ジカウイルス感染症について(ファクトシート)

2016年1月 WHO(原文[英語]へのリンク

要点

  • ジカウイルス感染症は、ネッタイシマカおよびヒトスジシマカなどのヤブカ属が媒介するウイルスによって引き起こされます。
  • ジカウイルス感染症に罹った人には、通常、軽度の発熱、皮膚の発疹(皮疹)や結膜炎が現れます。これらの症状は、通常、2-7日間続きます。
  • 現在、特異的に適応できる治療法やワクチンはありません。
  • 最善の予防方法は、蚊に刺されることから身を護ることです。
  • このウイルスは、アフリカ、南北アメリカ、アジア太平洋地域での感染伝播が知られています。

概要

ジカウイルスは、最初、森林型黄熱病のネットワークで調査しているとき、1947年にウガンダでアカゲザルから発見されたウイルスで、蚊が媒介することによって引き起こされます。その後、1952年にウガンダとタンザニア連合共和国で人からも発見されました。ジカウイルス感染症の発生は、アフリカ、南北アメリカ、アジア太平洋地域で記録されています。

  • ウイルス分類:フラビウイルス科
  • 媒介昆虫:ネッタイシマカおよびヒトスジシマカなどのヤブカ属(通常、午前と午後/夕方の時間帯に活動します)
  • 宿主:不明

症状

ジカウイルス感染症の潜伏期間(曝露から発症までの時間)は明らかではありませんが、数日のようです。ジカウイルス感染症の症状は、デング熱など他のアルボウイルス感染症の症状と類似しており、発熱、発疹、結膜炎、筋肉痛、関節痛、倦怠感、頭痛などが起こります。通常、これらの症状は軽く、2-7日続いて治まります。

2013年にフランス領ポリネシアで、2015年にブラジルで、それぞれに大規模な感染流行が発生した時に、国家保健当局がジカウイルス感染症に潜在する神経学的合併症および自己免疫合併症を報告しました。最近、ブラジルでは、地域の保健当局が公共の場で全般的にジカウイルス感染症が増えているだけでなく、ブラジル北東部において小頭症の新生児が増えていることを確認しました。ジカウイルス感染症の発生を調査する政府機関は、ジカウイルスと小頭症との間に関連する証拠がどんどんと増えていることを気づいています。しかし、私たちが新生児の小頭症とジカウイルスとの関係を理解するまでには、さらに多くの調査が必要となります。他に可能性のある原因も検討されています。

感染経路

ジカウイルスは、熱帯地域の主にネッタイシマカおよびヒトスジシマカなどのヤブカ属の感染した蚊に刺されると人に伝播します。これは、デング熱、チクングニヤ熱、黄熱病を伝播する蚊と同じです。

ジカウイルス感染症の発生は、2007年および2013年に太平洋(それぞれヤップ島とフランス領ポリネシア)で初めて報告され、2015年にアメリカ大陸(ブラジルとコロンビア)、アフリカ(カーボベルデ)でも報告されました。また、アメリカ大陸では13を超える国がジカウイルスの急激な地理的拡大を示す散発的なジカウイルスの感染を報告しています。

診断

ジカウイルスは、血液検体からリアルタイムPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査法またはウイルスの分離によって診断されます。血清学的検査による診断は、ウイルスがデング熱、西ナイル、黄熱病など他のフラビウイルスと交差反応することがあるので困難です。

予防

蚊とその繁殖地はジカウイルス感染の大きな危険因子となります。感染の予防と制御は、感染源の削減(繁殖地の除去および環境改善)によって蚊を減らし、蚊と人との接触機会を減らすことに依存します。

これは、虫除け剤を使用すること、できるだけ体の多くの部分を覆う(できれば明るい色の)服を着ること、遮蔽幕やドアや窓の閉鎖などの物理的な障壁を利用すること、そして、蚊帳の中で眠ること、で実行できます。また、バケツ、植木鉢、タイヤなどの水が溜まる場所を空にし、清潔を保ち、蓋をして、蚊が繁殖できる場所を減らすことも重要です。

幼児、高齢者、病人のように自分では十分に身を守ることができない人には、特別に注意を払い介助が行われる必要があります。

感染流行の発生中は、保健当局が殺虫剤を散布することを勧めることがあります。WHOの農薬評価事業計画によって推奨されている殺虫剤が比較的大きな貯水容器の幼虫を処理するための殺虫剤として使われることもあります。

旅行者は、蚊に刺されることから身を守るために、ここに述べた基本的な予防策を取ることが重要です。

治療

ジカウイルス感染症は、通常は比較的症状が軽く、特別な治療を必要としません。ジカウイルスに罹った人は、十分な休養と、十分な水分を取り、市販の鎮痛解熱薬で対処できます。症状が悪化したときに、医療機関に助言を求めるべきです。現在、適応できるワクチンはありません。

WHOの取り組み

WHOは、以下のことを通してジカウイルス感染症の制御を実施している国々を支援しています。

  • 調査活動の強化
  • 検査施設でのウイルスを検出するための対応能力の構築
  • 蚊を地域から一掃するための国々との協力
  • ジカウイルス感染者の臨床上の処置と観察のための推奨事項の準備
  • ジカウイルス感染症と起こりうる合併症の研究に対する優先分野の明確化と支援

出典

WHO.Zika virus.Fact sheet.Updated January2016.
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/zika/en/