

人用狂犬病ワクチンのコストの低下

犬へのワクチン接種が新しい取り組みの鍵となる一方で、狂犬病の撲滅 -と咬まれた人々の救命 - には、より広く人用ワクチンが入手できる環境が必要となります。

現在、狂犬病に暴露された人々のうち約80%は、咬まれたとしても、直ぐには治療を受けられないアフリカやアジアの貧しい農村部に住んでいます。治療を被害者にもっと身近なものにし、狂犬病ウイルスが体内に入り込む前に、これを中和できる手頃な費用のワクチンと有効な狂犬病免疫グロブリンをもっと幅広く利用できるようにすることが、狂犬病死亡者のゼロを達成するためには不可欠です。

人用の狂犬病ワクチンと治療の費用を安くするには、狂犬病が発生している地域の保健センターで品質の保証されたワクチンと狂犬病免疫グロブリンを利用可能にするための強力な国際協力が必要になります。

2015年までに、WHOとOIEのワクチンバンクは1500万回分の犬用狂犬病ワクチンを多くの国へ供給してきました。

世界での人での狂犬病の撲滅 - 時は今!

2015年12月10日と11日に、専門家、資金支援者、獣医、および公衆衛生当局は、すべての狂犬病の発生地域で暴露後直ぐに予防投与できること並びに大規模で持続的に規模を拡大できる犬用ワクチン接種の取り組みを目指す行動計画を採択する予定です。この試金石となる国際会議では、協調活動を犬と人に狙いを定めた実績のある感染制御戦略を採用することによって後押しすることについて議論します。

さらに重要な構成要素は、咬傷の発生報告と暴露後予防接種の需要といった情報収集を整備し強化する、意識改革と社会参加への地域の支援を活用することです。咬傷を避ける方法を子供たちに教育することも重要です。

会議「世界からの犬による狂犬病の撲滅 - 時は今!」は、GARCの支援を受けてFAOと共同で、WHOとOIEが運営しています。

出典

WHO.news release, Media centre.
New global framework to eliminate rabies
http://www.who.int/mediacentre/news/releases/2015/eliminate-rabies/en/