2016年のニュース

デング熱と重症型デング熱について (ファクトシート)

2016年3月 WHO(原文〔英語〕へのリンク

要点

デング熱は蚊によって媒介されるウイルス感染症です。
感染はインフルエンザ様の症状を引き起こします。また、時には、死に至る可能性のある合併症に発展することがあり、重症型デング熱と呼ばれています。
世界でのデング熱の発生率は、この数十年で飛躍的に高まっています。現在、全世界人口の約半数が危険な状態の中にいます。
デング熱は、世界中の熱帯及び亜熱帯地域でみられます。そして、そのほとんどが都市部、準都市部でみられます。
重症型デング熱は、アジアやラテンアメリカのいくつもの国の子どもの間で、深刻な病態や死に至る原因となっています。
デング熱および重症型のデング熱に特異的な治療法はありません。しかし、早期発見と適切な医療処置を利用することにより、死亡率を1%未満まで下げることができます。
デング熱の予防と制御は、もっぱら、効果に媒介する蚊を駆除することに依存しています。

概要

 デング熱は、近年、WHOが分ける全ての地域で急速に拡大している蚊媒介感染症です。デング・ウイルスは、主には雌のネッタイシマカによって媒介されますが、それよりも程度は低いもののヒトスジシマカによっても伝播されます。この蚊は、チクングニア熱、黄熱、ジカウイルス感染症も伝播します。デング熱は、降雨量、温度および無計画な都市計画による影響を受けたあらゆる場所で熱帯地域全般に拡がっています。

 (デング出血熱として知られている)重症型デング熱は、1950年代にフィリピンとタイでデング熱が流行した際に、初めて認識されました。現在では、重症型デング熱は、アジアやラテンアメリカのほとんどの国で発生しており、これらの地域の子どもたちの入院や死亡の主な原因となっています。

 デング熱を起こすウイルスには4種類の血清型(DEN-1、DEN-2、DEN-3、DEN-4)があり、異なる型ですがそれぞれ関連しています。ある血清型のウイルスに感染して回復すると、その血清型への免疫力がつき、生涯に亘り保たれます。しかし、回復後、他の血清型への交差免疫は部分的かつ一時的です。他の血清型に続いて感染すると、重症型デング熱に発展するリスクが増加します。

デング熱の世界的な疾病脅威

 デング熱の罹患率は、ここ数十年間に世界中で爆発的に増加しています。デング熱の実際の患者数は、少なく報告され、誤って鑑別されています。現在、デング熱感染者は年間3億9,000万人(信頼水準95%[2億8,400万-5億2,800万])で、そのうち9,600万人(6700万-1億3600万)が臨床症状(全ての重症度を含む)を発現していると推定されます。別の研究では、デング熱の罹患率はり128か国で39億人と推定され、これらがデング熱ウイルスへの感染の危険にさらされていると推定されています。

 WHOの3地域における加盟国は、定期的に毎年感染者数を報告しています。2010年、2013年、2015年には、毎年約240万の感染者が報告されました。デング熱の世界的な疾病脅威は確かではありませんが、デング熱の全例を記録する活動の開始は、ある意味で、最近、報告される感染数が急激に増加していることを物語っています。

 この疾患の他の特徴は、多くの国で複数のデング熱ウイルスが大流行し、人々の健康と世界各国の経済の両方に警鐘的な影響を与える疫学パターンをもっていることです。

 1970年以前は、重症型デング熱の流行はわずかに9か国のみでした。現在、この疾患は、アフリカ、アメリカ大陸、東地中海、東南アジア、西太平洋のWHOによる地域の100か国以上で流行しています。アメリカ、東南アジア、西太平洋の地域では、最も深刻な影響を受けています。

 感染者数は、アメリカ大陸、東南アジア、西太平洋で2008年に120万人を超え、2013年には300万人以上を超えました(加盟国からの提出された公式データに基づく)。現在も報告される感染者数は増え続けています。2015年には、アメリカ大陸だけで、235万人のデング熱感染者が報告されました。そのうち10,200人は、重症型デング熱と診断され1,181人が亡くなりました。

 デング熱は、新しい地域に拡大するにつれて、患者数が増加するだけではなく、爆発的な流行を起こしています。現在、ヨーロッパでもデング熱が流行する可能性があり、2010年にはフランスとクロアチアで初めてデング熱の伝播が報告され、他にもヨーロッパの3か国で輸入例が確認されました。2012年にはポルトガルのマデイラ島で2,000人を超える患者が報告されるデング熱が流行し、ポルトガルとヨーロッパの10か国で輸入例が確認されました。

 2013年には、フロリダ州(アメリカ合衆国)と中国の雲南省で患者が発生しました。また、デング熱は、南米の数か国、特に、コスタリカ、ホンジュラス、メキシコで影響を与え続けています。アジアでは、シンガポールで数年間消失した後に増加しました。流行は、ラオスでも報告されています。2014年には、南太平洋で10年以上発生がなかったデング・ウイルス3型(DEN3)が発生しており、中国、クック諸島、フィジー、マレーシア、バヌアツで患者数が増加傾向を示しています。デング熱は、消失から70年以上経過した日本でも報告されました。2015年には、フィリピンでは16万9,000人、マレーシアでは11万1,000人を超える感染者が報告されており、それぞれ前年の59.5%と16%の増加となり、世界的な大流行を特徴付けました。

 2015年には、ブラジルで2014年の感染者の約3倍の150万人の感染者が報告されました。同じく2015年に、インドのデリーでは、2006年以来の最悪となる1万5,000人の感染者が報告されました。アメリカ合衆国のハワイ州のハワイ諸島では、2015年と2016年に感染の発生が続き、感染者181人の流行が報告されました。フィジー、トンガ、フランス領ポリネシアの太平洋諸国は、報告が記録され続けています。

 入院が必要な重症型デング熱患者は、推定で毎年50万人発生しており、その大部分が子どもです。重症型デング熱患者は約2.5%が死亡しています。

感染経路

 デング熱の主な媒介昆虫はAedes aegypti(ネッタイシマカ)です。ウイルスをもった雌の蚊の刺咬によって人に感染します。雌の蚊は体内で4日から10日ウイルスを増させた後、その生涯にわたってウイルスを伝播させることができます。

 症状のある人も無症状の人も、主たるウイルス宿主であり、ウイルス増殖組織で、未感染の蚊への感染源の役目を果たします。デング・ウイルスに感染した人には、発症後、(4日~5日、最長12日)蚊を介してデング・ウイルスを伝播する可能性があります。

 ネッタイシマカは都市部に生息し、多くが人の使った容器(の水)で繁殖します。他の蚊とは異なり、ネッタイシマカは日中に吸血します。刺咬する時間帯のピークは早朝と夕暮れ前です。雌のネッタイシマカは産卵期毎に複数の人を刺咬します。

 Aedes albopictus(ヒトスジシマカ)は、アジアではデング熱を媒介する2種類目の蚊で、古タイヤ(繁殖環境)やその他の商品(萬年竹など)の国際貿易に伴って、広く北米やヨーロッパの25か国以上の国々へ拡がっています。ヒトスジシマカは適応性に優れているため、ヨーロッパの冷涼な地域でも生存できます。ヒトスジシマカの拡大は、零度以下の温度に対する耐性、冬眠、微生息場所に潜むことができることによるものです。

特徴

 デング熱は、重症のインフルエンザ様疾患で、乳児、幼児、成人が罹ります。しかし、死亡することは滅多にありません。

 デング熱は、高熱(40℃/104°F)を伴い、激しい頭痛、眼の奥の痛み、筋痛と関節痛、悪心、嘔吐、リンパ節の腫脹、発疹のうち2つ以上の症状がある場合にはデング熱を疑うべきです。症状は、感染蚊に刺された後4~10日の潜伏期を経て発現し、通常2~7日間持続します。

 重症型のデング熱は、血漿漏出、体液貯留、呼吸促迫、重度の出血、臓器不全などの合併症を伴い、死亡する可能性があります。危険な兆候は、初発症状が出現してから3~7日後に起こり、同時に体温低下(38℃/100°F以下)のほか、激しい腹痛、連続する嘔吐、呼吸促迫、歯肉出血、倦怠感、不穏、吐血などの症状が現れます。重篤な状態では24~48時間後に死亡することがあり、合併症や死亡リスクを避けるために適切に医療処置を行うことが必要です。

治療

 デング熱には特異的な治療法はありません。

 重症型デング熱は、疾患の影響や進展に関して経験のある医師や看護師による医療処置によって救命でき、20%以上の致死率を1%未満に減少させることができます。重症型デング熱の治療では、患者の体液量の管理が重要となります。

予防接種

 2015年末から2016年初めに、サノフィパスツールによって初めてのデング熱ワクチンDengvaxia (CYD-TDV)が、流行地域の9-45歳に向けて数か国で承認登録されました。他にも4価弱毒生ワクチンが、第Ⅱ相および第Ⅲ相臨床試験の開発途上にあり、(サブユニット、DNAおよび精製された不活性化ウイルスなどの基盤から)他の3系統のワクチも臨床開発の初期段階にあります。WHOは、各国やワクチンの研究と評価を支援するために、民間の支援組織に技術的な助言や方向性の指導を行っています。予防接種に関する専門家戦略諮問グループ(SAGE)は、2016年4月にデング熱ワクチンとその推奨事項を検討する予定です。

予防と制御

 現在、デング・ウイルスの伝播を制御し予防する唯一の方法は、媒介する蚊の駆除に努めることです。以下のような方法があります。

環境の管理と改善により、産卵環境から蚊を閉め出すこと
固形廃棄物を適切に処理し、人工的に人が作り上げた生育場所を取り除くこと
毎週、家庭の貯水容器の蓋を行い、空にし、清掃すること
屋外の貯水容器に適切な殺虫剤を用いること
網戸、長袖の衣服、殺虫剤で処理した物資、蚊取り線香、噴霧器など、家庭での防護対策を実施すること
媒介する蚊の制御を続けるために、地域社会の参加と動員を向上させること
流行期には、媒介する蚊の緊急制御方法のひとつとして、殺虫剤の空中散布を行うこと
感染制御への介入の効果を評価するために、積極的に媒介昆虫の監視とその調査活動を行う必要性が認識されること

WHOの取り組み

 WHOは、下記のような方法でデング熱に対し取り組んでいます。

検査施設の共同研究ネットワークを通して、各国の流行状況の確認を支援する。
デング熱の流行に効果的に対応するために、技術的支援やガイダンスを提供する。
報告システムの改善や、疾病の脅威を正確に把握するために各国を支援する。
地域事務局単位では、数か所の共同センターで、臨床管理、診断、媒介昆虫の制御について訓練の場を提供する。
根拠に基づいた戦略や政策を構築する。
殺虫剤や技術の応用などを含めた新しいツールを開発する。
100か国以上の加盟国からデング熱と重症型デング熱の公的な記録を収集する。
加盟国のために、デング熱の患者管理、予防と制御に関するガイドラインやハンドブックを発行する。

出典

WHO. Factsheet, Media Centre. Update March 2016
Dengue and severe dengue
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs117/en/index.html