人畜共通インフルエンザ感染症の発生状況
2016年4月4日付けで、世界保健機関(WHO)からヒトと動物に共通するインフルエンザ感染症の概況が公表されました。ここでは、この報告から、個別に発生が報告されることの少ないインフルエンザ(H5)の記事を抜粋して掲載いたします。
要約
- 新たな感染事例:今回の更新で、新たにインフルエンザA(H5N1), A(H5N6), A(H7N9)の人への感染が報告されました。
- リスクアセスメントの結果:人と動物に共通する既知のインフルエンザ・ウイルスによる全体としての公衆衛生上のリスクには、変化はありません。動物由来のウイルスによる人への感染は可能性が低いとはいえ、動物はインフルエンザの中間宿主となるため、想定はしておくべきです。
- 報告:新たなインフルエンザ亜型によって引き起こされる全ての人への感染は、国際保健規則(IHR、2005)にしたがって、報告の義務があります。これには、如何なる動物のウイルスも流行していない季節性のウイルスも含まれています。これらの報告からの情報は、今後も、人と動物とに共通するインフルエンザのリスクアセスメントを知らせていくために続けられます。
鳥インフルエンザA(H5)ウイルスのヒトへの感染
現在の状態
報告期間中に、人に対するA(H5)ウイルスへの感染5例が、WHOに報告されました。A(H5N1)ウイルスの患者が、エジプトから4例、A(H5N6)ウイルスの患者が、中国から1例、報告されました。
2003年以降、16か国から人における鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルス感染者850人が検査で確認され、WHOに報告されました。このうち、死亡者は449人でした。また、人における鳥インフルエンザA(H5N6)ウイルス感染者11人が、2013年以降、中国で発見されました。このうち、死亡者は6人でした。これら以外のインフルエンザA(H5)ウイルスも、人に感染を引き起こす潜在力をもっていますが、これまでのところ、人への感染は報告されていません。
OIE(国際獣疫事務局)からの報告によれば、インフルエンザA(H5N1)、A(H5N2)、A(H5N6)、A(H5N8)、A(H5N9)といったさまざまなサブタイプのインフルエンザA(H5)が、西アフリカ、ヨーロッパ、アジアの鳥から検出されています。
リスク評価
- 1.人における鳥インフルエンザA(H5)ウイルスにおける新たな感染者が発生する可能性:
人におけるほとんどの感染者は、感染した家禽または生きた家禽を扱う市場などのウイルスで汚染された環境を通してA(H5)ウイルスと接触していました。ウイルスは、動物及び環境の中で検出され続けているため、さらに、人における感染者は予想されることです。 - 2.鳥インフルエンザA(H5)ウイルスの人から人への感染の可能性:
A(H5)ウイルスの小規模の集団感染が、医療従事者などを含めて、これまでにも報告されていますが、これら以外のA(H5)ウイルスは人から人へ感染を持続的に起こす能力を獲得していないことを、現在の疫学的およびウイルス学的な根拠は示唆しています。 - 3.渡航者により鳥インフルエンザA(H5)ウイルスが国際的に広がる危険性:
もし、流行地域から国境を越えて旅行する者がいれば、旅行中又はその到着後に他の国で感染者が発見されるかもしれません。このような事例が発生しても、このウイルスは、簡単に人から人への直接感染を起こす能力がなく、地域レベルで感染が拡がるとは考えられていません。
出典
WHO.Monthly Risk Assessment Summary, Influenza. 4 April 2016
Influenza at the human-animal interface, 25February to4 April 2016.
http://www.who.int/influenza/human_animal_interface/Influenza_Summary_IRA_HA_interface_04_04_2016.pdf?ua=1[PDF形式:413KB]