2016年のニュース

フランベジア(イチゴ腫)について(ファクトシート)

2016年3月 WHO(原文〔英語〕へのリンク

要点

フランベジア(イチゴ腫)は、梅毒トレポネーマの亜種pertenueによって引き起こされる慢性感染症です。
この疾患は、皮膚、骨、軟骨に感染します。無治療のままに放置すれば、フランベジアは、鼻や脚の骨の変形を起こします。
フランベジアは、人だけが保有宿主であり、長年、根絶し得る疾患と考えられてきました。
2012年には、アジスロマイシン抗生剤を単回経口投与するだけでフランベジアを完全に治すことができることが発見され、フランベジアの根絶への見通しが立つようになりました。
かつて感染が常在していたエクアドルとインドの2か国では、2003年に感染伝播が絶たれたことが報告されました。
現在流行している13か国では、WHOの新しい根絶作戦を実現するための支援が必要です。
以前に感染が常在していた73か国では、疾患の存在の有無を確認することが必要です。

概要

 フランベジアは、風土病性梅毒(ベジェル)やピンタと同様にトレポネーマが起こす慢性細菌感染症の1種で、一般に風土病性トレポネーマ症として知られています。フランベジアは、風土病性トレポネーマ症の中で最も頻度の高い疾患です。

 原因菌であるTreponema pallidum 亜種pertenueは、一般に非性病性の風土病性トレポネーマに属するベジェルやピンタ、および梅毒の病原体である梅毒トレポネーマと遺伝的に密接に関係しています。

 この疾患は、主に、アフリカ、アジア、ラテンアメリカ、太平洋の温帯湿潤気候や熱帯雨林気候の貧困な地域でみられます。

 フランベジアは、非性的な接触で、軽い傷を介して感染している人から感染していない人に(人から人へ)直接に感染伝播されます。病変のほとんどは四肢に発生します。フランベジアの初期病変は細菌に富んでいます。潜伏期間は、9-90日、平均で21日です。

 感染を受けた人の約75%は15歳未満の子どもです。発生が最も多いのは6歳から10歳の子どもです。性差はありません。

 過密な住居環境や、貧しい社会的経済的な状況では、フランベジアの感染拡大が助長されます。治療しなければ、感染によって慢性的に外見が損なわれ、障害を生じることにつながります。

問題の展望

 1950年代以降の歴史記録によれば、フランベジアは北緯20度から南緯20度の熱帯地域にある少なくとも88か国で風土病でした。しかし、現在、フランベジアが風土病とされる国は13か国のみです。これらの国では、WHO Morges根絶作戦を実施するための支援が必要とされます。最近の推定では、13か国の約8,900万人がフランベジアの流行地域に住んでいるとされています。

 エクアドルとインドの2か国は、2003年以降は患者が報告されていません。WHOの国際検証チームが、感染伝播が遮断された状態であることを評価するために、2015年10月にインドを訪れました。これまでに、世界での根絶プロセスの一部として少なくとも73か国で、この疾患が既に伝播していないことを判断するために発生状況の評価が行われる必要があります。

診断

臨床診断

 実際の現場では、診断は主に臨床所見と疫学的知見に基づきます。フランベジアには2つの基本的な段階があります。1つは早期(感染期)、もう1つは後期(非感染期)です。臨床的に軟性下疳菌によって引き起こされる下肢潰瘍がフランベジアによく似ていることが最近発見されてからは、実際の現場ではフランベジアが疑われる患者を確定診断するために迅速診断検査の使用が求められています。WHOは、健康活動ボランティアや地域活動ボランティアがこの疾患を特定するときに役立つように、画像入りの臨床ガイドを公表しています。

血清学的診断

標準的な検査に基づく試験
 
トレポネーマ感染症を診断するために、梅毒トレポネーマ粒子凝集検査法(TPPA)や急速血漿レアギン試験;(RPR)などの血清学的検査が、広く使用されています(例、梅毒、フランベジア)。しかし、これらの検査は、フランベジアと梅毒とを区別することができません。フランベジアが常在する地域に住む成人に対して検査の結果を解釈するときには、慎重な臨床評価が必要になります。しかし、臨床検査そのものは、労働集約的であり、検査施設を必要とします。

治療の重要ポイントでの迅速な検査
 
迅速検査は、患者の治療の重要ポイントでの診断と治療を可能にさせます。2種類の迅速検査があります。

・迅速トレポネーマ検査:この検査法は、広く梅毒の診断に使われています。ただし、この検査法は活動性のあるフランベジアと過去の感染とを区別することができません。そのため、単独での使用は、患者の過剰治療と過剰報告につながる可能性があります。
・新しいChembioDPP®梅毒スクリーン&確認アッセイ:この検査法は、指の先の一滴の血液、静脈血、血清、血漿で、非トレポネーマおよび梅毒トレポネーマの抗原に対する抗体を同時に検出する単回使用の免疫クロマト法の迅速スクリーニング検査です。この検査法は活動性のあるフランベジアと過去の感染とを区別することができます。

PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法
 ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法検査はフランベジアを確定診断することができます。この検査法は根絶プログラムの最終段階で非常に有用と考えられています。PCR法の技術は、フランベジアの病変から採取されたスワブ検体からアジスロマイシンへの感受性を決定するために使用することもできます。

治療

 フランベジアの治療には2種類の抗菌薬が使用されます。
・アジスロマイシンの単回経口投与は30mg/kg(最大2g)です。
・ペニシリンベンザチンの単回筋肉内注射は、120万単位(成人)と60万単位(小児)です。

合併症

 治療しなければ、感染した人の約10%で外見が損なわれ、不自由となる合併症が進行し、5年後には足と鼻の変形が現れます。この疾患とその合併症は、学校の長期欠席の原因になり、また成人の就労活動を妨げます。

予防

 フランベジアにワクチンはありません。早期診断のほか、患者が発生している地域での集団治療や、患者と接触者に対象を絞った治療による感染伝播の阻止に基づいた予防が行われます。健康教育と個々の衛生状態の改善は予防の中でも重要な要素です。

根絶に向けた新たな取り組み:これまでの進展

 顧みられない熱帯病(NTDs)に対するWHOのロードマップと、世界保健総会で決議されたWHA 66.12では、2020年までに残された常在国からフランベジアを根絶するという目標が設定されました。WHOは、2012年1月以降、60年のベンザチンペニシリン注射からアジスロマイシン経口剤の使用への移行に基づいて、Morges戦略と呼ばれる新たなフランベジアの根絶に向けた戦略を作成しました。

 パプア・ニューギニアのLihir島におけるMorges戦略パイロット実施計画の結果では、2015年2月にNew England Journal of Medicine誌に掲載され、リスクのある人々への1回の集団治療の後に、劇的な患者数の減少が示されました。結果がまだ発表されていませんが、ガーナ、バヌアツでも同様の知見が記録されました。

オペレーションズ・リサーチ(実施調査)
 公衆衛生の専門家は、根絶作戦の実施に当たっての指針とするために、多くの実施調査を行いました。研究のひとつがパプア・ニューギニアで進められました。ここでは、標準治療がフランベジアに対して30 mg/kgで与えられているのに対して、トラコーマに対して用いられる用量として推奨されている20 mg/kgという低用量での有効性を決定するための研究が行われました。もし成功すれば、その結果は、これら2つの疾患が重複している国では、両方の疾患を同時に治療する方針を立てることに繋がります。

他の計画との連携

 顧みられない熱帯性疾患(NTDs)プログラムとの連携、並びに性感染症プログラムとの連携は、フランベジアの根絶を進めるために不可欠です。特に、トラコーマは両疾患が共に常在する地域でアジスロマイシンの使用が一般的となり、性行為感染症は診断施設と専門知識が必要であり、さらには、ライ病やブルーリ潰瘍のようなその他の皮膚関連疾患(NTDs)では発見と調査活動の強化が必要だからです。

今後の展望

 アジスロマイシンの利用環境を整備できれば、2020年までにフランベジアの根絶を確保できます。流行地域の分布図の作成は、アジスロマイシンを使ったさまざまな大規模集団での治療を行う前には不可欠です。

出典

WHO. Fact sheet, Media Centre.. Updated March 2016
Yaws
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs316/en/index.html