ギラン・バレー症候群について(ジカウイルス感染症の関連を含む)(ファクトシート)(更新)
2016年3月 WHO(原文〔英語〕へのリンク)
要点
- ギラン・バレー症候群は、免疫システムが自己の末梢神経を攻撃する稀な疾患です。
- すべての年齢層の人が罹る可能性がありますが、より成人で、より男性で多くみられます。
- 最も重症のギラン・バレー症候群患者であっても、ほとんどの人は完全に回復します。
- 重症のギラン・バレー症候群患者は稀ですが、ほぼ完全な麻痺を起こす可能性があります。
- ギラン・バレー症候群の患者は治療を受け、経過を観察される必要があります。ときに、集中治療が必要となる場合があります。治療には、支持療法といくつかの免疫療法があります。
概要
ギラン・バレー症候群では、身体の免疫システムが末梢神経の一部を攻撃します。この症候群は、痛覚や温度覚や触覚を伝える神経だけでなく、筋肉の運動に関与する神経にも影響を与えることがあります。この結果、下肢そして/または上肢に筋力低下や感覚消失を引き起こす可能性があります。
稀な疾患ではありますが、すべての年齢層の人に罹る可能性があり、成人と男性でより多くみられます。最善を尽くしても、ギラン・バレー症候群の3~5%が合併症で亡くなります。この合併症には呼吸筋の麻痺、血液感染症、肺血栓、心停止があります。
症状
通常、症状は数週間続き、ほとんどの人は長期化することも、重症な神経学的合併症も起すことなく回復します。次のような経過を示します。
- ギラン・バレー症候群の初発症状は、脱力感やヒリヒリ感です。通常、下肢から始まり、上肢や顔面に広がることがあります。
- このうち何人かの患者では、これらの症状に続き、下肢、上肢、顔面の筋肉が麻痺してきます。患者の20~25%で、胸部の筋肉が侵され、呼吸が困難になります。
- 重症のギラン・バレー症候群患者は稀ですが、ほぼ完全な麻痺に陥ることがあります。これらの患者は生命に影響を及ぼす危険があり、通常、罹患した患者は集中治療室で治療を受けます。
- 脱力感が続く患者もいますが、極めて重症のギラン・バレー症候群でもほとんどの患者は完全に回復します。
原因
ギラン・バレー症候群の原因は必ずしも断定できません。多くの場合、感染(例えばHIV、デング熱、インフルエンザ)が原因で発症し、予防接種、手術、外傷によるものはあまり一般的ではありません。
診断
診断は、症状や深部腱反射の減少または消失などの神経学的検査と腰椎穿刺の所見に基づきます。血液検査などのその他の検査が、ギラン・バレー症候群の切掛けとなった原因を突きとめるために必要となることもあります。
証明はされてないものの、研究者はギラン・バレー症候群の急増とジカウイルス感染症とが関連する可能性について研究しています。
治療と医療支援
- ギラン・バレー症候群の患者は、通常、厳密に管理できるように入院となります。
- ギラン・バレー症候群に対する治療法はわかっていません。しかし、治療はギラン・バレー症候群の症状を改善させ、病期を短縮することはできます。
- 支持療法は呼吸、心拍数、血圧の管理などです。患者の呼吸する力が低下する場合は、通常、人工呼吸器を装着し、不整脈、感染、血栓、高血圧や低血圧などの合併症に対して監視します。
- この疾患が自己免疫疾患の特性をもつこと踏まえて、通常、急性期には血液から抗体を除去する血漿交換や免疫グロブリン点滴療法で治療します。症状の出現後7~14日で(治療を)開始したときには、ほとんどの患者で効果があります。
- この疾患の急性期を脱した後に筋力低下が持続する場合には、患者は筋肉を強化し動きを回復するためのリハビリテーション療法を必要とすることもあります。
出典
WHO.Fact sheet, Media center. 14 March 2016
Guillain-Barré syndrome
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/guillain-barre-syndrome/en/