ポリオウイルスの国際的拡大に関する国際保健規則(IHR)緊急委員会第9回会議でのWHO声明
2016年5月20日 WHO(原文[英語]へのリンク)
国際保健規則[IHR(2005)]に基づき、ポリオの国際的感染拡大に関する第9回緊急委員会が、事務局長の要請により招集され、2015年5月12日にテレビ会議によって開かれました。第7回および第8回会議と同様に、緊急委員会は野生型ポリオの感染伝播とともにワクチン由来ポリオウイルス(cVDPV)の感染伝播についてもデータが検討されました。後者は、ポリオを根絶したはずの国のいくつかで、定期予防接種の実施体制が弱まり、ポリオウイルスに対する免疫応答との間に深刻なギャップを生じていることを反映しているため、重要です。さらに、2016年5月1日に世界同時に経口ポリオワクチン(OPV)から2型株を外したことに伴い、2型のワクチン由来ポリオウイルスは、如何なる拡大であれ、公衆衛生上の緊急事態となります。
前回、2016年2月12日の開かれた委員会の後も一時勧告を実施しているアフガニスタン、ギニア、ラオス、ナイジェリア、パキスタンのIHR各加盟国から、その後の情報が提出されました。
野生型ポリオ
委員会は、2014年5月に、ポリオの国際的な拡がりが国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)と認定されると宣言して以来、各国が野生株ポリオウイルスの感染伝播の阻止と事務局長により発行された一時勧告の実施を強力に推し進すすめていることを取り上げました。パキスタンとアフガニスタンを除けば、2015年と2016年のここまでの国際的な感染の拡がりはなく、野生型ポリオの国際的な拡がりの発生は減少する傾向にあります。
委員会は、困難な状況にもかかわらず、パキスタンとアフガニスタンがポリオウイルスの感染伝播を阻止するために多大な努力を推進していること、そして、2国間の長い国境に沿って協力体制を改めて強化していることに、勇気づけられるところがあると述べました。特に、委員会は、パキスタンが2016年には一貫して感染伝播を縮小させており、大きな進展をみせていることを賞賛し、今年中に根絶を完了させるというパキスタンの決意表明を歓迎しました。
しかしながら、委員会は、パキスタンからアフガニスタンに新たに2件の感染輸出があり、野生型ポリオの国際間での拡がりが続いていることを議題に上げました。これら2件は2015年10月の発生事例ではあるものの、遺伝子解析で新たな配列であることが確認された1件と、最近の2016年2月に発生したもう1件です。これらの事例は、パキスタンの国境に隣接する東部地域(ナンガハール州とクナール州)で発生しました。アフガニスタンからパキスタンへの新たな感染輸出はなかったものの、現在も続く感染伝播は国境に近いアフガニスタンの東部地域、特に交通の便の悪い地域で続いており、リスクが存在し続けていることを示しています。クナール州の新たなウイルスは、Khyber-Peshawar(カイバル・ペシャワール)地区で、少なくとも2014年以降に伝播しているパキスタンのウイルスと密接な関係にあります。
委員会は、パキスタンとアフガニスタンにおける遺伝子配列およびポリオウイルスの亜型を監視するために、イスラマバードにあるポリオの地域拠点研究所とアトランタの世界ポリオ専門研究所との間で学術協力を継続していることに謝意を表明した上で、これを実行するために採用された有力なツールがポリオ根絶の最終段階で大きな恩恵をもたらすであろうことを示しました。このようにWPV1型をより緊密に追跡することは、これまで以上に国境を越える感染伝播の鎖を検出できる可能性を高くすることを意味します。
委員会は、IHRの下で、この加盟2か国間でのポリオの感染拡大が国際的な拡がりと認められることを再確認しました。委員会は、国境において協力体制を行う努力が強化され続けていることを確認しました。これら2国間の国境ではワクチン接種が10歳未満年齢の子どもに限定されているものの、両国で形成されるこの疫学区域から(外の国に)出るときには、全ての年齢層の渡航者を対象に空港で出発の際にワクチンを接種する努力が行われています。委員会は、すべての国、特にアフガニスタンとパキスタンに大使館を持つ国では、アフガニスタンやパキスタンを離れる渡航者に対するビザ申請の行程の一部に、ポリオ予防ワクチンの接種証明の手続きを含むことを採用し、一時勧告の実施を促進すべきであると指摘し、WHO事務局はこの行程を発展させることを支援すべきであると促しました。
委員会は、特に、アフガニスタンの一部では治安が悪化し、より多くの子どもたちが(ワクチン接種の)利用ができない環境となっており、全世界でのポリオの最終段階が遅れているため、2016年に根絶を完了させることには不安が高まっていることに懸念を示しました。また、委員会は、世界には感染が流行しやすい地域があり、紛争や政情不安、基盤の弱い予防接種計画に関連して予防接種率が低く免疫応答が不十分な人々がいることも議題に取り上げました。このような感染が流行しやすい地域には、中東、アフリカの角における国々、アフリカ中央部、ヨーロッパの一部があります。
公衆衛生環境が破壊され緊急事態で、ポリオウイルスが人為的に複雑な環境の中に再び持ち込まれたときには、世界ポリオ根絶イニシアチブ(GPEI)がこれまでに苦労して積み重ねてきた成果が一瞬にして失われる可能性があります。中東、そしてアフガニスタンやパキスタンからの大規模な人口の移動は、ポリオの国際的な拡がりへの高いリスクをもたらします。ポリオの予防ワクチンを接種していない移民や難民とともに、ヨーロッパ、中東、アフリカにもワクチンの接種機会を逃した人、又は免疫応答が不十分な人々にリスクがあります。推定で300-400万人が、トルコ、レバノン、ヨルダンに移り住み、ヨーロッパへの大量移民の中心地となっています。
委員会は、イスラエル、南スーダン、イラクからの最終報告書の受理を認め、要求に応じて、これら3か国がもはや一時勧告の対象ではないことに同意しました。委員会は、赤道ギニアでAFP(急性弛緩性麻痺)のサーベイランスが弱体化していることに、大きな懸念を示し、この地域でのサーベイランスと定期予防接種を強化する新たな取り組みを促しました。アフリカの不安定な状況、特に、カメルーンやソマリアの一部での不安定な状況は、引き続き、この大陸におけるポリオ根絶に脅威を与えています。しかも、南スーダン、イラクの調査結果に対していくつかの解離点があることを指摘し、委員会はGPEIと加盟国に対して、2月に最終報告書を提出したエチオピアとシリアに加えて、これらの国へも継続して支援を提供すること促しました。
ワクチン由来ポリオウイルス
現在、WHOが把握する4つの地域でのワクチン由来のポリオウイルス(cVDPV)の感染発生は、感染が発生した国における定期予防接種計画に存在する深刻なギャップがポリオ感染を発生させやすい大きなポケットを形成していることを示しています。2015年には、6つの地域でワクチン由来のポリオウイルスの感染発生がありました。3つの地域(ラオス、マダガスカル、ウクライナ)でcVDPV 1型が、3つの地域(ギニア、ミャンマー、ナイジェリア)でcVDPV2型が発生しました。2016年でも、ラオスとナイジェリアでは感染伝播が続いており、ギニアでも可能性があります。
ギニアでは、流行はKankanの地域に限定されるように見えますが、OPVから2型が除去されたことを上回る高いリスクを継続させている媒体(ウイルス)が存在するようです。流行対策の評価報告書で確認される調査結果に解離があるために、見逃している感染源が存在する可能性を除外することができません。また、隣国のリベリアとシエラレオネにおける調査活動の指標が必要とされる基準を下回っており、これらの国の調査体制を強化するためには早急の取り組みが必要とされています。
委員会は、ラオスではワクチン由来のポリオウイルスの伝播が続いており、ワクチン接種の躊躇に対して情報を住民に行き届かせることが難しく、伝達手段が重要であることを議題に取り上げました。ワクチン由来のポリオウイルスが流行する中で続けられた努力から学んだ教訓は、これらの地域でワクチン接種を躊躇することに取り組むために、現在の情報伝達と地域動員活動の計画が見直される必要があることを示しています。そのためには、地元で馴染みのある言葉を使った資料を使用し、全ての確認されたハイリスク地域と情報伝達が困難な地域での定期予防接種を強化し、ワクチンの接種率を向上させ、定期予防接種の地域計画をきめ細かく修正してウイルスが流出する全ての流域にあるハイリスクの地域を確認して、定期的にワクチン接種調査を行うこと、でこれらの地域でのワクチン接種率に対処していくことが必要となります。
委員会は、ナイジェリアでワクチン由来ポリオウイルス2型(cVDPV2)の伝播が、2016年3月に北東ナイジェリ・ボルノ州アマイドゥグリで環境試料から検出されたことに大きな懸念を示しました。分離された株の遺伝子配列は、2013年11月にボルノで検出され、2014年5月まで続いたワクチン由来ポリオウイルス2型の配列に遺伝子学的に近いものでした。その配列株のウイルスは、その後2年あまりは検出されることなく伝播していたことになります。一方で、2015年に連邦首都地区とKaduna(カドゥナ)で確認されたウイルス株は、これとは異なるものでした。委員会は、ナイジェリアの政府による極めて厳重な流行への対策が進められていることを報告しましたが、ナイジェリアからワクチン由来ポリオウイルス2型株が国際的に広がるリスクが高いことにも懸念を示しました。チャド湖周辺の近隣諸国では、調査活動と予防接種活動が強化される必要があります。
国際的な懸念に関する公衆衛生緊急事態(PHEIC)に対する結論
委員会は、ポリオの国際的な感染拡大が、現在も国際的な懸念に関する公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)にあることに全会一致で合意し、さらに3か月間一時勧告を延長することを助言しました。委員会は、この結論に達する中で以下の点について議論しています。
- 2015年もパキスタンとアフガニスタンでは野生型ポリオウイルスの国際的な感染拡大が続いていること。
- これまでの歴史の中で、現在の特別な、いままでにない状況は、ポリオ根絶にさらに近づいていること。
- 世界で最も深刻ではあるが、ワクチンで予防が可能な疾患の一つを地球上から根絶することに失敗したときに発生するリスクと結果としての費用が莫大であること。世界規模での感染伝播が少なくなり、国際的に拡大する可能性も低下しているものの、一旦、国際的な拡大が起これば、その結果と衝撃はもっと深刻なものとなり、もし(現状に対し)世界が自己満足するならば、その可能性はさらに大きなものとなること。
- 野生型ポリオウイルスに対して予防接種とサーベイランスを向上させ、国際協調の下に対策を続けることが必要であり、それが国際的な感染拡大の阻止および新たな感染リスクを軽減させること。
- 紛争や複雑な緊急事態によって予防接種体制の弱体化や崩壊が生じた国が増えることで、さらに国際的な感染の拡大が深刻な社会的影響をもたらすこと。これらの不安定な地域の人々はポリオに集団感染しやすくなっています。感染しやすい状態での患者の発生は感染の制御を極めて困難とし、最終局面で世界からポリオを根絶することの完結を脅かします。
- ポリオの国際的な感染拡大は国境を越えて発生することが多いため、地域での感染対策の推進と国境での協力体制の強化が重要であること。その間に、ポリオの感染伝播が活発な地帯から遠隔地に感染が国際的に拡大するリスクがあることの認識が必要です。
- さらに、ワクチン由来のポリオウイルスに関して以下の点について議論しています。
- cVDPVsは国際的な拡大に対するリスクを有しており、適切な措置と緊急の対策を講じなければ、特に、既に述べられたような感染しやすい人々を脅かすこと。
- WHO地域事務局の4つの地域でのワクチン由来のポリオウイルス(VDPV)の出現と伝播は、ポリオ根絶の終盤の重要な時に、地域の人々の免疫応答には大きなギャップを示していること。
- 2016年4月に2型の経口ポリオワクチンを世界同時に撤退させることに先立ち、ワクチン由来のポリオウイルス2型(cVDPV2)を根絶することが特に緊急性が高いこと
- エボラを含めて、環境の不安定な状態やその他の緊急事態によって感染が発生する地域で定期予防接種を向上させる取り組みを継続させること。
- 不活化ポリオワクチンは世界中で不足しており、新たな取り組みが必要であること
リスクの分類
委員会は、リスク分類に基づいて、野生型ポリオウイルスとワクチン由来のポリオウイルスの国際的拡大のリスクを軽減することを目的とした以下の助言を事務局長に提出しました。
野生型ポリオウイルス
- 現在、野生型ポリオウイルスを感染輸出している国
- 野生型ポリオウイルスの感染はあるが、現在は感染輸出していない国 :もはや野生型ポリオウイルスの感染はいないが、国際的な拡大に対し脆弱な国
ワクチン由来のポリオウイルス
- 現在、ワクチン由来のポリオウイルスを感染輸出している国
- ワクチン由来のポリオウイルスの感染はあるが、現在は感染輸出していない国
- もはやワクチン由来のポリオウイルスの感染はいないが、国際的な拡大に対し脆弱な国
委員会は、新たな感染輸出の検出に対する期間と野生型ポリオウイルスまたはワクチン由来のポリオウイルスの新たな患者または環境分離株の検出に対する期間の以下の基準での評価に更新し、適用しました。
もはや感染輸出のない(新たな野生型ポリオウイルスもしくはワクチン由来ウイルスの感染輸出の検出がない)国の評価に対する判断基準:
- ポリオウイルス感染者:最新の感染輸出による最初の症例が発症した日に加えて、患者発見、調査、検査確認と報告期間を考慮した1か月を加えた日から12か月、もしくは、最新の感染輸入により発生した直近の患者から12か月以内に発症し報告された急性弛緩性麻痺の全患者がポリオに対し検査され、新たに感染輸入された野生株1型とワクチン由来のポリオウイルスが除外され、かつ、最初の患者から12か月以内に集められた環境サンプルも陰性となり、何れもが続いているとき。
- 感染輸出された野生型ポリオウイルスの環境下からの分離:新たに感染輸出を受けた国の環境下での最初の陽性検体の採取に加えて、検査確認と報告期間を考慮した1か月を加えた日から12か月。
もはや感染のない(新たな野生型ポリオウイルスもしくはワクチン由来ウイルスの検出のない)国の評価に対する判断基準:
- ポリオウイルス感染者:最新の患者が発症した日に加えて、患者発見、調査、検査確認と報告期間を考慮した1か月を加えた日から12か月。もしくは、直近の患者から12か月以内に発症した急性弛緩性麻痺の全患者がポリオに対して検査され、野生株1型とワクチン由来のポリオウイルスが除外され、かつ、直近の患者から12か月以内に集められた環境サンプルが陰性となり、何れもが続いているとき。
- 野生型ポリオウイルスもしくはワクチン由来ポリオウイルス(ポリオウイルス感染者がいないこと)の環境下からの分離:最新の環境下で陽性検体が採取された日に加えて、検査確認と報告期間を考慮した1か月を加えた日から12か月。
一時勧告について
現在も野生型ポリオウイルスもしくはワクチン由来ウイルスを感染輸出している国
現在の対象は、パキスタン(野生株ポリオウイルスの最後の感染輸出日は2016年2月1日)とアフガニスタン(野生株ポリオウイルスの最後の感染輸出日は2015年6月6日)です。
感染輸出している国には、以下の行動の実行が求められます。
- もしまだであるなら、国又は政府のトップレベルが公式に、ポリオウイルス伝播の阻止が国家の公衆衛生上の緊急課題であることを宣言すべきです。その旨の宣言が既に行われている国では、この緊急課題が継続された状態にあることを宣言すべきです。
- 全ての年齢での、全ての住民と4週間以上の長期滞在者は国際渡航の12か月前から4週間前までに1回のポリオ生ワクチン(OPV)又は不活化ワクチン(IPV)の接種を受けていることを確認すべきです
- 4週間以内に急な旅行を行う人々で、12か月前から4週間前までにポリオ生ワクチンもしくは不活化ワクチンを接種していない人は、出発までに1度はポリオワクチンを接種していることを確認すべきです。これでも、有益性があります。特に、これは頻繁に旅行する人に当てはまります。
- そのような渡航者には、IHR(2005)別添6で明記された国際予防接種証明書がポリオワクチンの接種記録としてまた接種の証明書として発行されていることを確認すべきです。
- 適切なポリオ予防接種の書類を欠いたままではいかなる住民も海外渡航を出発の時点で制限すべきです。これらの勧告は、渡航の手段(例えば、陸、空、海)に関係なく、すべての出発地から海外渡航する者に適用されるべきです。
- パキスタンとアフガニスタンとの国境を越える人々の移動は野生型ポリオウイルスの感染輸出を助長し続けることを認識しておくべきです。両国は、実質的には、国境を越える渡航者とハイリスクの国境に住む人々に対してワクチン接種率を高めるために、国、地域、地方レベルで協力体制を確実に向上させる国境での努力をさらに強化させる必要があります。両国は長年にわたり主要な国境検問において永続的な予防接種チームを維持してきました。国境での努力の協調体制の改善には、より密接な管理、国境通過点での接種ワクチンの品質の監視とともに、国境を越えた後にワクチンを接種していないと識別される渡航者の割合を追跡することを組み入れる必要があります。
- これらの対策は以下の基準が達成されるまで継続されるべきです。(i)新たな感染輸出がなく、少なくとも6か月を経過すること、(ii)すべての感染地域やハイリスク地域で質の高い根絶活動が完全に実施されたことの証拠となる書類を提出すること、そのような書類が提出できない場合には、その国が "もはや感染輸出のない国"の上記の基準を満たすまでこれらの対策は継続されること。
- 渡航が制限された住民の数とワクチンを接種し出発の地点で適切な予防接種の書類を提供した渡航者の数を含め、海外渡航での月別実施件数に関する一時勧告の報告書を事務局長に引き続き提供することが求められています。
野生型ポリオウイルスまたはワクチン由来ポリオウイルスの発生があるが現在は感染輸出のない国
現在の対象は、ナイジェリア、ギニア、マダガスカル、ウクライナ、ラオス、ミャンマーです。
これらの国には、以下の行動の実行が求められます。
- もしまだならば、国又は政府のトップレベルが公式に、ポリオウイルス伝染の阻止が国家の公衆衛生上の緊急課題であることを宣言すべきです。その旨の宣言が既に行われているならば、この緊急課題が継続されていることを宣言することが必要です。
- 全ての住民と4週間以上の長期滞在者は海外渡航の12か月前から4週間前までに1度ポリオ生ワクチン(OPV)又は不活化ワクチン(IPV)の接種を受けることを推奨すべきです。4週間以内に急な旅行を行う人々には、出発までに1度はポリオワクチンを接種することを推奨すべきです。
- そのようなワクチン接種を受けた渡航者はポリオワクチン接種状況の記録を適切な文書で所有していることを確認すべきです。
- ポリオウイルスの早期発見のためのサーベイランスを強化するために、地域の協力体制と国境を越えた協力体制を強化し、実質的に難民、渡航者、国境を越える集団でのワクチン接種率を高めることが必要です。
- これらの対策は以下のような基準が達成されるまで継続されるべきです:(i)少なくとも6か月間、国内のどのような検査検体からも野生型ポリオウイルスの感染伝播が検出さずに経過すること、(ii)すべての発生地域とハイリスク地域で質の高い根絶活動が完全に実施された証拠文書を提出すること。これらの対応の証拠文書が提出できない場合には、その国が "もはや感染輸出のない国"の上記の基準を満たすまでこれらの対策は継続されること。
- 感染伝播の証拠なく12か月間を終えたときには、一時勧告を実行するために取られた対策の報告書を事務局長に提供することが求められています。
もはや野生型ポリオウイルスもしくはワクチン由来ポリオウイルスの感染のない、しかし国際的な感染拡大を受けやすく、ワクチン由来ポリオウイルスの出現と伝播が起こりやすい国
現在の対象は、ソマリア、赤道ギニア、カメルーンです。
これらの国には、以下の行動の実行が求められます。
- 地域の人々の免疫機能を押し上げるために、定期予防接種を早急に強化すること。
- 検出されなかった野生型ポリオウイルスとワクチン由来ポリオウイルスが伝播するリスク、特にリスクの高い移動民と感染しやすい人々の間でこれを軽減するために、調査活動の質を向上させること。
- 移動民、国境を越える人々、国内避難民、難民やその他の感染しやすい人々へのワクチン接種を確実に実行する取り組みを強化すること。
- 野生型ポリオウイルスとワクチン由来ポリオウイルスの速やかな発見とハイリスクの集団へのワクチン接種を確実に実行するために、地域協力と国境を越えた連携を強化すること。
- 質の高い調査活動とワクチン接種活動の全てに適応性のある手順書を作成し、これらの対策を維持すること。
- 野生型ポリオウイルスまたは新たに出現し伝播するワクチン由来ポリオウイルスの再侵入の証拠なく12か月を経過させたときには、一時勧告を実施するために講じた対策について事務局長に報告書を提出すること。
世界ポリオ根絶イニシアチブ(GPEI)や他の国際機関、特にGavi(ワクチンと予防接種のための世界同盟)は、ワクチン由来ポリオウイルスの出現と流行のリスクを下げるために必要となる全ての支援を提供していく必要があります。
採集報告の提出が必要とされる国と予定は以下のとおりです。
全ての感染国に対する追加の検討事項
委員会は、IHRの下で一時勧告の実施計画に重要な時期にすべての感染国に最適な支援を行うことを、強く世界の加盟国に求めました。ワクチン由来ポリオウイルスがこれ以外のポリオが根絶された国における定期予防接種計画の中で深刻となるギャップを示していることを認識しながら、委員会は、定期予防接種の国際支援組織(例えば、GAVI Alliance[ワクチンと予防接種のための世界同盟])などが感染の発生している国に対して国全体の予防接種計画を支援することが必要であると促しました。
委員会は、感染輸出が発生している国に出発する前に国際渡航を行う者にはワクチン接種が求められるという一時勧告を実行する上での公衆衛生状のコストとベネフィットの分析を事務局に完了させることを求めました。
委員会は、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」が現在も維持されていることを説明する情報伝達のメッセージが注意深く用意されることの必要性を認めました。一面で、世界は3価の経口ポリオワクチンを2価のワクチンに切り替えることが成功したことを賞賛していますが、もう一面では、これらのポリオを根絶させる最終段階の支援を我慢強く支援することで確実に出来うる全ての対策が行われるように、PHEICが維持され続けています。これは明らかに矛盾であり、丁寧に説明される必要があります。
野生型ポリオウイルスとワクチン由来ポリオウイルスの伝播に関する助言、アフガニスタン、パキスタン、ナイジェリア、ラオス、ギニアによって作成された報告書に基づき、事務局長は、委員会の評価を受け入れ、2016年5月20日にポリオウイルスに関する状況が、野生型ポリオウイルスとワクチン由来ポリオウイルスの両方に対して、国際的な懸念に関する公衆衛生緊急事態(PHEIC)に該当すると決定しました。事務局長は、「現在も野生型ポリオウイルスもしくはワクチン由来ウイルスを感染輸出している国」、「野生型ポリオウイルスまたはワクチン由来ポリオウイルスの発生があるが現在は感染輸出のない国」、そして「もはや野生型ポリオウイルスもしくはワクチン由来ポリオウイルスの感染のない、しかし国際的な感染拡大を受けやすく、ワクチン由来ポリオウイルスの出現と伝播が起こりやすい国」に対する委員会の一時勧告に署名しました。そして、事務局長はIHRの下で委員会によって改定されたものとして、2016年5月20日から有効となるポリオウイルスの国際的な拡大を軽減するための一時勧告を延長しました。
事務局長は、委員会委員とアドバイザーの助言に対して感謝を述べ、3か月後に現在の状況の再評価を行うことを要請しました。
出典
WHO.Media center news.WHO Statements. 20 May 2016
Statement on the9th IHR Emergency Committee meeting regarding the international spread of poliovirus.
http://www.who.int/mediacentre/news/statements/2016/ihr-poliovirus-spread/en/