世界のインフルエンザ流行について(更新3)

2016年2月22日 WHO(原文[英語]へのリンク[PDF形式:772KB]

WHOから発表された2016年2月07日までのデータに基づくインスルエンザの活動状況です。

要約

世界的に、北半球でインフルエンザの活動が高まり続けていました。高いレベルのインフルエンザの活動が、ヨーロッパのいくつもの国から報告されました。北米、アフリカ北部、中央アジア、西アジアでは、主にインフルエンザA(H1N1)pdm09の活動の高まりがみられました。アジア北部温帯地域では、さまざまな割合でインフルエンザ・ウイルスの伝播が続いていました。

  • ヨーロッパ北部、東部、南部では、引き続きインフルエンザA(H1N1)pdm09の活動が高まっていました。ベラルーシ、ギリシャ、アイルランドでは、極めて高いインフルエンザの活動が報告され、フィンランド、ロシア、ウクライナでも、非常に高い活動が報告されました。インフルエンザA(H1N1)pdm09ウイルスが優勢でした。
  • 北米のカナダ、アメリカ合衆国では、主にインフルエンザA(H1N1)pdm09によるインフルエンザの活動の高まりが報告されました。メキシコでは、レベルは低いもののインフルエンザA(H3N2)の活動が報告されました。
  • 北アジアでは、韓国で、インフルエンザA(H1N1)pdm09ウイルスによるインフルエンザの活動が高まっていました。一方、中国北部では、インフルエンザA(H1N1)pdm09、A(H3N2)およびB型ウイルスが混在して検出されました。モンゴルでは、インフルエンザA(H1N1)pdm09によるインフルエンザの活動がピークに達したようでした。
  • 西アジアでは、イスラエルとヨルダンで、インフルエンザの活動が高いレベルで推移しました。オマーンでは、インフルエンザの活動の低下が報告されました。
  • 東アフリカでは、モーリシャスで、インフルエンザA(H1N1)pdm09の活動の高まりが報告されました。アフリカ北部では、アルジェリアとモロッコで、この期間中のインフルエンザA(H1N1)pdm09ウイルスによる活動の高まりが報告されました。
  • アメリカ大陸の熱帯地域、中米、カリブ海では、全体としてほとんどの国で、インフルエンザと他の呼吸器系ウイルスの活動が低調でした。キューバとジャマイカでは、この期間でのインフルエンザの活動が高まりました。
  • アジア熱帯地域、南アジアおよび東南アジアでは、引き続きインフルエンザの活動の低い状態であることが報告されました。しかし、ヨルダン、オマーン、イランでは、ピークに達したとみられました。
  • 南半球温帯地域では、呼吸器系ウイルスの活動が低い状態でした。
  • 2016年1月25日から2016年2月7日までのデータが、FluNet(協定世界時間2016年2月18日 13:53:12まで)に基づき、100の国と地域にある国立インフルエンザセンター(NICs)とその他の国立インフルエンザ研究施設から集められています。WHO世界インフルエンザ・サーベイランス及び対応システム(GISRS)の検査施設では、この間に154,579本を超える検体が検査されました。インフルエンザ・ウイルスが陽性となった検体は38,419本で、このうち31,846検体(82.9%)がインフルエンザA型、6,573検体(17.2%)がインフルエンザB型でした。亜型が解析されたインフルエンザA型ウイルスのうち、20,503検体(86.6%)がインフルエンザA(H1N1)pdm09、3,163検体(13.4%)がインフルエンザA(H3N2)でした。解析されたインフルエンザB型ウイルスのうち、595検体(28.4%)がB-山形系統で、1,499検体(71.6%)がB-ビクトリア系統でした。
  • WHOのA(H1N1)pdm09のリスク評価が、以下のリンクで公開されました。
    http://www.who.int/influenza/publications/riskassessment_AH1N1pdm09_201602/en/

北半球の温帯地域

北米

北米では、全体として、インフルエンザと他の呼吸器系ウイルスの中等度の活動が報告されました。

カナダでは、インフルエンザの活動の高まりが続いており、毎年のこの時期における予想レベルに達しました。最近の数週間にみられたように、インフルエンザA(H1N1)pdm09の優勢が続いていました。インフルエンザ様疾患(ILI)の活動も高まり、引き続き0-4歳児では最高となりました。若年および中年年齢層の成人では、この期間での入院率が増加していました。

アメリカ合衆国では、この期間のインフルエンザの活動が僅かに高まりました。インフルエンザA(H1N1)pdm09が検出の大部分を占め、次いでインフルエンザA(H3N2)、インフルエンザBの順でした。インフルエンザ様疾患(ILI)の活動が高まり、国内基準2.1%を超える2.4%と報告されました。RSウイルスが引き続き高いレベルで報告されました。肺炎とインフルエンザによる死亡率は、流行値レベルを下回りました。

メキシコでは、急性呼吸器感染症(ARI)が増えてきました。しかし、優勢であるインフルエンザA(H3N2)は非流行期のレベルにありました。

ヨーロッパ

ヨーロッパのほとんどの国では、インフルエンザの活動が高い状態でした。定点観測では、インフルエンザA(H1N1)pdm09が87%を占め、優勢でした。15-64歳の年齢層で重症インフルエンザの増加が報告され、ほとんどはインフルエンザA(H1N1)pdm09が関与していました。ヨーロッパ北部(デンマーク、フィンランド、アイルランド、ノルウェー、スウェーデン)では、インフルエンザA(H1N1)pdm09ウイルスが検出されるウイルスの大半で、フィンランドとアイルランドではインフルエンザの活動が非常に高くなっていました。ヨーロッパ南部では、インフルエンザA(H1N1)pdm09とインフルエンザBウイルス両方の流行を伴うインフルエンザの活動の増加が報告されました。ベルギーとフランスでは、主にインフルエンザBウイルスによるインフルエンザの活動が引き続いて報告されました。この期間の報告では、ベラルーシで重症急性呼吸器感染症(SARI)のレベルの高まりを伴う非常に高いインフルエンザの活動が示されました。ヨーロッパ東部では、主にインフルエンザA(H1N1)pdm09ウイルスによる高いレベルのインフルエンザの活動が認められました。前回の報告でも見られたように、ギリシャ、ロシア、ウクライナでは非常に高いインフルエンザの活動が報告されました。

西アジア

西アジアでは、イスラエルとヨルダンでインフルエンザA(H1N1)pdm09と稀にインフルエンザBウイルスを伴う非常に高いレベルの活動状態の継続が報告されました。前回の報告でも見られたように、オマーンでは、インフルエンザA(H1N1)pdm09、インフルエンザA(H3N2)、インフルエンザBウイルスの流行が混在していましたが、そのレベルは下がってきたことが報告されました。ジョージアでは、インフルエンザA(H1N1)pdm09が流行し、インフルエンザ様疾患(ILI)の活動レベルの上昇が続いていました。

中央アジア

中央アジアでは全体を通して、引き続き、インフルエンザA(H1N1)pdm09ウイルスが関与するインフルエンザの活動が報告されました。カザフスタンとキルギスでは、重症急性呼吸器感染症(SARI)の活動の高まりが報告されました。

アジア北部/アジア温帯地域

アジア北部温帯地域の国では、引き続きインフルエンザの活動が報告されました。韓国では、大半がインフルエンザA(H1N1)pdm09ウイルスにより、最近は一部でインフルエンザBウイルスにより、インフルエンザの活動の高まりがみられました。韓国でのインフルエンザ様疾患(ILI)の活動は、引き続き基準レベルを上回る状態でした。中国北部では、インフルエンザ様疾患(ILI)の活動が高まってきました。インフルエンザAとインフルエンザBウイルスが同時に流行していました。モンゴルでは、インフルエンザの活動がピークに達したようでした。

熱帯地域

中米、カリブ海、南米の熱帯地域

カリブ海、中米、南米熱帯地域の国々では、インフルエンザと呼吸器系ウイルスの活動は低調で、予想の範囲内にあると報告されました。

キューバでは、この期間中、主にインフルエンザBウイルスの検出が増えました。ジャマイカでは、インフルエンザA(H1N1)pdm09が高まり、重症急性呼吸器感染症(SARI)の活動が昨年と比べて高いことが報告されました。プエルトリコでは、引き続きインフルエンザ様疾患(ILI)の活動が高まっていました。コスタリカでは、前回の報告でも見られたように、インフルエンザA(H1N1)pdm09の活動が、ここ数週間優勢であったRSウイルスの活動とともに、低下傾向を示してきました。

アフリカ熱帯地域

アフリカ北部(アルジェリアとモロッコ)では、ここ数週間、インフルエンザA(H1N1)pdm09の活動の高まりが報告されました。アフリカ西部では、ここ数週間の活動は低いものの、インフルエンザの活動が検出され続けていました。アフリカ東部(モーリシャス)では、この期間中に、インフルエンザA(H1N1)pdm09ウイルスの流行の強まりが報告されました。

アジア熱帯地域

アジア南部では、これまでの数週間と比べて活動の低下傾向が報告されました。中国南部では、前週にも見られたように、主にインフルエンザA(H1N1)pdm09が流行していました。1月末(第4週)には、インフルエンザ様疾患(ILI)の活動が、前週と比べて、また、昨年の同時期と比べ低下していました。香港では、インフルエンザA(H1N1)pdm09とインフルエンザBウイルスが同時に流行し、検出数が増加しました。インフルエンザ様疾患(ILI)の活動が、この時期、一般外来と民間の定点医療機関において、これまでの数週間と比べて高くなっていました。タイでは、この期間中に、主にインフルエンザA(H1N1)pdm09と、これに続くインフルエンザBウイルスによるインフルエンザの活動の高まりが報告されました。

南半球の温帯地域

南米温帯地域

南米温帯地域では、インフルエンザとその他の呼吸器系ウイルスの活動が低い状態でした。大半がインフルエンザA(H1N1)pdm09で、その後にインフルエンザB、そしてインフルエンザA(H3N2)ウイルスが続いていました。チリでは、インフルエンザ様疾患(ILI)の活動が僅かに高まっていましたが、まだ、予想の範囲内でした。アルゼンチンとパラグアイでは、この数週間、重症急性呼吸器感染症(SARI)のレベルが僅かに高まってきました。

アフリカ南部

南アフリカでは、インフルエンザの活動はオフシーズンのレベルが続いています。

オセアニア、メラネシア、ポリネシア

オーストラリアでは、引き続き、極小規模のインフルエンザA(H1N1)pdm09の活動が報告されました。大洋州ソロモン諸島のミクロネシア連邦では、インフルエンザ様疾患(ILI)の活動レベルが閾値を上回ったことが報告されました。

出典

WHO.Influenza Update number257. 22February2016
http://www.who.int/influenza/surveillance_monitoring/updates/2016_02_22_surveillance_update_257.pdf?ua=1[PDF形式:772KB]