ジカウイルス感染症について(ファクトシート)(更新3)

2016年2月 WHO(原文[英語]へのリンク

要点

  • ジカウイルス感染症は、ネッタイシマカおよびヒトスジシマカなどのヤブカ属が媒介するウイルスによって引き起こされます。
  • ジカウイルス感染症に罹った人には、通常、軽度の発熱、皮膚の発疹(皮疹)、結膜炎、筋痛や関節痛、倦怠感、頭痛などが現れます。通常、これらの症状は2-7日間続きます。
  • 現在、特異的に適応できる治療法やワクチンはありません。
  • 最善の予防方法は、蚊に刺されることから身を護ることです。
  • このウイルスは、アフリカ、南北アメリカ、アジアおよび太平洋地域での感染伝播が知られています。

概要

ジカウイルスは、最初、森林型黄熱病のネットワークで調査しているとき、1947年にウガンダでアカゲザルから発見されたウイルスで、蚊が媒介することによって引き起こされます。その後、1952年にウガンダとタンザニア連合共和国で人からも発見されました。ジカウイルス感染症の発生は、アフリカ、南北アメリカ、アジアおよび太平洋地域で記録されています。

  • ウイルス分類:フラビウイルス科
  • 媒介昆虫:ネッタイシマカおよびヒトスジシマカなどのヤブカ属(通常、午前と午後/夕方の時間帯に活動します)
  • 宿主:不明

症状

ジカウイルス感染症の潜伏期間(接触から発症までの時間)は明らかではありませんが、数日のようです。ジカウイルス感染症の症状は、デング熱など他のアルボウイルス感染症の症状と類似しており、発熱、発疹、結膜炎、筋痛や関節痛、倦怠感、頭痛などが起こります。通常、これらの症状は軽く、2-7日続いて治まります。

ジカウイルス感染症に潜在する合併症

2013年にフランス領ポリネシアで、2015年にブラジルで、それぞれに大規模な感染流行が発生した時に、国家保健当局がジカウイルス感染症に潜在する神経学的合併症および自己免疫合併症を報告しました。最近、ブラジルでは、地方の保健当局が一般住民の中でジカウイルス感染症に一致してギラン・バレー症候群患者の増加が確認しているだけでなく、ブラジル北東部において小頭症新生児の増加を確認しました。ジカウイルス感染症の発生を調査する政府機関は、ジカウイルスと小頭症との間に関連する証拠がどんどんと増えていることを認識しています。しかし、新生児の小頭症とジカウイルスとの関係がさらに解明されるまでには、さらに多くの調査が必要となります。他の原因の可能性も調査されています。

感染経路

ジカウイルスは、熱帯地域の主にネッタイシマカなどの感染したヤブカ属の蚊に刺されることで人に伝播します。これは、デング熱、チクングニヤ熱、黄熱病を伝播する蚊と同じです。

ジカウイルス感染症の発生は、2007年および2013年に太平洋(それぞれヤップ島とフランス領ポリネシア)で初めて報告され、2015年にアメリカ大陸(ブラジルとコロンビア)、アフリカ(カーボベルデ)でも報告されました。また、アメリカ大陸では13を超える国がジカウイルスの急激な地理的拡大を示す散発的なジカウイルス感染症を報告しています。

診断

ジカウイルスへの感染は、症状と最近の生活状況(例えば、ジカウイルスの存在が知られている地域での居住や地域への渡航)を基に疑います。ジカウイルスの診断は、唯一、ジカウイルスRNAの存在を、血液または尿や唾液などの体液で検査することによって確かめられます。

予防

蚊とその繁殖地はジカウイルス感染の大きな危険因子となります。感染の予防と制御は、感染源の縮小(繁殖地の除去および環境改善)によって蚊を減らし、蚊と人との接触機会を減らすことに依存します。

これは、定期的に虫除け剤を使用すること、できるだけ体の多くの部分を覆う(できれば明るい色の)服を着ること、網戸やドアや窓の閉鎖などの物理的な障壁を利用すること、加えて、必要があれば、日中は蚊帳の中で眠るなどの人に対する保護をすること、で実行できます。また、バケツ、タライ、鍋類など水を溜められる入れ物を定期的に空にし、清潔を保ち、蓋をすることは、極めては重要です。この他、植木鉢、使用済みタイヤ、雨どいなど、蚊が繁殖できる場所は掃除し、除去しておかなければなりません。地域住民は、自分たち地域で蚊の生息密度を下げるために地元行政の取り組みを支援する必要があります。

虫除け剤には、DEET(N,N-ジエチル-3-メチルベンズアミド)、IR3535(3-[N-アセチル-N-ブチル]アミノプロピオン酸エチルエステル)、icaridin(1-ピペリジンカルボン酸、2-(2-ヒドロキシエチル)-1-メチルプロピルエステル)などが含まれている必要があります。製品ラベルの指示には厳密に従わなければなりません。幼児、病人、高齢者など、十分に自分自身を守ることができない人たちには、特別な注意と介助が行われるべきです。

感染流行の発生中は、保健当局が殺虫剤を散布することを勧めることがあります。WHOの農薬評価事業計画によって推奨されている殺虫剤が比較的大きな貯水容器の幼虫を処理するための殺虫剤として使われることもあります。

旅行者は、蚊に刺されることから身を守るために、ここに述べた基本的な予防策を取ることが重要です。

治療

ジカウイルス感染症は、通常は比較的症状が軽く、特別な治療を必要としません。ジカウイルスに罹った人は、十分な休養と、十分な水分を取り、市販の鎮痛解熱薬で対処できます。症状が悪化したときには、医療機関に助言を求める必要があります。現在、適応できるワクチンはありません。

WHOの取り組み

WHOは、以下のことを通してジカウイルス感染症の制御を実施している国々を支援しています。

  • 専門家とその専門助手を招集し、ジカウイルス感染症を明確に定義づけ、研究の優先順位を付けます。
  • ジカウイルスと潜在する合併症の調査活動を強化します
  • 国際保健規約の下で、各国が義務を果たせるように支援するために、リスクの情報伝達における能力を高めます
  • 検査施設でウイルスを検出するための処理能力を高めます
  • 洗浄する、空にしておく、蓋をするなど、他の方法で処理することができない水場の貯まり水に対して、保健当局が幼虫を処理するに駆除剤を提供し、媒介蚊であるヤブカ属の蚊の棲息を減らす媒介蚊の制御戦略を実施することを支援します
  • 専門家やその他の保健行政機関と連携して、ジカウイルスに感染した人の治療と、その後の経過観察に対する助言事項を用意します

出典

WHO.Zika virus.Fact sheet Updated February2016
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/zika/en/